平成30年1月16日 朝日新聞福島版
追い詰められた末、悲劇 須賀川いじめ自殺報告書
開示された市いじめ問題専門委員会の調査報告書と資料。報告書は45ページに及ぶ
須賀川市立中学1年の男子生徒(当時13)が昨年1月に自殺した問題で、市教育委員会が設けた「いじめ問題専門委員会」の調査報告書が15日、朝日新聞の情報公開請求に対して開示された。学校で様々ないじめを受けた男子生徒が、追い詰められた末に
命を絶った状況がうかがえる。
男子生徒が中学に入学して1カ月後の2016年5月。男子生徒に触ると「菌がつく」として、その「菌」をほかの生徒が触って回す「菌回し」という行為が始まった。
この行為は2学期になって激化。担任の指導で沈静化したが、3学期まで続いたという。専門委は「最終的にはクラスの男子の大半である9人」がかかわったと認定している。
学級内での日常的な悪口やからかいは入学直後から始まった。給食の時、男子生徒が触ったものを避けるような言動をとるクラスメートもいた。クラスメートによる一連の行為について、専門委は「いじめに該当する」と断定した。
嫌がらせは部活動でもあった。男子生徒は6月から「ハゲ○○」と2人から呼ばれるようになり、10月からは「ゴミ○○」とも呼ばれるようになった。専門委は「人格を否定するもの」と厳しく非難している。
校内の対策 機能せず
学校側は「いじめ防止基本方針」を策定していた。いじめと思われる言動を把握した時はまず「学年会」で議論したうえで、校内の「いじめ対策委員会」に報告することになっていた。
だが各学級の担任らは、把握した事柄すべてを学年会に報告するわけではなかった。「クラスで解決できる問題はクラスで対応するという気風になっていた」とされ、このため男子生徒へのいじめを検討する余裕がなかったという。
担任はいじめを見聞きするたびに、加害側の生徒を指導していたとされる。ただ、専門委は悪口を言った生徒に対する担任の指導内容を「抽象的」と指摘。スクールカウンセラーに情報を伝えなかったとも指摘している。
教頭が担任から「菌回し」の報告を受けたのは12月以降だ。その後、学級日誌に「いじめがなくなってよかった」と記載されたため、教頭はいじめが解消されたと認識していたという。
専門委、学校の対策を批判
専門委は、いじめを過小評価し、「単なるからかい」ととらえていた教員が多くいたことを認定している。また教員の連携不足や組織的な対応の不十分さ、男子生徒と加害側の生徒双方の行動や態度などが把握されていなかったとも指摘。これらが重なって「最悪の結末に至った可能性が否定できない」とし、学校側を強く批判している。
一方、男子生徒は小学生のころから学習面で課題を抱えていた。専門委は、男子生徒に必要だった「特性に合わせた学習環境」が整備されず、「ストレスを抱える状態に置かれ続けていた」としている。
追い打ちをかけたのが、いじめだった。クラスメートの半数以上や部活のチームメートから人格を否定する悪口を言われ、からかわれた。
専門委は「いじめによってさらに相当強度のストレスを付加され、そのことが自死にまで追い詰めた」と指摘している。(鈴木剛志)