平成30年12月11日付朝日新聞

調査求めた父、校長は「金目当てと…」 奄美の中1自殺

鹿児島県奄美市で2015年、市立中1年の男子生徒(当時13)が自殺し、その問題を調べていた市の第三者委員会は、生徒をいじめの加害者と誤認した担任教諭の指導や家庭訪問で心理的に追い詰められた末の自殺と認定した。学校や市教委の対応も不適切と指摘した。

  「過ちが繰り返されないように、息子の死と真剣に向き合ってほしい」。自殺した男子生徒の40代の父親は訴える。

「まじめで努力家。やさしい性格だけど、弟を泣かせることもある普通の、かわいい子」。涙をぬぐい、父親は続けた。

釣り好きで、海に連れて行くと喜んだ。幼いころからサッカーが好きで、中学でゴールキーパーの正選手に。自殺前日も試合に出た。翌朝、並んで歯磨きをした母親が「大きくなったね」と声をかけると笑顔をみせ、買ってもらったばかりのスパイクを手に元気に登校した。

その夜、悲報が届いた。「誰に聞いても変わった様子はなかった。自殺は冗談だと思った」と、父親は今も信じられない。自殺の原因について学校側は「不明」と繰り返したが、市内の校長を集めた会議で市教委は「いじめた側が責任を感じて自殺した」と説明した。「うつ病」「自殺願望があった」など我が子の名誉を傷つける根も葉もないうわさが地域に流れ、「傷ついた家族に追い打ちをかけられ、本当にきつかった」と振り返る。

第三者委員会での調査を求めると、校長から「(遺族が)金目当てと言われる」「生徒が動揺する」などと再考を促された。「不手際を追及されたくないのだろうな」と感じ、怒りを抑えるのがやっとだった。

第三者委の報告書は、いじめの加害者の疑いを晴らし、自殺は担任の不適切な指導が原因とした。だがこれからが本当のスタートという気持ちだ。何を誤り、どうすべきだったか。学校や市教委自らが検証し、再発防止に向けて本気で動く。「それだけが遺族の願いです」(外尾誠)

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