【11月15日付 朝日新聞デジタル】
被害生徒が担任教諭に提出した連絡帳には、「ぼうげん、ぼう力がすぎます」「先生のしらないところでこっそりとぼくをつねったり」などといじめを訴える文言が並んだ=被害生徒の母親提供
札幌市内の私立中学校の1年の男子生徒(12)が入学直後から半年間にわたって複数のクラスメートからいじめを受け、退学したことがわかった。同校もいじめを認め、いじめ防止対策推進法の「重大事態」として北海道庁に近く報告するとしている。
同校や被害生徒の母親(50)によると、生徒は今年4月に入学し、その直後から同じクラスの男女の生徒数人から繰り返しいじめを受けるようになった。殴られたり蹴られたりするなどの暴力に加え、無料通信アプリ「LINE」で、「こ・ろ・す・ぞ」などのメッセージが送られてきたという。
被害生徒は9月中旬、登校できなくなり、母親にいじめを明かした。母親から相談された同校は加害生徒らへの聞き取りなどを進め、いじめがあったと判断した。
同校によると、加害生徒らは謝罪の意思を示しているほか、同校もいじめを見抜けなかったなどとして謝る方針。主導した生徒を停学処分にし、ほかに関与した生徒らとともに指導するという。
被害生徒は不登校になったころ、自殺をほのめかすなど精神的に不安定な状態が続き、病院で神経症の疑いがあるなどと診断された。10月末に退学し、公立中学への転校手続きを済ませたという。
校長は「担任はふざけているのだと思い、いじめだと考えなかった。生徒と母親には申し訳ない」と話した。
母親は「学校の助けがなく、転校を余儀なくされたことに憤りを感じる」と話した。
■執拗に暴力、担任にSOS出したが
札幌市内の私立中学校で発覚したいじめは、半年もの間、複数のクラスメートによって執拗に続けられた。
被害生徒は担任に「SOS」を出しており、学校側の対応が問題になりそうだ。
被害生徒の母親によると、息子からいじめの存在を打ち明けられたのは9月17日の夜。この日も学校でいじめを受けていた。朝、いじめを主導した男子生徒から背中を強くたたかれ、昼休みには水筒の茶を勝手に飲まれ、顔に吐きかけられた。音楽の授業中、女子生徒からシャープペンシルで何度も太ももを刺されたという。
翌日から被害生徒は頭や腹の痛みを訴えて学校を休んだ。母親はこの日、いじめの存在を学校に知らせた。
母親が聞かされたいじめの実態は壮絶だった。入学式の翌日、すぐ前の座席だった男子生徒から「小学校の時からいじめをやっていた。お前に決めた」と言われ、いじめが始まった。別の生徒もけしかけ、少なくとも男女計8人の生徒がいじめに加担したという。
被害生徒は加害生徒らから殴られるなどしたほか、床に押しつけられて一本ずつ髪の毛を抜かれたこともあった。筆箱を逆さまにして中の筆記用具を床に落とされることが繰り返され、新品の消しゴムを粉々にされたという。
主導した生徒からは「下の下の人間」「(お前は)俺のおもちゃだ」などと言われ、LINEで同じ画像を100回以上送信される嫌がらせも受けたという。
被害生徒は7月、担任教諭に「SOS」を出した。教諭に提出した連絡帳の中で、加害生徒の一人を名指しし、「3回強くたたかれた」「何回もやられているのではっきり言っていいかげんやめて欲しい」「先生のしらないところでこっそりとぼくをつねったり足をふんでみたり」などと訴えた。担任からは「少し厳しく個人的に話します」などのコメントが書かれて返却されたが、いじめは激化したという。
母親は「息子が連絡帳で訴えたのに、担任はなぜいじめを防げなかったのか。相談から2カ月もたつが、学校からは調査結果も知らされていない」と憤る。母親は仕事を辞めて生徒に付きっきりの状態になっているが、被害生徒は精神的に不安定なままだという。(関根和弘)