平成29年3月30日朝日新聞宮崎版

プール女児死亡事故判決 両親の願いに法の壁

 プール小4女児

写真・図版

判決後に記者会見する松岡優子弁護士(左)と西山律博弁護士=延岡市役所

 「国賠法で済まされたら、やっちょれん」。延岡市立東小学校の遠足中に市関連施設のプールで4年生女児がおぼれ、後に死亡した事故を巡る訴訟。29日、宮崎地裁延岡支部の判決後の記者会見で女児の父親は憤った。

裁判で求めてきた引率教諭らの説明や謝罪は最後まで実現しなかった。

 原告は父親の土肥千幸(かずゆき)さん(58)と母親のゆみ子さん(59)。2010年5月、市の第三セクターが運営するヘルストピア延岡の流水プールで、末娘の由佳さん(当時9歳)がおぼれ、意識が戻らないまま13年10月に12歳で死去した。

 両親は「訴訟で学校や教師の責任を明らかにしたい」などとして14年4月に市を提訴。教諭らを採用した県も訴えた。

 原告側代理人の松岡優子弁護士によると、「賠償金額の問題じゃない。当事者の生の声が聞きたい」(千幸さん)として裁判で教諭や校長の証人申請を2度試みたが、裁判所に認められなかった。一昨年10月と昨年10月には裁判所から和解案を提示され、当事者の責任を明示した謝罪文または非公開手続きによる直接謝罪の条件を付けたところ、行政側に拒まれたため和解に応じなかったという。

 国家賠償法は、職務上の過失で公務員個人は不法行為の責任を負わないと定める。千幸さんは「公務員個人の責任を問うのが難しいことは分かるが、我々一般人から見るとギャップが大きい」と指摘。松岡弁護士は「法制度と両親が求めるものがフィットしなかった」と話した。

 判決では、事故を引き起こした教諭や校長の過失のほか、原告側から再三求められた事故状況報告書を提出しないなど、事故後も学校側の対応が不適切だったと認定し、計約5087万円の支払いを命じた。

 判決について、松岡弁護士は「両親が一番気にしていた引率教諭の不手際や事後対応の不誠実さは、ほぼ事実認定されたが、少し疑問も感じる」、千幸さんは「まだ何とも言えないが、遺族の心の中では裁判は終わっていない」。控訴するかは結論が出ていないという。(吉田耕一)

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

Post Navigation