平成29年5月27日河北新報
<仙台中学生自殺>市長 問われる覚悟
◎終わらぬ連鎖(下)岐路
<国は見切り>
不手際が続く仙台市教委に、国は見切りを付けた。
「教育委員会主体では、透明性や信頼性の観点から困難だ」
22日夕、文部科学省。4月26日に起きた青葉区折立中2年の男子生徒(13)の自殺を巡り、義家弘介文部科学副大臣は奥山恵美子市長に市長主導での調査を強く求めた。隣には大越裕光教育長が同席していた。
義家氏が大越氏を呼び出したのは、泉区館中の男子生徒=当時(12)=の自殺(2014年9月)への市教委の対応に苦言を呈した15年11月に続き2回目。大越氏は終始、沈痛な表情でうつむいたままだった。
泉区南中山中の男子生徒=同(14)=の自殺(16年2月)も含め、2年7カ月の間にいじめ絡みの自殺が3件続いた仙台市。義家氏は「重大性の認識の欠如」を特に問題視した。
「いじめ重大事態の疑いもないのか」。折立中生徒の自殺を発表した4月29日の記者会見で、こう問われた大越氏は「先入観を持たないようにしている」と否定。だが、3日後には文科省の指導で、重大事態として調査を進める方針に一転させた。
教諭2人による男子生徒への体罰も、保護者の通報があるまで市教委は把握できなかった。義家氏は「市長のリーダーシップで、なれ合いを排して外の目を入れるべきだ」と、市教委の調査能力を断罪した。
<独立性尊重>
義家氏から直々に指導力発揮を期待された奥山氏も当初、反応は曖昧だった。面談後、「副大臣も全面的にギアを入れ替えることが有効だとは思っていない」との見方を示した。
15年4月の地方教育行政法改正で、首長による教育大綱の策定や総合教育会議の開催、教育長の直接的な任命・罷免が可能になり、教育行政への首長の権限が強まった。ただ、市長就任前は市教育長だった奥山氏は、教委の独立性や中立性を尊重する姿勢が目立つ。
市教委が男子生徒への体罰を確認した今月19日。「体罰を見抜けず、力不足と批判を受けても仕方ない」と謝罪した大越氏を、奥山氏は「現行の教育長(大越氏)の下で調査を進めるべきだ」と罷免を否定した。
<8月で引退>
義家氏との面談から2日後の24日、奥山氏は記者会見で、いじめが絡む3件の自殺への対応や、全市立学校での体罰の実態調査のため、市長部局に第三者機関を新設する方針を表明。ようやく市長主導にかじを切った。
「教委のみで物事を進めることに疑義があり、身内に甘くなるという懸念もある。しっかりと私が関与していく」。
奥山氏は調査結果次第で市教委を組織改編する可能性にまで言及したが、「教委抜きで完全に進むわけではない」「学校現場を預かり、良くしていくのは教委の一人一人の力だ」と付け加えるのも忘れなかった。
悲劇の連鎖を今度こそ断ち切れるのか。奥山氏は8月で市長を引退する。岐路に立つ仙台の教育行政を、残された時間で新たな道へと導く奥山氏の覚悟が問われている。

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