平成28年11月2日 神戸新聞社

いじめ調査/実態を把握できているか

  全国の小中高校などが2015年度に把握したいじめが、過去最高の22万4540件となったことが、文部科学省の調査で分かった。前年度から3万6468件増えた。

 兵庫県内の公立学校で確認されたいじめは6401件で、前年度の約2・7倍に上った。

 文科省は軽微ないじめも報告するよう指導している。件数の増加は、教員が積極的に把握しようとした結果とみるべきだろう。

 ただ、都道府県別の千人当たりの件数は最少と最多で約26倍差がある。4割近い学校が「1件もなかった」と回答した。兵庫でも市町でいじめの認知にばらつきがみられた。

 いじめはどこでも起こりうるが、大人からは見えにくい。早期の対応が、自殺につながるような深刻な事態を防ぐ。そうした認識が教育現場に十分に浸透していない可能性がある。本当に実態を把握できているのだろうか。

 児童生徒が心身に大きな被害を受けるなど、いじめ防止対策推進法で規定された「重大事態」は前年度より136件減ったが、298校で313件あった。いじめの問題に絡んで自殺した児童生徒は9人いた。

 大津市の男子中学生の自殺を受けて13年に施行された同法は、3年が経過し、見直しの時期を迎えている。防止のための基本方針策定や対策組織の設置などを学校に義務づけたが、その後もいじめを苦にした自殺は後を絶たない。

 文科省の有識者会議は、提言を大筋でまとめた。いじめを最優先で取り組むべき業務と位置づけ、いじめなどの解釈が学校や教員によって異なるため、具体例を示すよう求めている。「重大事態」を把握した際、学校に義務づけられている調査の方法や被害者側への説明の手続きを定めた指針を国が作成すべきとした。

 調査では、学校が認知したいじめのうち約9割が「解消した」と報告された。ただ、相手に謝罪したことで「解消」とみなしたケースもあるという。子どもたちの変化をもっと丁寧に見守る必要がある。

 端緒を教員がつかんでも、その後の対応を誤れば、子どもの命が失われかねない。教員が情報共有を徹底し、学校全体で問題意識を持つ姿勢が問われる。一方で専門教員の配置など、多忙な業務に追われる教員の負担軽減策も進めていくべきだ。

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