2020年12月28日付毎日新聞

県立高2自殺 「いじめに積極的に関与」と元野球部員を遺族が賠償提訴 福岡

福岡県久留米市の県立高校の野球部に所属していた2年生の男子生徒(当時16歳)が2018年6月、いじめ被害をうかがわせるメモを残し自殺した問題で、男子生徒の父親ら遺族3人が、いじめに積極的に関与していたとして、野球部員だった同学年の男子6人=既に卒業=に謝罪と慰謝料などの損害賠償を求める訴訟を起こした。18日、福岡地裁久留米支部(岡田健裁判長)で第1回口頭弁論があり、元部員6人は請求棄却を求めた。

 生徒の自殺を巡っては、県教育委員会の第三者委員会が部内のいじめが原因だと認定する報告書を提出している。しかし、いじめに加わったとされた元部員と保護者側は、遺族との2度の意見交換会でも「むしろ親しくしてやっていた」などと責任を全面否定し、一切謝罪に応じていない。

 このため、父親らは「息子の名誉と尊厳を回復するには、被告ら全員から真摯(しんし)な謝罪と、同じ過ちを繰り返さないという約束を受けることが必要不可欠だ」として今年10月に提訴。遺族側代理人弁護士によると、いじめを巡る訴訟で、謝罪を目的とした訴訟は珍しいという。

 訴状などによると、生徒は18年6月22日夜、自殺しているのが見つかった。生徒の携帯電話には同級生だった元部員らの名前と「毎日色々言われてもう限界やった」「生きているだけで苦痛だったよ」などとのメモがあった。県教委の第三者委は19年3月、生徒が元部員らから、ズボンを下ろされたり、携帯電話を隠されたりするなどのいじめを受けていたとし、いじめと自殺との因果関係を認めた。

 生徒の父親らは19年10月に県警久留米署に被害届を提出。同署は元部員3人を暴力行為等処罰法違反容疑で福岡地検久留米支部に書類送検し、地検支部は3人を家裁支部に送致したが、家裁支部の審判では3人はいずれも不処分となった。

 この日の法廷では父親が意見陳述。「まだ息子の墓参りには行けていません。息子がつらい思いをしたことに対し、加害生徒の反省や謝罪を受けて何らかの形で報告ができるようにならないと、墓参りに行くことができません」などと訴えた。【江刺正嘉】

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