平成30年11月15日付朝日新聞東京版
中1転落死「悪口はいじめ」 青梅市教委
◆自殺の可能性大、主因かは認定困難
東京都青梅市内で約3年前、多摩川にかかる橋から市立中学1年の男子生徒(当時12)が転落死する事故があり、市教育委員会が14日、学校でのいじめの有無などを調査した第三者部会の報告書を公表した。容姿をめぐる周囲の悪口などをいじめだったと認定したが、死亡の主な原因との認定は「困難」と結論づけた。
生徒が死亡したのは2学期開始を2日後に控えた夏休み中の2015年8月25日で、自宅から外出して間もなくだった。遺書はなく、警視庁の捜査でも自殺か事故死かは特定されなかった。
部会は、市教委のいじめ問題対策委員会の調査委員と遺族側が選んだ弁護士ら計6人で構成。昨年6月~今年2月、同級生や教師ら40人から聞き取るなどして調査した。
66ページにわたる報告書では、アトピー性皮膚炎の症状で悩む生徒に、周囲が「ゾンビみたい」などと言ったことや筆箱にハチの死骸を入れられたことなどをいじめと認めた。
生徒も親に報告するなどしており、「心に負荷をかけたことは間違いない」と判断した。「自殺の可能性が高い」と明記したが、いじめが主要な原因となったかは「因果関係を広くとったとしても認定することは困難」とした。
岡田芳典・市教育長はこの日の記者会見で、「遺書がなく、生徒の心理状態を推察するのが難しい中での報告と受け止める」との認識を示した。
また、報告書は学校や市教委の対応のまずさや後手に回った対応を厳しく批判した。生徒が転落死した当日、当時の校長が「いじめはなかった」と発言したが、遺族の指摘や校内アンケートなどで問題が相次いで確認された。学校側は「指導で解決済み」と考えており、市教委もいじめ防止法が定める「重大事態」との認識はなかった。
遺族側の強い要望で第三者部会を立ち上げたのは昨年6月で、調査結果がまとまったのは今年2月だった。市教委が「重大事態」を正式に認定したのは、生徒の死亡から3年過ぎた今年10月だった。
報告書は15日、市教委のホームページなどで公開される。遺族側の強い要望によるもので、個人を特定できる情報を除いてほぼ全文を公開する。市役所でも閲覧できる。
遺族は報告書公表を受け、コメントを発表した。部会がいじめや学校・市教委の対応の問題を認めた点を評価しつつ、死亡といじめの因果関係を認めなかったことには不満を示した。その上で、「報告書の公表で、いじめがなくなることに少しでも役立てればと思う」としている。 (山浦正敬)