2016年11月11日 中国新聞社
学校事件・事故被害者全国弁護団副代表
定者吉人弁護士
「第三者委員会はクラスメート全員に聞き取るべきだったのでは」と指摘する定者弁護士
1986年に弁護士登録。広島市中区の事務所に所属し、多くの少年事件の弁護人を担当。日弁連子どもの権利委員会の幹事、市いじめ問題対策連絡協議会の会長を務める。 2014年から現職。
全級友へ聞き取り必要
-広島県府中町教委が設置し第三者委員会の報告書を読ん感想は。
「不適切な対応」 「学校の非常識」などの言葉を盛り込み、進路指導の在り方を厳しく批判ている。推薦基準の変更で、生徒は急きよ志望校の専願受験が認められない状況に陥ったが学校側がフォローしなかった配慮のなさも指摘した。ただ、生徒が当時、どう悩んでいたのか。はっきりとは見えてこない。
-どう調査すればよかったのでしょうか。
生徒や保護者へのアンケ-卜結果などからは、(自殺した)男子生徒が悩んだり、苦しんだりしていた様子は浮かんでこない。定型の質問しかできないアンケートでは、真意を聞くには不適切だ。子どもたちは意外によく見ている。クラスメート全員に聞き取るべきだったのではないか。生徒の自殺の前兆が少しでも分かったかもしれない。時間的な制約もあっただろうが、第三者委の委員だけで手が回らないようであれば、臨床心理士や弁護士、スクールソーシャルワーカーなどが加わって聞きっても良かった。
-報告書が学校の問題点を指摘したことに、遺族は「思いをくんでくれた」と話しています。
東広島市でも2012年、教員の指導後に中学2年の男子生徒が自殺した。市教委が設置した調査委の報告書に対し両親は疑問を感じ、アンケートの集計結果だけでなく、個別の回答内容の開示を求めている。子どもを失った遺族の悲しみは癒えることはない。時間の経過とともにさまざまな疑問が湧くこともある。
-今後、町教委や学校に求められる対応は。
関係者の記憶が薄れていく中、第三者委の役割は証言や資料を保全する意味合いも強い。遺族が求める情報をいつでも開示できるよう準備しておくべきだ。
-再発防止へ学校や教員は何をするべきですか。
学校は子どもの幸せのためにあるもの。子どもが学校のせいで死ぬことだけはあってはならない。教員一人一人が、なぜ教師を目指したのか、子どもたちに何を伝え、どんな大人になってもらいたいか。初心に立ち返り、奮起するしかない。
(有岡英俊)