令和元年6月17日付朝日新聞

小6女児いじめで骨折、PTSDに 学校の対応は後手

大阪府八尾市の市立小学校6年生の女児が同級生の男児から暴力や悪口のいじめを受け、長期間不登校になっていると認定した報告書を、市のいじめ調査委員会が今月まとめたことがわかった。女児は骨折し、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断されている。報告書では、学校が初期段階からいじめと捉えず組織的な対応をしていなかったと指摘している。

弁護士や臨床心理士らでつくる委員会が、6日付でまとめた。女児が4年生時に男児から「デブ」「ブス」などと言われたこと▽4年生時の昨年2月、市内の公園で、男児がうつぶせに倒れた女児の上で20回程度跳びはねるなどし、女児が左手小指骨折や胸腰部打撲などのけがを負ったことなどをいじめと認定した。

女児は昨年2月以降も時々登校していたが、同10月に校内で男児から中指を立てられ、翌日以降、登校していない。同12月、PTSDと診断された。

報告書によると、4年生時の悪口について、担任は女児の保護者から相談を受け、やめるよう男児を注意していた。だが、悪口はよくあることとして重要視せず、いじめとは捉えていなかった。

公園での暴力行為について、担任は当日に双方の家庭に訪問するなどの対応はとった。だが、学校は事態の深刻さを認識せず、校外でのけんかとして、いじめとは捉えなかった。担任は悪口や暴力に対応した内容の記録も誤廃棄していた。

報告書は、悪口の段階で、学校が男児に適切な指導をしていれば暴力行為につながらなかった可能性があり、暴力行為が起きた後も事態の重大さを認識していなかったとした。女児の精神症状については、いじめだけでなく、学校の対応の不適切さによる影響も大きいと認定した。

いじめ防止対策推進法に基づく国の基本方針では、「いじめに当たるか否かの判断は、いじめられた児童生徒の立場に立つことが必要」としている。報告書では、学校が女児の気持ちに寄り添った対応ができていなかったと考えられるとも言及した。

市教委の対応についても、初期段階から情報を共有し、具体的にどう対応していくか明確にしていたとは言い難いと指摘した。

女児の両親によると、女児は男児の幻覚に悩まされ、ほとんど自宅を出ることが出来ない状態で、「死にたい」、幻覚を見えないようにするために「目をつぶしたい」と漏らすこともあるという。

母親(39)は「娘が再登校できるための有効な対策を取ってくれていない」と学校や市教委の対応を批判。報告書についても「暴力は娘が先に手を出したことがきっかけと記載するなど納得できない」とし、市に対して再調査を求める予定だという。(大野正智)

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