【11月5日付 朝日新聞】

名古屋市西区の市立中学校1年の男子生徒(12)が「いじめが多かった」という遺書を残して自殺した問題で、市教育委員会が4日実施した同校の全生徒へのアンケートの結果、複数の生徒が「部活動でこの生徒へのいじめを見た」と回答したことがわかった。
市教委によると、生徒の遺書には「学校や部活でいじめが多かった。部活で『弱いな』と言われていた。もう耐えられない」などと書かれていた。生徒は卓球部に所属していた。
市教委は4日、中学校の全校生徒約500人に、この生徒へのいじめを目撃していないか、生徒から相談されたことがないか、などを尋ねる無記名のアンケートを実施。その結果、複数の生徒から、この生徒が部活でいじめを受けるのを見聞きしたとの回答があったという。
市教委は結果をまとめ、5日に公表する。
また、関係者によると、この生徒は「お前くさい。消臭剤を持ってこい」と暴言を浴びせられたこともあったという。市教委がアンケートとは別に進めている卓球部員や同級生らへの聞き取りでも、複数のいじめが確認されたという。
卓球部員は約80人。実力で8グループに分けられており、男子生徒は下位のグループだった。
部員によると、上級生が特定の下級生にグラウンドを何度も走らせるなど、行きすぎた練習をさせていたという。学校も問題があるとみて、一部の上級生に注意していた。
男子生徒は1日夕方、同区にある市営地下鉄鶴舞線の庄内通駅で、入ってきた電車に飛び込み自殺した。市教委は翌2日の記者会見では、「(男子生徒への)いじめは確認できていない」と述べていた。

■市教委、第三者機関に調査依頼へ
名古屋市教委は、専門家らでつくる第三者機関「市いじめ対策検討会議」にも調査を依頼する方針を固めた。5日に開く教育委員会議で正式に依頼を決める。アンケート結果などを踏まえ、自殺に至った経緯や、学校や市教委の対応に問題がなかったかを調べる。
今回の自殺をいじめ防止対策推進法に定める「重大事態」と位置づけた。検討会議は、いじめの有無などについて客観的な立場から調べ、市教委に提言するため、昨年設けられた。メンバーは精神科医や弁護士、臨床心理士ら6人で、今月中に初回会合を開く予定だという。
また、16の区ごとに小中学校長が参加する定例の校長会が4日あった。市教委の担当者が、この問題について説明し、「児童生徒を見守り、一人ひとりに寄り添った指導に努めてほしい」と呼びかけた。
西区の別の中学校の校長は会合後、取材に「1人の命が失われ、ショックを受けている。二度と同じことが起きないよう、どんなささいなことも相談しやすい学校づくりに取り組みたい」と話した。
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【11月5日付 朝日新聞】
[b]「いじめ直接見た」20人 名古屋中1自殺で全校調査公表[/b]

自殺した中1男子生徒に関するアンケートの結果について会見する名古屋市教委の金田慎也学校教育部長(左)と三浦友久指導室長=5日午前、名古屋市役所で(今泉慶太撮影)

名古屋市西区の市立中学校一年の男子生徒(12)が「いじめが多かった」との遺書を残して自殺した問題で、市教委は五日、生徒が通っていた中学校で実施した緊急アンケートの結果を公表した。男子生徒へのいじめやからかいについて、二十人が「直接現場を見た」と回答した。

◆「本人から聞いた」3人
学校や市教委は、これまで教職員と九人の同級生に聞き取り調査したが、具体的ないじめの事実を確認できていなかった。記者会見した三浦友久・市教委指導室長は「学校側の認識と子どもが見た結果が違っていたことを踏まえ、いじめがあったということを前提に詳細に調査する」と述べた。
アンケートは四日の授業中などに実施し、生徒五百二十八人のうち、欠席者らを除く四百九十四人が回答した。
いじめの内容として「冷やかしや悪口」「仲間はずれ」など七項目を示し、「直接現場を見た」「本人から聞いたり相談を受けたりしていた」などの中から回答を求めた。
二十人が「直接現場を見た」、三人が「本人から聞いたり相談を受けたりしていた」、五十七人が「本人以外の人から聞いた」と回答。「直接現場を見た」という二十人は一年生十四人、二年生四人、三年生二人で、いじめの内容は複数選択で尋ねたところ「冷やかしや悪口」(十三人)、「仲間はずれ」(六人)などの行為を挙げた。目撃した場所は「部活動」が九人、「部活以外の学校生活」が十人だった。
アンケートは無記名の選択式で、具体的な日時や場所は把握できていない。結果は五日午後の市教委定例会で検討する。今後は、同級生や同じ卓球部の生徒を中心に聞き取り調査を続け、弁護士や精神科医らでつくる「市いじめ対策検討会議」が自殺に至った経緯を調べる。
市教委は定例会終了後、梶田知(さとる)委員長が男子生徒宅を弔問する。男子生徒は一日、西区の地下鉄庄内通駅構内で電車にはねられ死亡した。自宅のノートに「学校や部活でいじめが多かった。部活では『弱いな』と言われていた。もう耐えられない」と書き残していた。

◆教頭「ショック」
亡くなった男子生徒が通っていた中学校では五日朝、PTA関係者らが通学路や校門で見守る中、生徒たちが登校した。
市教委が公表したアンケート結果を受け、教頭は「大変ショックを受けている。学校としていじめを把握できていなかった悔しさがある」と声を落とし、「どういう状況だったか子どもや職員から聞き取りしたい」と話した。
男子生徒と同じ卓球部に所属する二年の男子生徒は「アンケートにはいじめの現場は見たことがないと答えた。
部活でも変わった様子はなかったですが…」と困惑した表情を浮かべた。

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