平成28年11月4日 朝日新聞

「万引き」誤記録で自殺、第三者委「強権的な指導」

 広島県府中町の町立府中緑ケ丘中学校3年の男子生徒(当時15)が昨年12月、誤った「万引き」の記録に基づく進路指導後に自殺した問題で、原因や再発防止策を調査、検討する第三者委員会が3日、町教育委員会に報告書を提出した。強権的・抑圧的な指導に陥り、学校が共感的な支援をしなかったことなどを問題点に挙げ、生徒指導や情報管理の見直しを求めた。

 報告書は、やっていない「万引き」を理由に私立高への推薦はできないと告げられたことが、生徒の自殺要因の一つになったと指摘。教諭と生徒の信頼関係が不十分で、教員間の不適切な引き継ぎに基づく「万引き」との指摘に生徒が否定できなかった点など複数の要因が重なり、自殺に至ったとした。

 また合格を最優先にする「出口指導」の結果、生徒の意識や適性への配慮を欠いた「心の通わない進路指導に陥った」と指摘。町教委や県教委も的確な情報把握をせず、指導や助言が十分ではなかったとした。

 さらに学校側が、3年生の進路決定直前の昨年11月に推薦基準を変更し、入学後に万引きなどの触法行為があれば機械的に私学推薦を認めないことにした点について、他の中学では行われておらず、平等性を欠く「不利益処分」と批判。そのうえで再発防止策として、組織的な学校運営体制の確立や教員と生徒の信頼関係の確立、教育相談体制の充実などを提言した。

 第三者委は生徒の自殺を受けて町教委が今年3月、弁護士や教育の専門家ら5人で設置。生徒の遺族や他の生徒、教員らに聞き取りをし、生徒へのアンケートを分析するなどしてきた。

 委員長の古賀一博・広島大大学院教授は会見で「教員たちは今回の答申を共有して自分たちの問題ととらえてほしい」と話した。

 男子生徒の遺族は、代理人の弁護士を通じて「息子の気持ちを考えると、今でも胸が痛い。答申の内容を拝見する限り、我々の思いをくんでくれたと思います。これを受けて教育委員会や学校、個々の先生がどう受け止め、どう対処されるのか見守りたい」とのコメントを出した。

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