平成29年11月23日朝日新聞新潟版
いじめ第三者委、人選難航 候補未定や教員委員も
新潟いじめ1
いじめ事案について話し合う県教委の第三者委員会=8月29日、県庁
新潟いじめ2
 第三者委員会の設置や委員の人選は、各教育委員会や学校に任されている。

 いじめ問題が起きたとき、第三者委が調査に乗り出すのか、メンバーはどうなるのか――。県と県内30市町村の各教育委員会の担当者に聞いてみた。
 第三者委を常設している自治体は県と9市町、常設していないのは21市町村だった。13市町村は委員候補者に打診していなかった。加茂市の担当者は「問題を起こさないことが最優先と考えている。候補者の検討はしていない」と述べた。
 「検討しなければいけないと思っている」。多くの自治体の担当者は口をそろえる。だが、「前例がないので見通しが
立たない」(魚沼市)、「人件費に充てる予算を確保しないといけない」(阿賀野市)。準備が必要だと感じつつも、手が
回っていない自治体があるのが現状だ。
     ◇
 国のガイドラインでは、委員には弁護士や精神科医など外部有識者を選ぶとされているが、地方には難題だ。
胎内市の担当者は「他の自治体とかぶらないように選びたいが、県内に専門家は限られている」と話す。湯沢町は、町議やPTA会長を委員候補に想定している。
 国が推奨する教育分野の専門家の確保はさらに難しい。県内で第三者委を設けている10自治体のうち、少なくとも4市が地元の元教員や現役教員を委員としている。
 被害者側からみれば、教員が問題に関係するケースもあり、同じ教壇に立つ側の教員が委員に入ることに抵抗を感じるという意見もある。元市立中学校長が第三者委の委員長を務める新発田市の担当者は「生徒指導の実績を見て選んだ。委員長になったのは第三者委の互選で、市教委は関わっていない」と話す。
 地元に大学のない自治体からは「遠方の教授には頼みづらく、コストもかかる」という声が上がる。
     ◇
 県や新潟市と異なり、常設の第三者委を持たない自治体は、いじめ重大事態が起きてから初めて設置の検討に入る。
ただし、調査対象となる子どもたちの環境は短期間で変わるため、迅速な態勢づくりが重要だ。
 昨年12月、東日本大震災後に福島県から避難している下越地方の中学校の女子生徒が、同級生から「菌」と呼ばれるいじめを受け、不登校になった。委員の人選に時間がかかり、第三者委の初会合が開かれたのは今年4月。
女子生徒たちがすでに進級した後だった。
 この問題の第三者委に名を連ねている委員は「子どもの記憶は大人に比べて薄れやすい。調査の質も学校ごとにバラバラ。学校の初期調査がしっかりしていないと、事実が明らかにできないこともありうる」。
 いじめ問題に詳しいNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」(川崎市)の小森美登里理事も、「問題が起きた直後であれば子どもは正直だが、時間がたつほど関わりたくなくなる」と、初動の重要性を強調する。

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