法は生かされるか 天童・中1死亡と「いじめ防止法」(下)全校アンケート
非開示、「適切に」を曲解 遺族が事実知る唯一の方法

1月15日の放課後、死亡した女子生徒(12)が通っていた中学校で全校生アンケートが行われた。質問は女子生徒に関して▽事実として知っていることがあったら教えてください▽気になることがあったら教えてください-の2項目。いじめについて13人が具体的に記載し、約130人が伝聞として言及した。
アンケートには「新校舎に来るな」など、心ない言葉を浴びせられていた状況が記されていた。遺族は実施翌日、学校内で回答用紙を閲覧したが、複写や提供は認められなかった。詳細を把握するため再開示を求めた。学校側は「開示はできない」と拒否した。
非開示の理由について水戸部知之教育長は「(いじめ防止対策推進など)法に従った対応がわれわれの仕事だ」と正当性を強調。その根拠に「適切な情報提供」「個人情報の保護」を挙げ「情報を適切に提供する」(同法第28条2項)。市教委はこの部分を引用し、「多くの伝聞や不確かな情報が含まれたアンケート結果を開示することは『適切』でない」とした。この解釈に遺族側は「不当行為だ」と憤る。
同法の付帯決議はアンケート結果について「保護者と適切に共有されるよう」と定義する。同法の立案に中心的に関わった小西洋之参院議員は著書 「いじめ防止対策推進法の解説と具体策」(WAVE出版)で「『適切に提供する』とは学校側の説明責任が最大限に全うされることを意味する」と指摘している。市教委は非開示のもう一つの理由に「個人情報の保護」を挙げた。しかし、文科省が示した同法の基本方針は「情報提供に当たっては、の生徒のプライバシー保護、関係者の個人情報に十分配慮し、適切に提供する。ただし、いたずらに個人情報保護を盾に説明を怠ってはならない」と明記している。
さらに、市教委は「アンケートは開示を前提として行っていない」と非開示の理由を補足した。文科省の基本方針には「アンケートについては、いじめられたいじめられた生徒、その保護者に提供する場合があることを念頭におき、調査に先立ち、その旨を説明するなどの措置が必要であることに留意する」とあり、市教委の主張はこれに則しているとは言い難い。
アンケート結果は実施後に遺族が一度閲覧しているが、再開示を拒む市教委は「そのこと自体、適切だったかどうか…」と解釈を後退させている。
高畠町の高畠高で2006年、同校2年の女子生徒=当時(16)=が自殺したのは校内でのいじめが原因として、両親が県に損害賠償を求めた訴訟の判決が先月11日、山形地裁で言い渡された。いじめが自殺の原因とは認定されず請求は棄却されたが、当時、県がアンケートの実施を多角的に検討したとは言えないとし、「調査が尽くされたかは疑問が残る」と指摘した。それでも両親は控訴を断念した。当時の調査は形式的に済まされ、時を経た今では、いじめの立証が困難なためだ。
滋賀県大津市で中2男子が自殺した問題では、市教委がアンケートに記載された「自殺の練習をさせられていた」との内容を明らかにせず調査を打ち切ったこ
とが問題化した。中2男子の父親(48)は「アンケートには事実を訴える生徒の勇気が込められており、遺族が真実を究明する唯一の手掛かりだ」とし、天童市教委の対応は法の趣旨の曲解だと批判する。

いじめ防止対策推進法(抜粋)

第28条2項 学校の設置者または学校が規定による調査を行ったときは、当該調査に係るいじめを受けた児童その保護者に対し、重大事態の事実関係、その他の必要な情報を適切に提供するものとする。

付帯決議(参議院)
いじめが起きた際の質問票を用いる調査の結果について、いじめを受けた児童らの保護者と適切に共有されるよう、必要に応じて専門的な知識、経験者の意見を踏まえながら対応すること

(この企画は天童支社・野村健太郎が担当しました)

4月7日 山形新聞
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アンケート開示についても、天童市と東広島市の教育委員会の対応は同じだ。
学校は、「星になった少年」について、2度のアンケートによる情報収集を行っている。
平成24年10月30日には、全校生徒に対し、真っ白の紙に「星になった少年について知っていることを書いてください。」と生徒に文章で書かせ、その後で、個人面談を行っている。
平成24年11月22日には、心のケアに関するアンケート(第3回)情報提供 教師の発問(「星になった少年」が亡くなったことについて、知っていることがあれば書いてください)として全校生徒に対しアンケートをしている。
ご両親は、アンケートの集計したものや生徒さんが書いたアンケートの原本を個人情報開示請求しているが不開示となっている。
「星になった少年」の両親は、生徒の個人名のみ黒塗りにしての裁量的開示を求めているが教育委員会が応じない。
「星になった少年」の調査を行った生徒の死亡にかかる調査委員会と呼ばれていた市教委に設置された調査委員会も同級生の生徒、全校生徒の保護者、教員に対してアンケートを行っているが、これについても開示しない状況である。
両親は、アンケート、議事録の開示を調査委員会に対し当初から文章をまとめ提出している。いじめ対策推進法では、いじめられた生徒とその保護者に提供する場合があることを調査に先立ち、その旨を説明するなどの措置が必要であると述べている。
東広島市の生徒の死亡にかかる調査委員会は、アンケート結果は調査委員会以外の人が見ることはありません。と質問紙に説明文章として記述している。これは、隠蔽行為ともとれる行為である。
調査委員会は、昨年12月4日に解散しているが、その委員長がアンケートの原本及びアンケートを集計したもの、「星になった少年」の個人情報を個人管理していると教育委員会は言う。調査を委託した実施機関として、個人情報を適切に管理する責任があるのではないでしょうか・・・。
東広島市で作成された調査委員会のアンケート集計(公文書)が調査報告書が提出された後に、調査委員会の求めに応じ引き渡したと調査の実施機関である教育委員会は個人情報開示請求の不開示理由にしている。
その結果、教育委員会と遺族が事件の情報について共有できなくなっている。ご両親は、東広島市の公文書として調査報告書と一緒に適切に管理するよう求めている。

(ご遺族からの話より)

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