平成29年11月10日毎日新聞
取手・中3自殺 両親苦悩の2年 第三者委、再調査へ
取手いじめ知事再調査
菜保子さんの写真を見返す父考宜さん(右)と母淳子さん。自宅にはピアノの演奏や旅行などで笑顔を見せる菜保子さんの
写真が飾られている=茨城県取手市で7日午後1時8分、玉腰美那子撮影

2015年11月にいじめられて苦しんでいる思いを日記に残し、自ら命を絶った茨城県取手市立中3年の中島菜保子さん(当時15歳)の父考宜(たかのぶ)さん(46)と母淳子さん(47)が、いじめの有無や自殺との因果関係を改めて調べる県の第三者委員会が近く設置されるのを前に、毎日新聞の取材に応じた。いじめを認めなかった市教委の第三者委が解散して5カ月。両親は「今度こそ真実を明らかにしてほしい」と語る。【玉腰美那子】
菜保子さんが自殺して11日で2年。考宜さんは今も朝に目が覚めるたび「何かできなかったのかという絶望感」にさいなまれている。菜保子さんの部屋は、お気に入りのぬいぐるみや韓国アイドルのポスター、ノートが置かれた机など「あの日」のままだ。
「いじめがあったのではないか。調べてほしい」
両親が学校に訴えたのは、自殺から5日後に菜保子さんの日記を見つけたからだった。「いじめられたくない」「(ひとり)ぼっちはいや」。悲痛な訴えを目にした淳子さんは「やっぱりいじめが……。こんなに苦しんでいたの」と驚き、娘の気持ちに気づけなかった自分も責めた。
ところが、学校が全校生徒を対象に「いじめの有無」について行ったアンケート調査では、菜保子さんの名前も自殺の事実も伏せられていた。「いじめは認められない」と発表されたのは、16年3月に同級生が卒業した直後。2人は不信感を募らせた。
さらに2人の心をかきむしったのは、市教委が同級生らに「(菜保子さんが)ピアノで悩んでいた様子はなかったか」と尋ねていたと聞いたからだった。
2歳のときにピアノを習い始めた菜保子さんは「ピアニストになりたい」と夢を語っていた。ピアノを専門的に学ぶため東京の私立高への進学を決めていた。2人は「あれほど本気でピアノに取り組んでいたのに、それを苦にして自殺するなんてありえない。
菜保子の努力を踏みにじっている」と振り返る。
毎日新聞の情報公開請求で開示された16年3月16日の臨時市教委の議事録を見ると、「いじめはなかった」とした根拠として、アンケートや聞き取り調査の結果の他に、もう1項目が挙がっている。しかし「公にすれば個人の権利を害する恐れがある」として黒塗り(非開示)にされている。考宜さんは「ピアノを原因にしているのではないか。まだ何か隠している」と疑う。
考宜さんは「(自殺後の)市教委の対応が正しかったかも含めて、今度こそしっかり調査し、真実と向き合う大人の姿を見せてほしい」と求める。

【ことば】取手中3女子生徒の自殺
2015年11月10日、茨城県取手市立中3年の中島菜保子さん(当時15歳)が自宅で自殺を図り、翌日死亡した。市教委は「受験への配慮」を理由に自殺の事実を伏せて調査し、いじめ防止対策推進法の「重大事態」に該当しないと結論。市教委は第三者調査委を設置したが、両親は「公平な調査を」と反発し今年6月に第三者委を解散。県が12月上旬にも新たな第三者委を設置する。

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