平成29年11月12日毎日新聞
山口高2自殺 学校責任触れず いじめ一部認定 最終報告

山口県周南市で昨年7月、県立高校2年の男子生徒(当時17歳)が自殺した問題で、県教委設置の第三者委員会がまとめた最終報告書を、毎日新聞が独自に入手した。生徒が学校生活で日常的に“いじり”を受けるなどしていたとし、一部にいじめもあったと認定。テニス部員なのに頼まれて参加した野球部での無理な練習もストレス要因になったとしたが、教諭の配慮不足など学校側の責任に触れておらず、遺族側は再調査を求めることも検討する。
第三者委の委員長、田辺敏明・山口大教育学部教授ら委員2人と県教委の担当者2人が11日、遺族宅を訪問。今月2日に手渡している最終報告書について説明したが、遺族によると生徒の自殺に対して県教委からの謝罪はなかった。報告書を巡っては、県教委が「報道機関などに提供しない」とする「誓約書」の署名を求め、遺族側が反発していたが、県教委はこの日、改めて署名を求めた。遺族側は応じなかった。
報告書によると、生徒は教室や部活動で日常的にやゆされるなどし、生徒を「いじられキャラ」と見ていた教諭もいた。
ところが教諭らは「それで人間関係が保たれている」などと問題視せず、中には「私もいじっていたが寄ってきた」と話す教諭もいた。しかし、生徒は「とても恥ずかしい」とソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に書き込んでいた。
部員数が少ない野球部の顧問教諭から「助っ人」を頼まれ練習に参加すると、テニス部員から一方的に無料通信アプリ「LINE(ライン)」のグループを退会させられ、部室の荷物を「早く持ってけ」などと伝えられた。これらはいじめに当たると認定された。しかし、報告書は「友人関係が壊れたわけでなく、ほころびた」とし、両部の顧問の対応についても、他の部員に転部のいきさつを説明しないなど連携不足があったと指摘するにとどめた。
生徒は野球部の練習についても悩み、SNSに手の指の皮がむけた写真とともに野球部の練習がつらいことを書き込んでいた。
生徒が顧問とは別の教諭らに手のまめを見せ「眠れない」などと訴えたが、教諭らは「自分で決めたことだ、頑張れ」徐々に慣れる」と応じただけだった。
報告書はこれら複数のストレス要因を指摘した上で「いじめのみを自殺の要因と考えることはできない」と結論づけ、自殺の原因を特定しなかった。また、生徒の訴えなどを見過ごした教諭や学校の責任についても言及しなかった。
遺族は説明に訪れた第三者委の委員に対し「自死は教諭の配慮不足といじめが原因と考えている。報告書に記載してほしい」と求めたが、委員は「それはできない」とした。遺族は生徒の死後、「1日200~300本バットを振らせた」と語った野球部顧問の指導についても調査するよう要望していたが、委員は「いじめ問題調査委員会だから記載は控えた。別の部署が検討する」と答えたという。【土田暁彦】

顧問らの不手際で居場所なくしたのでは
元教師で「全国学校事故・事件を語る会」代表世話人の内海千春さんの話 転部を巡る顧問らの不手際で生徒は居場所を
なくしたのではないか。いじめがエスカレートする潜在的な状況を教諭らが放置した問題があり、顧問の指導や生徒との
関わり方も調べなければ、生徒が亡くなった理由をゆがめる。

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