平成29年10月17日朝日新聞
小6から確執、「副担任代えて」母は訴えたが 中2自殺
福井県池田町立池田中学校=福井県池田町稲荷
福井県池田町の町立池田中学校で今年3月に2年の男子生徒(当時14)が自殺した問題で、家族が生徒を叱責した副担任を代えるよう希望するなど、学校側に改善を求めていたのに、適切な対応が取られていなかったことがわかった。
両者の関係に問題があったことは校長や教頭にも報告されていたが、具体的な対応の指示はなかったという。
同校は生徒数40人で、1学年1学級。有識者らでつくる調査委員会が作成した報告書によると、副担任は昨年4月、池田中に異動となり、男子生徒のいた2年生を受け持つことになった。副担任は生徒が小学6年の時、同じ小学校の家庭科の講師だった。当時ミシン掛けで居残りをさせられ、帰りのバスに間に合わなかったことがあり、生徒は家族に「副担任は嫌だ」と言っていたという。
昨年5月、生徒は「副担任が宿題未提出の理由を言い訳だとして聞いてくれない」と言って登校をしぶった。同じ日の午後に担任が家庭訪問をした際、母親は「副担任を代えてほしい」と求めたという。
しかし、担任は「代えることはできない。副担任と2人にならないようしっかり見ていきます」と答えた。この件は教頭に報告したが、学校からの指示は特になかったという。
今年2月にも国語の宿題の件で副担任から怒られたとして登校をしぶり、生徒は母親に「副担任は何をいっても言い訳と決めつける」と訴えた。この日夜に家庭訪問をした担任は「副担任については私がちゃんとみます」と答えたが、担任は副担任には特に話をしなかった。また、校長と教頭には、副担任の指導には生徒の気持ちをくんでいない面があるなどと報告したが、校長らからの指示はなかったという。
また、自殺する前日、副担任から課題の未提出の理由をただされ、生徒が過呼吸を訴えたが、この件についても担任から家族や管理職に報告はなかった。
報告書では、「校長、教頭、事情を知っていた他の教員も生徒の気持ちを理解し、適切に対応することはなかった」とし、学校の対応について「問題があった」と結論づけた。
生徒の同級生の保護者によると、15日夜に開かれた保護者会では、生徒の母親の手紙が読み上げられた。自殺後の学校の対応に関して不信感と憤りをつづった内容だったという。
同校では16日、職員会議を開いて今後の対応を協議したが、町教委によると、具体的なことは何も決まらなかったという。
一方、福井県教委は16日から同校にスクールカウンセラーを重点的に派遣し、教職員や生徒のケアにあたっている。
17日には県内の小中高校と特別支援学校の校長を集め、再発防止に向けた研修会を開く。淵本幸嗣・県教委企画幹は「大変重く受け止めている。小中高校や特別支援学校の管理職の研修を実施し、再発防止を徹底する」と話す。
「教師のいじめ」「校長先生悪びれず」自殺生徒の母に涙
福井県池田町の町立池田中学校で今年3月に2年の男子生徒(当時14)が自殺した問題で、亡くなった生徒の母親が
16日夜、生徒の祖父母とともに自宅で取材に応じた。息子が自殺にいたったことについて、「原因については、教師による
いじめだと思っています。本当にただただつらい。息子が戻ってきてくれれば、帰ってきてくれればいいんですけど」と目に
涙を浮かべながら話した。
母親は息子について、「おじいちゃんおばあちゃん子で、私にもいつも『お母さん』と言って寄ってきて、本当に可愛くて、
可愛くて」と振り返った。
有識者らによる委員会が作成した調査報告書は9月26日に受け取ったという。報告書は、「関わりの深い担任、副担任の
両教員から立て続けに強い叱責(しっせき)を受け、精神的なストレスが大きく高まった」としている。
母親は「正直なところ、担任については(息子が)『怒られるんや』と話していたんですが、そんなにひどいとは思わなかった」
と話した。
母親は息子が副担任から叱責されていることを担任に相談していた。だが、その担任からもひどく怒られていたことを知った
のは、息子の自殺後、生徒たちを対象にしたアンケートの結果を見たときだという。「もし知っていたら、学校になんて絶対
連れて行きませんでした。今でも毎日、毎日悔やんでいます」と後悔の念を語った。
学校の対応にも、不満や怒りをにじませた。「事故(自殺)当日、校長先生が(面会に)来ても悪びれた様子もなく、頭を下げる
こともなかった」と話した。(山田健悟)