2022年12月9日朝日新聞

いじめ・自傷見逃し 第三者委「学校の致命的誤り」 神戸・中3自殺

いじめを認定した調査報告書について、記者会見で説明する第三者委員会のメンバー=神戸市中央区の市教育委員会で2022129日午前1146分、山本真也撮影

神戸市垂水区で2020年、市立中学3年の女子生徒(当時14歳)が自殺した問題で、市教育委員会が設置した第三者委員会は9日、「いじめが自死に強く影響した」とする調査報告書を市教育長に提出した。いじめや生徒の自傷行為がエスカレートしていたのに、学校側はその兆候を見逃し、「いじめは解消した」と判断していた。報告書は学校が組織的な対応を怠り、家族との情報共有も不十分だったと指摘。「致命的な誤りで、自死は防げた」と厳しく批判した。

20年9月5日朝、生徒が自宅で死亡しているのを父親が発見。机には「学校疲れた」「死にたいな」とのメモが残されていた。市教委は同年12月、いじめ防止対策推進法に基づき、弁護士や精神科医らによる第三者委を設置。同級生や教諭らに聞き取り調査した。

 

報告書によると、生徒は小学5年の時、触った物を汚物扱いされるなど、同じクラスの7割が関与する集団いじめを受けた。中学に入学後も他の女子生徒から嫌がらせを受けたり、男子生徒5人からばい菌扱いされたりした。

学校はこの5人を1回指導しただけで、組織的・継続的な指導をしなかった。生徒は193月に自傷行為を始めたが、学校は母親に「いじめは解消している」と説明し、いじめの深刻さを伝えていなかった。

生徒へのいじめはその後も続き、他の女子生徒からLINE(ライン)で「殺すぞ」「はやくしねや」とメッセージを送られることもあった。

中学3年の時、加害生徒5人のうち3人と同じクラスになり、精神的な負担が増加。担任に「席を近くしないで」と席替えを再三訴えた。自殺の1カ月前にはSNS(ネット交流サービス)に「死にたいってなんなんだろう」「誰か助けて」と投稿。しかし、死の直前まで友人らのLINEグループから削除されるなどのいじめが続いた。

報告書はいじめがトラウマになり、生徒の自己肯定感が著しく損なわれていたと指摘。

進学への不安も重なって精神的に追い込まれていたが、周囲がそれを理解せず、適切な支援ができなかったと結論づけた。

第三者委のメンバーで、精神科医の山下仰(こう)・武庫川女子大教授は記者会見で

「学校は早々にいじめが解消したと判断し、被害生徒に寄り添った対応ができず、責任は重い」と述べた。【山本真也】

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

Post Navigation