平成28年2月25日東京新聞

桜宮高自殺で大阪市に7500万円賠償命令 「体罰が原因」

大阪市立桜宮高バスケットボール部主将の二年の男子生徒=当時(17)=が自殺したのは、顧問だった元教諭(50)による体罰や暴言が原因として、両親と兄が市に総額約一億七千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は二十四日、約七千五百万円の支払いを市に命じた。

岩井伸晃裁判長は「顧問による暴行で精神的に追い詰められたことが自殺の原因で、顧問は自殺の可能性を予測できた」と判断した。

判決は、元顧問の体罰を「教育上の指導として許される範囲を著しく逸脱した暴力的な虐待行為で、違法性は強い」と厳しく指摘。「生徒は顧問の暴行や威迫的な言動によって強い不安や恐怖、混乱に陥り、精神的に追い詰められて自殺した」とし、体罰や暴言と自殺との因果関係を認めた。

訴訟で、市は自殺を予測できなかったと主張したが、判決は「顧問は、自殺直前の練習での様子から生徒の異変に気付いていたのに暴行や暴言を続け、自殺の危険性を増大させた」と指摘し、自殺は予測可能だったと判断した。

判決によると、生徒は二〇一一年四月、バスケ部に入り、一二年九月に主将になった。元顧問から何度も平手で強く顔を殴られたり、「キャプテン辞めろ」といった暴言を繰り返し受けたりして精神的に追い詰められ、同年十二月に自宅で自殺した。

大阪市の吉村洋文市長は「市にとって厳しい判決だが、真摯に受け止める。控訴は行わない」とのコメントを出した。元顧問は、暴行と傷害の罪で懲役一年、執行猶予三年の有罪判決が確定している。

◆「指導の効果 暴力にない」

「暴力に指導の効果はない。今でも暴力をふるっている指導者がいるなら、改めていただきたい」。

判決後、東京都内で記者会見した生徒の父親(46)は、体罰の根絶を強く訴えた。

今回の事件は、文部科学省が教員による体罰の実態調査を始めるなど、国や自治体が教育現場の体罰防止に取り組むきっかけとなった。両親は息子の自殺後に関東地方に転居し、二〇一三年十二月に提訴した。

父親は「二度と息子のような犠牲者を出してはいけないという思いでやってきた」と振り返り、「体罰や暴言が息子を自殺に追い込んだと認め、おおむね納得がいく判決を出してもらった」と語った。二十代の兄は「裁判は終わっても弟は帰ってこない。生きていたら酒を飲んだり、将来、子どもを見せ合うこともできたのに」と話した。

大阪市は元顧問を懲戒免職としたが、訴訟では「体罰と自殺に因果関係はない」などと主張し、遺族側と全面的に争ってきた。

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