平成30年2月17日朝日新聞大阪本社版

市賠償の半額分支払い、元顧問に命令 バスケ部生徒自殺

 桜宮高校

桜宮高校では、体罰防止の取り組みが続いている=大阪市都島区

大阪市立桜宮高校バスケットボール部の男子生徒が顧問だった男性から暴行を受けて自殺した問題で、市が遺族に支払った賠償金の半額を元顧問の男性に求めた訴訟の判決が16日、大阪地裁であった。長谷部幸弥裁判長は元顧問に、請求通り4361万円の支払いを命じた。

公務員の賠償責任を被害者・遺族が直接問うのは法的に困難ななか、生徒の両親は今回の判決が教育現場の暴力の抑止力になれば、と望んでいる。

部の主将だった生徒は元顧問から暴力や暴言を受け、2012年12月に自殺。元顧問は傷害罪などで有罪判決を受けた。遺族は13年、市を相手に東京地裁に損害賠償請求訴訟を提起。判決に基づき、市は遅延損害金を含め8723万円を支払った。

今回の大阪地裁判決は、市が支払った賠償金と元顧問の暴行の因果関係を認定。元顧問は「判決に従う」としており、市の請求通りの支払いを命じている。

東京地裁に起こした損害賠償請求訴訟で、遺族が元顧問の責任を直接問えなかったのは法の制約からだ。

国家賠償法は、公務員が職務で誰かに損害を与えた場合、国や自治体が賠償責任を負うと定めている。1955年には最高裁で公務員個人の責任を否定する判決が確定。警察官ら公務員が公権力を行使する際に萎縮しないための配慮と考えられてきた。教師や医師は民間の組織に属するケースもあるが、公立施設で働いていれば、不法行為の責任を、受けた相手から直接問われることはない。

一方で、国賠法は今回のように公務員個人に故意や重い過失があった場合、国や自治体が本人に支払いを求める「求償権」があるとも定めている。

今回、市は賠償金の原資は税金で、元顧問には重い過失があったとして負担を求めることを検討。交渉したが折り合いがつかず、17年11月に提訴していた。

生徒の両親はこの5年余りの間、元顧問に「誠意を見せてほしい」と思い続けてきた。母親は「直接責任を負うことで、今後、二度と同じことが起きないよう、抑止力になることを願います」と話す。

 

「公務員個人の責任、明確化」

今回の判決について、立命館大学法科大学院の松本克美教授(民法)は「求償権の規定があっても行使される例は少なく、公務員個人の責任を明確にした意義がある」と評価した。「ブラック部活動」の著書がある名古屋大大学院の内田良・准教授(教育社会学)も「教育の範疇を超えた事案について、自治体は積極的に教師に賠償を求めていくべきだ。でなければモラルハザードが起きる」と述べた。

ただ、教育現場からは困惑の声も上がる。大阪市の公立中学校で運動部の顧問をする40代の男性教諭は体罰はあってはならないとした上で「もし(指導に)失敗すれば、我々が教育委員会から訴えられるというのは複雑な思いだ」と話す。別の中学校の管理職の男性も「行政と教員の負担割合がなぜ半々なのか。明確な基準がなく、あいまいではないか」と語った。(大貫聡子、金子元希)

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