【10月20日 河北新報社説】
「いじめは部活動とクラス内で複数の生徒によって行われ、身体的攻撃はほとんど認められない悪口や陰口、集団からの排斥といった集団いじめと判断できる」 「教師はいじめに対する認識、理解、解決への意欲を欠き、情報、兆候を学校全体で共有せず、対応すべき組織も機能しなかった」
天童一中1年の女子生徒=当時(12)=が昨年1月に自殺した問題で、第三者調査委員会は
「いじめが自殺の主要な原因」と認定した報告書を天童市教委に提出した。
134ページに上る報告書には、いじめの実態とともに、関係する教師をはじめ、学校に対する厳しい指摘、批判が多く盛り込まれた。
大津市の中2男子自殺を受け、一昨年9月にいじめ防止対策推進法が施行された後も、天童市を含めた東北、全国でいじめの存在が疑われる自殺が相次いでいる。
報告書は詳細な事実認定から8項目を提言し「本事案を教訓として二度とこのような事態を繰り返さないことを期待したい」と強調した。重い言葉として胸に刻みたい。
女子生徒は3学期が始まる2014年1月7日午前8時ごろ、登校途中に山形新幹線にはねられて死亡した。
自宅からは「陰湿な『イジメ』にあっていた」などと記したノートが見つかった。全校生徒約530人へのアンケートでは、13人がいじめを見聞きし、00人以上がいじめに関して記述した。母親が2度教師に相談、本人も友達関係で不安を訴えていた。
第三者委は6人で構成し、調査員として弁護士2人を委嘱した。特に重視したのが女子生徒を取り巻く人間関係の把握だった。学校などが集めた断片的な情報、資料を読み解き、生徒、教職員、遺族からの聴取、証言をつなぎ合わせて、自殺に至った状況を浮かび上がらせた。
報告書によると、クラスと部活動が共通する生徒を中心とするグループがいじめを繰り返した。
女子生徒はおとなしく1人でいることが多く、異質に思え、気に食わなかったとみる。周囲の多数の生徒は関わりを避け、あるいは「異を唱えると自分に矛先が向く」と考えて傍観した。
自殺の約3カ月前、部活動のミーティングを機に、いじめは激しさを増した。顧問の意図に反し、部員
から悪口を非難された生徒は、そのことを逆恨みし、グループメンバーが同調、行為がエスカレートしていった。
女子生徒は「一生懸命やってみたが状況は改善せず、追い詰められて自殺を選んだ」と結論付けた。
教師、学校への提言は、対応の問題点から導き出した。身体的暴力を伴わないいじめへの認識、部活動でも対策を取る義務、教師間の連携と情報の共有などを挙げた。
「傍観者のみならず、直接の加害生徒ですら、当事者意識や内省が明らかに不足していることも特徴である」。報告書は繰り返し指摘した。
天童市の事案は決して特異なケースではないだろう。多角的な検証、分析を重ねた報告書を、痛ましい事態の再発防止に生かしたい。