2016年11月10日 中国新聞社
広島県教職員組合
石岡修執行委員長(54)
「教育や学校の在り方を立ち止まって見直す機会にしないといけない」と話す石岡さん
1962年、尾道市生まれ。銀行員を経て89年、広島県の旧油木町(現神石高原町)の油木中教諭。 98年から県教組専従となり、広島平和教育研究所事務局長、県教 組書記長を歴任。 2012年から現職。
競争重視 検証する必要
-広島県府中町教委が設置した第三者委員会の報告書は、府中緑ケ丘中の生徒指導の在り方を厳しく指摘しました。
高校の推薦を盾に生活面の指導をする「アメとムチ」の問題に踏み込んでおり、一定に評価できる内容だ。とりわけ1年生当時の行為を理由に、械的に認めないのは教育とはいえない。こうした極端な方針を、決定したことは、今の学校現場の雰囲気を表している。
-今の学校現場の雰囲気とは。
学校は、教員が生徒一人一人の生回目景や人間関係にまで目を配った上で、指導方針について教員同士が真剣に議論し合う場であるはずだ。しかし、今は校長や教頭によるトップダウンの指示や、決められた基準に従って物事を判断してしまう傾向がある。報告書作りや部活指導などにも追われ、かつての風土が失われつつある。
-なぜ変わってしまったのでしょうか。
全てを数字で評価し、競争を促す教育行政の問題がある。学校は、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の成績による序列化だけでなく、生徒の学習状況や生活態度に関する数値目標に沿って年度ごとに評価を受ける。全県1学区となった県立高も生徒確保のために進学実績を競い、推薦などで中学側に求める水準は厳しくなっている。
-生徒指導への影響は。
外からの評価に振り回されて数字を追いかけ、生徒に向き合えなくなっている。こうした状況が(成績だけで進学先を割り振る)「輪切り指導」や、機械的な評価につながる。今回の件では、そこに「荒れ」への対応を迫られていたことも重なったのだろう。それでも、生徒の背景に目を向ける教育観を教員たちが共有していれば、「なぜ万引したのか」と考え、その記録が誤っていることに気付けたはずだ。
-どのような対策が特に必要ですか。
教員の多忙の解消に加えて、競争重視の教育行政を立ち止まって検証する必要がある。どうすれば生徒を中心とした学校文化を再建できるのか。県教委が
この問題から何をくみ取り発信するのか、注視していきたい。
(明知隼二)