令和4年11月5日 中国新聞デジタル
遺族「個性や立場に寄り添う教育を」 東広島の生徒自殺訴訟
黒く塗られた部分が目立つ開示資料を広げ、「息子の死の真相が知りたい」と語る両親(撮影・田中慎二)
2012年に広島県東広島市立中2年の男子生徒=当時(14)=が自殺したのは、教員による不適切な指導など「学校側が安全配慮義務を怠ったことが原因」として、両親が市などに約1億1700万円の損害賠償などを求めた訴訟で、市などと係争中の父親(53)と母親(57)が、中国新聞の取材に応じた。息子の死の背景が少しでも明らかになるよう、裁判に託す思いを語った。(教蓮孝匡)
―どんな思いで裁判に臨んでいますか。
母 大好きな野球を頑張っていた息子が、なぜ死ななければならなかったか。真実に近づきたい。事実を一つ一つ見つけるための裁判。先生たちが法廷で語った言葉で、初めて知り得た事実や思いもあった。
父 一方で、学校でのことは裁判までしなければ親でも知ることができないのかとも思う。本来は第三者調査委員会が報告書で示すべきこと。再調査を市や県、国に請願・陳情したが実らず、文書開示を求めても非開示や「黒塗り」ばかり。最終手段としての裁判は長く、もどかしい。
―いわゆる「指導死」は全国で後を絶ちません。
父 同じような悲しい経験をした全国の親たちでつくる会に参加し、体験を分かち合ったり、子どもの命を守るための活動をしたりしている。近年、職場でのハラスメントへの社会認識は高まったが、「先生の指導が子どもを極度に追い詰めることがある」との認識も広がることを望む。
母 息子のように、厳しい指導に苦しむ子が今もいるかもしれない。子どもの個性や立場に寄り添う接し方が当たり前の教育現場になってほしい。