【11月11日朝日新聞名古屋本社版】

総合教育会議で生徒の死を悼む河村たかし市長(右)や教育委員ら=名古屋市役所

名古屋市西区で市立中学1年の男子生徒(12)が自殺した問題で、担任の教師が今年4月の時点で「いじめにあいやすい」という印象を持っていたことがわかった。心理分析テストでも「支援が必要な生徒」と判定されたが、学校は具体的な支援をしていなかった。市教育委員会が10日、総合教育会議で明らかにした。
市教委によると、生徒が亡くなった後の聞き取りに対し、学級担任が「いじめにあいやすい生徒」という印象を入学直後から持っていたと話した。担任は理由を「心も体も強い方ではないから」と説明したという。
しかし、ほかの教職員に注意を呼びかけるなどはしなかった。
同市では全ての小中学校で子どもの人間関係などを調べる心理テストを実施している。6月のテストでは、男子生徒は学校生活への満足度が低く、「教師に心理的な距離を感じている」という結果だった。生徒は友だちも少なかったという。
テスト結果を受け、担任は「何かあれば一緒に解決しよう」など、この生徒に声をかけるように心がけた。
7月の保護者との面談では「どう接すればいいか」と相談したという。
10月9日にも同じ心理テストがあり、学校生活への満足度が低い上に、声かけや周囲への指導などの「支援が必要」という結果が出た。結果は10月28日に学校に届いた。「要支援」は、男子生徒のクラスに2人いた。
しかし、具体的な支援が検討されないまま、11月1日、男子生徒は地下鉄の駅で電車に飛び込み亡くなった。学校は、テスト結果を受けた会議を5日に予定していたという。市教委は、担任や所属する卓球部の顧問が、テスト結果を把握していたかについて「確認できていない」としている。
市教委はこうした内容を10日の総合教育会議で説明。出席した教育委員からは「結果が届いたら、すぐに対応するべきだった」といった声が相次いだ。
梶田知(さとる)・教育委員長は「対策をとっていれば、こんなことにはならなかったのではないか。
危機感が薄い」と指摘。同市では2年前にも別の市立中学2年の男子生徒が自殺している。心理テストも、子どもの異変を早くつかみ、再発を防止する目的で導入された。「必ずいじめのない名古屋市にするという強い決意で、必死に取り組んでほしい」と話した。
男子生徒が亡くなった直後、市教委は、生徒が9月の学校独自の記名調査に学校生活の満足度として「4段階で上から2番目を選んでいた」と公表。心理テストについても「いじめをうかがわせる内容はなかった」として、いじめの兆候は見られなかったと説明していた。市教委は「心理テストの結果を隠す意図はなかった」と釈明している。
一方、5日に公表された全校生徒へのアンケートでは20人が「直接見た」と答えるなど、のべ80人がいじめを見聞きしたと回答した。
市教委に調査を委託された、精神科医や弁護士らでつくる第三者機関「市いじめ対策検討会議」は18日に初会合を開く。客観的な立場から、自殺に至った経緯や市教委の対応に問題がなかったか検証する。
(小若理恵、岡戸佑樹)

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

Post Navigation