【10月21日付 河北新報】

女子生徒が山形新幹線にはねられ自殺した現場。死から1年9カ月たっても花などの供え物は絶えない

◎なぜ起きた集団いじめ(上)追い詰められる少女

昨年1月、天童一中(山形県天童市)1年の女子生徒=当時(12)=がいじめを苦に自殺した問題は、第三者調査委員会がまとめた調査報告書で、いじめの詳細な実態が明らかになった。報告書はクラスと部活動で続いた悪口や嫌がらせ、仲間外れを「集団いじめ」と断定し、傍観した多くの生徒、教職員らの責任も問うた。集団いじめはなぜ起きたのか。女子生徒のSOSをなぜ見落としたのか。134ページに及ぶ報告書から検証する。(山形総局・伊藤卓哉、長谷美龍蔵)

いじめが自殺の主要な原因と認定した報告書は、女子生徒を取り巻く人間関係をつぶさに描き出した。
クラスには遠慮なく大声でしゃべり、誰彼構わず悪口を言う女子グループがあり、いじめを主導した加害生徒らが中心にいた。所属したソフトボール部でも、加害生徒ら重複するメンバーがグループを形成。
クラスと部活動で影響力を持った。

<泣きながら訴え>
女子生徒はおとなしく、1人で小説を読むことも多かったが、話せば面白い印象を持たれていた。個性の強いグループには気後れし、嫌悪感もあった。グループはそんな態度が「異質」に思え「気に食わず」「いら立ち」を覚えたとみる。
2013年5月下旬、女子生徒への悪口が始まった。「いじめは部活動とクラスで複数の生徒により行われ、身体的攻撃は認められない悪口や陰口、集団からの排斥といった集団いじめ」があったと判断した。
女子生徒は表情を変えることなく、聞いていない、気にしていない雰囲気を漂わせた。だが、7月上旬、「私何か言われてる?」とクラスメートに尋ね、普段は感情をあらわにしないが、悪口への不満を漏らした。
部活動では、ペアを組む多くの練習でいつも1人余る存在にされ、相手を探し回る姿を嘲笑された。捕球できないボールをわざと投げられる光景も見られた。
2学期になり、女子生徒は誰も名乗りを上げないクラスの役職に立候補し、積極的な様子を見せていた。
ところが、9月10日前後にあった部活動のミーティングをきっかけに、いじめはエスカレートしていく。
顧問は「陰口でなく、みんなの前で」言うよう指導し、女子生徒は「仲間外れをしないでください」と泣きながら訴えた。だが、加害生徒の悪口や問題行動を非難する声が上がり、加害生徒は逆恨みの感情を持って行動を激しくした。

<「校舎に来るな」>
11月になると、悪口は言葉や黒板への書き込みを含め「常態化」した。他の生徒には無視や、仲間外れにするよう働き掛け、話しているだけで干渉した。
女子生徒は授業中までノートに絵や小説を書くことに没頭するようになり、教師に注意されている。友人としゃべらなくなり、「見て分かるくらいの孤立感」があった。悪口は、冬休み前最後の練習まで続いた。
女子生徒は3学期が始まる14年1月7日、山形新幹線にはねられ自殺した。新築した校舎を初めて使う日だった。遺族側は、新校舎に来ないよう言われたことが引き金になったとみる。
報告書は「一生懸命やってみたが状況の改善につながらず、自分を押し殺して心を閉ざしたが、孤立しただけでいじめは収まらず、追い詰められ、自殺を選んだ」と結論付けた。

●報告書の提言
・心理的な嫌がらせなど暴力を伴わないいじめを過小評価してはならない。日常的な悪口や嫌がらせは被害生徒にとってダメージが大きく、深刻な事態を発生することを正しく認識した対応と措置を実践する必要がある。

[天童いじめ自殺問題]天童一中1年の女子生徒が3学期が始まる2014年1月7日午前8時ごろ、登校途中に山形新幹線にはねられ死亡した。自宅からは陰湿な『イジメ』にあっていた」「ダレカ、タスけテよぅ」などと書かれたノートが見つかった。学校は1月15日、全校生徒約530人を対象にアンケートを実施した。
13人が女子生徒へのいじめを直接見聞きし、100人以上がいじめに関して記述した。

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