平成28年3月5日朝日新聞熊本版

和水の訴訟和解 遺族ら早期の対応の大切さ訴え

 1豊美

記者会見で涙をぬぐう父親=熊本市中央区京町1丁目

和水町でいじめを受けた町立中学3年生の男子生徒(当時14)が自殺した問題で、両親が町に約1100万円の損害賠償を求めた訴訟は4日、和解した。4年ごしの訴え。和解後の記者会見で、父親らは学校の早期の対応の問題を改めて指摘、遺族の負担の重さも語った。

記者会見で父親は「全てが解明できたとは言えない」と話した。いじめを掘り下げたい気持ちもあったが、「息子と同じ年代の子どもを法廷に引きずり出すのか」と悩み、全体としていじめが認められたことで和解に応じたという。

第三者委員会には強制力がなく、聞き取りに応じなかった生徒もいたという。「学校が初期にやっていれば学校の権限でできた」と悔しさをにじませ、「何年かかってもいいので、いつの日か自らの意思でお参りに来て、私たちと話をしてほしい」と訴えた。

また、父親は第三者委員会から家庭の調査を受け、「家のことが原因になったのでは」と自責の念に駆られたという。代理人の山西信裕弁護士は、同委員会の調査に遺族が積極的に協力するのに対し、学校関係者や生徒には消極的な人もいることで「報告がアンバランスになる」と指摘。「それでいじめが直接の原因でないとされることが法律家の目からは疑問」とした。

学校は発覚後まもなく、全校生徒に無記名アンケートや聞き取り調査を実施。亡くなった生徒が「石を投げられた」「ズボンを脱がされた」などの回答があったが、当時の教育長や校長は「いじめはなかった」などと発言。町教委もそれ以上は調査せず、9カ月後、町が第三者委員会の設置を決めた。

代理人の羽田野節夫弁護士は「学校の調査にはおのずと限界があり、早期の対応の仕方を考える必要がある」。5人のうち3人を推薦した第三者委員会については「信頼が置け、よかった」と話した。

一方の学校側。「これまでの不適切な対応について重ねておわびし、二度とこのような悲しい出来事が起こることのないよう努める」。福原秀治・和水町長は和解後、父親に深々と頭を下げたという。

(石川春菜)

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