2020年11月13日付毎日新聞

愛知・中3自殺訴訟 名古屋地裁支部が和解案提示 「一宮市が請求額9割支払う」内容

愛知県一宮市立中学3年の男子生徒(当時14歳)が2017年2月に自殺したのは、担任教諭との関係が悪化したのに学校が適切な対応をしなかったためなどとして、両親が市に損害賠償を求めた訴訟で、名古屋地裁一宮支部(坪井宣幸裁判長)は12日、市が請求額の約9割を支払うなどとする和解案を示した。両親の代理人弁護士によると、学校側の安全配慮義務違反や予見可能性など原告の主張をほぼ認める内容。

訴状によると、担任教諭は生徒らにばかりプリント配りをさせたほか、体育祭の組み体操で手を骨折した際も配慮がなかったとしている。進路指導で別の教諭から受験について心ない発言もされ、生徒が強いストレスを抱えたとした。生徒は17年2月6日夜、大阪市の商業施設から飛び降りた。直前に友人に渡したゲーム機に「担任に人生全てを壊された」と記していたという。

和解案では、担任との不和などで強い精神的負担や葛藤を抱えていた生徒に、受験直前の面談で進路指導教諭が「全部落ちたらどうする」と発言したことに、「衝動的に自死を選択することは予見できた。通常の受験生でも強い衝撃を受ける。生徒の心情を理解し寄り添う姿勢が感じられない」と指摘。「無用に強い精神的不安、失望など負荷をかけるもので安全配慮義務違反に当たる」とした。

両親の代理人弁護士は「ほぼ我々の主張を認めている。和解案をしっかり受け止めたい」と話し、生徒の母親は「本人が帰ってくるわけではないが、訴えが裁判所に認められたことはよかった」と語った。

市側は自殺と学校側対応に因果関係はないとして請求棄却を求めてきた。取材に対し担当者は「和解案の内容を確認していきたい」と話した。和解の成立には市議会に諮る必要がある。次回和解協議は12月定例市議会後の同月24日に開かれる。【川瀬慎一朗】

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