2020年11月13日付北海道新聞電子版

高1自殺 母親の控訴棄却 札幌高裁 顧問の叱責「不適切」と認定

札幌高1自殺

亡くなった生徒の遺影を手に改憲する生徒の姉(右)と母親

札幌市の道立高1年の男子生徒=当時(16)=が2013年に自殺したのは、所属する吹奏楽部の顧問の男性教諭から叱責されたのが原因として、生徒の母親(53)が道に対し、約8400万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、札幌高裁は13日、母親の控訴を棄却した。長谷川恭弘裁判長は、顧問の叱責を不適切な指導と認めたが、自殺の予測は困難だったとして法的責任を否定。自殺後の高校の対応に限り、道に110万円の賠償を命じた一審札幌地裁判決を支持した。

判決によると、生徒は13年1月、他の部員とメールのやりとりなどでトラブルとなり、同年3月には別の発言を巡って顧問から「俺の子どもが言われたら、おまえの家に怒鳴り込んで名誉毀損で訴える」と叱責された。部活を続ける条件として、部員に一切メールしないことなども要求され、生徒は翌日に自殺した。

判決理由で長谷川裁判長は、自殺前日の顧問の言動について、「丁寧な事実確認がなく、条件を示した理由も判然としない」と述べ、不適切と認めた。「生徒を混乱させ、自殺の契機になった」とも指摘した。

ただ、自殺には他の部員との関係も影響しており、「死を招くほどの心理的負荷を伴う指導とまでは言えない」とした。自殺の兆候が多く見られたともいえず、叱責叱責後に防ぐのは困難だったとして、一審に続いて顧問の責任を認めなかった。

一方、高校が自殺原因の調査のため、在校生にアンケートを行ったが、道教委が規定する5年間の保管期限に違反し、回答文書を廃棄したと認定した。「母親が自殺原因を調べる資料に利用できなくなり、保護者の利益が侵害された」と判断し、高校を設置する道に賠償を命じた一審判決を支持した。

判決を受け、道教委は「主張が認められたと考えるが、厳粛に受け止める」とコメントした。(中秋良太)

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

Post Navigation