平成28年3月11日 中国新聞社朝刊より
緊急連載
府中町中3自殺
<中>
過ちの背景

学校運営機能不全に

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府中町教委が開示した府中緑ヶ丘中の調査報告書
(画像の一部を修整しています)
「学校運営に大きな問題があり、責任があったと反省している」
広島県府中町立府中緑ケ丘中3年の男子生徒(15)の自殺を受けた8日夜の記者会見。坂元弘校長はそう自らの責任を認めた。なぜ間違った万引記録を基に進路指導するミスが起きたのか。取材や学校の調査報告書から、機能不全に陥っていた学校運営の状況が浮かび上がる。
問題の発端となる2013年10月の万引事案。この時の対応から、既に学校の規定を逸脱していた。生徒の問題行動が起きた場合、事実確認や保護者連絡、面談や別室での指導などを順次行うよう定めていた。
「基本を外れる」
しかし、’教員の対応は保護者への連絡や店舗への謝罪だけにとどまる。事実確認の一環として定める生徒自身による「事実確認票」の記入など、規定通りの対応を取っていなかった。
県教委は04年に文書で示した生徒指導の「留意点」、細部にわたる事実確認の重要性を繰り返し強調している。豊かな心育成課は 「繰り返し指導してきた基本から外れていたと言わざるを得ない」と指摘する。
これだけではない。生徒指導会議への校長たち管理職の不参加、休日に起きた生徒の問題行動に対する連絡体制がないなど、さまざまな不備が重複していた。
管理も明確なルールはなかった。進路指導でも必要な資料作成について前任者から引き継ぎがなかったという。調査報告書には「進路指導主事がどうしてよいか分からないという状況もあった」と記す。
 

「荒れ」で指定校
こうした状況に陥った要さらに、生徒指導の情報因の一つに学校側は「荒れ」を挙げる。同中は13~15年度、県教委の生徒指導集中対策プロジェクト事業の指定校になっている。
生徒の自殺を引き起こした遠因となった、受験で校長推薦を出す基準の厳格化も荒れを理由とした。校長推薦を得て高校に入学した生徒が問題行動を起こした翌年、高校から推薦枠を取り消された事例があったためとした。
それでも広島県教職員組合の石岡修執行委員長は指摘する。「確かに現場の教員は多忙で情報共有しにくい現状はあるが、生徒指導や進路指導は組織でするものだ。通常の運営であれば今回のミスを防ぐ関門はいくつかあったはずだ」 亡くなった生徒の両親は代理人弁護士を通じてこうコメントする。「ずさんなデータ管理ヽ間違った進路一指導がなければ、わが子が命を絶つということは決し
てなかったと親として断言できます」。機能不全に至つた経緯にまず向き合うことが学校再生の出発点になる。  (田中伸武、明知隼二)

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