平成31年4月27日神戸新聞
第三者委、遺族と信頼関係築けず再調査へ 宝塚・中2自殺
最後まで信頼関係を築けなかった。2016年12月、宝塚市立中学2年の女子生徒=当時(14)=が自殺してから2年4カ月余り。同市は26日、生徒が自殺に至った経緯の再調査を決めた。市教育委員会は、生徒の自殺を調査した第三者委員会と遺族との意思疎通が不十分と明らかにし、「遺族の理解」という制度の課題が浮き彫りになった。(中島摩子、井上 駿、大盛周平)
会見した市教委の森恵実子教育長は「時間を要し、混乱を招いた。大変申し訳ない」と謝罪した。同席した市教委幹部は何度も「異例」の言葉を口にした。
中でも、第三者委が昨年秋、市教委に提出済みの報告書を約2カ月で改訂した点を重視し「(事前に)遺族に説明していたら改訂に至らなかった」と説明。また「第三者委は公正中立を重視するあまり、遺族への情報提供がスムーズでなかった」と評し、第三者委が遺族や学校、市教委などとの関係に苦慮したとも推し量った。
さらに、市教委が非公開とした報告書の概要を、第三者委が声明文で明らかにすると、わずか2日後に遺族が抗議声明を出す事態に。これを受け、第三者委の委員長を務めた弁護士が「遺族の気持ちに配慮が足らなかった」と釈明するなど、混迷ぶりが際立った。
その後も報告書の公開範囲で、遺族は「事実認定を中心にしてほしい」と求めたが、第三者委は「全体を示さないと調査の趣旨が伝わらない」と主張し、折り合わないまま非公開が決定。森教育長は市教委も「調整する努力が足らなかった」とし、「市教委にも第三者委を任命した責任がある」と踏み込んだ。
第三者委の調査や制度を巡っては、文部科学省が本年度、有識者らの委員会があり方を議論する。同省の担当者は「第三者委と遺族側が、信頼関係が築けない事案が多い」とし、委員の選任方法▽第三者性の担保▽いじめの事実認定−などが論点になる見込み。
立命館大大学院の春日井敏之教授(臨床教育学)は「遺族との調整がしっかり図れていれば、ここまでこじれなかったのではないか」と指摘。その上で「第三者委員会が公平公正に検討を進めるのと、遺族に寄り添うのは矛盾しない。遺族に納得してもらうためにも、経緯を報告しながら丁寧に報告書を作成すべきだった」と述べた。