平成29年2月15日中日新聞

骨折で成績低下、志望校進学厳しく 一宮・自殺の中3生徒

  愛知県一宮市立浅井中学校3年の男子生徒(14)が、大阪市内の商業ビルから飛び降り自殺した問題で、男子生徒が昨年9月の体育祭で両手親指を骨折した後、けがでペンをうまく握れず「受験前なのに学習が遅れている」と家族に訴えていたことが分かった。骨折後、2学期の成績が落ち込み、志望校への進学は厳しい状況だったという。

 両親らによると男子生徒は理数系の科目が得意で、県外の工業高等専門学校が第1志望だった。仲の良い友人と一緒に目指し、母親と見学にも行っていた。

 ところが、骨折で9月末から1カ月ほど通院。ペンを持って計算や英単語を書くことなどができず、「書かないと覚えられない」と悩んでいた。母親の要請で学校は10月の中間考査で、解答時間の延長と別室で受けさせるなど対応した。しかし、2学期の内申は1学期より少し下がり、模試の偏差値も10ポイント近く下落。高専への進学は、2月の三者面談で「成績的に厳しい」と伝えられていたという。

 市教委によると、男子生徒のけがの理由を母親が電話で担任に問い合わせた際、担任は「用事がある」と言ってすぐに対応せず、教頭に報告もしていなかった。また、学校の災害共済給付制度を利用してけがの治療費などを請求する書類を生徒が担任に提出したが、突き返されたという。担任はこれらの一部を否定しているが、同校はこの対応を「不適切」としている。

 両親は「学校の不適切な指導とともに、骨折が原因で思うように学力が伸び悩んだことも、自殺のいろんな理由の1つだったのではないか」と話した。

 市学校教育課の坂井辰美主監は取材に「授業中にノートの補助や授業要旨のプリントを準備するなど配慮するべきだった」と話した。

 男子生徒は自殺する前に友人へ託した携帯ゲーム機に、メモ機能を使い、「担任によって学力、存在価値、生きがい、性格…私の人生全てを壊された」などの文章を残していた。

 浅井中は13日、全校生徒600人にアンケートを実施。14日から生徒向けにスクールカウンセラーも配置し、11人がカウンセリングを受けた。

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