平成30年2月7日朝日新聞鹿児島版

川内商工の体罰訴訟、元部員側が和解受け入れへ

 バレーボール顧問体罰

両親と記者会見に出席した元部員の男性(左)=県庁

川内商工高(薩摩川内市)のバレーボール部顧問の男性教諭から体罰を受けて転校を余儀なくされたとして、元男子部員(19)が県に160万円の損害賠償を求めた訴訟で、原告側が6日、鹿児島地裁の和解勧告に応じる方針を明らかにした。和解案には体罰防止の取り組みや体罰などがあった際の県の対応などが盛り込まれ、県は「和解も含めて検討中」としている。

和解案によると、教諭は2015年4月に元部員に平手打ちをして口内出血などのけがを負わせ、同年10月にはスポーツ傷害を負った元部員に「痛い痛いといって甘ちゃんが」などと暴言を吐き、医療機関での治療をさせなかったという。県は当初、請求棄却を求めていた。

地裁は1月23日、体罰などの防止のために専門家を招いた研修会を定期的に実施し、公表すること▽限度を越えた指導の防止や対応について委員会でマニュアルを策定し、公表すること▽体罰などがあった場合は児童生徒や保護者に聞き取りをするなどして事実の正確な把握に努めること、などを盛り込んだ和解案を双方に提示。6日に双方が協議して和解案を受け入れる方針を確認したという。

県庁で会見した元部員の男性は「勝つために体罰が当たり前になっていた。(和解案で)ルールが示されてよかった」と話した。「寮生活で相談できる大人がいなかった」と当時を振り返り、体重の変化に副担任が気づくまでは相談できる人がいなかったことを打ち明けた。

教諭は16年2月に減給6カ月の処分を受けたが、昨年4月から顧問に復帰。県教委保健体育課の岩元幸成課長は「和解を含めて対応を検討している。体罰の撲滅のため、より一層教員を指導していく」と話した。(野崎智也)

和解案の受け入れを表明した元部員の男性のコメントは以下の通り。

僕は大好きなバレーを高いレベルでやれることを期待して、高校に入学しました。その期待は最初だけで、先生の指示したプレーができなければ平手打ちや足で蹴られ、いつの間にかそれが当たり前となり、楽しくバレーをする事を忘れていました。

けがをしても病院ではなく、先生がなじみの50キロ離れた鹿児島市内の整骨院にしか行かせてもらえず、自分の体が今どういう状況なのかわからないことがほとんどでした。

友達や親に心配をかけたくないという思いと、誰かに相談したら先生にたたかれるのではという恐怖心で話すこともできません。最後は先生の大きな声を聞いただけで、震えや涙が止まらなくなっていました。

結局僕は、異常に気づいた他の先生方や、いろいろな方の支援を受けて抜け出すことができました。肉体的にも精神的にも壊すような部活動が正常と言えるのでしょうか?

僕のように逃げ場がなく、追い詰められた環境にいる後輩はまだいると思います。二度と僕と同じような思いをしないよう願うだけです。

指導者による体罰、精神的に追い詰めて心を壊すような指導を受けたり、見聞きしたら勇気をもって声をあげてほしいです。

部活動とは何か、県や学校、みなさんによく考えてもらえる機会になればと思っています。

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