平成29年7月6日毎日新聞
山口・高2自殺 「知らぬ間に調査委」遺族、公平性に疑念

山口県周南市で昨年7月26日、県立高2年の男子生徒(当時17歳)が自ら命を絶った。生徒は「助っ人」として参加した野球部の練習のつらさを訴えていたほか、スマートフォンには元々の部の生徒からのいじめとみられるメッセージが残っていた。自殺の背景に学校の対応不足を疑う遺族は、県教委が遺族と詳しい協議をしないまま調査を進めたことにも不信感を抱いており、命日を前に「公正に調査してほしい」と訴えた。【樋口岳大、土田暁彦】
生徒は昨年7月26日午前1時10分ごろ、同市のJR駅構内で列車にはねられて死亡した。スマートフォンに遺書のような書き込みがあり自殺とみられる。
遺族によると、生徒は元々テニス部に所属していた。野球経験はなかったが、部員が少ない野球部顧問の男性教諭に「助っ人」を頼まれ、死の8日前から練習に参加し始めた。だが生徒は、初日から家族に「きつい。やめたい」とこぼし、顧問から命じられていた丸刈りも嫌がっていた。
死後、遺族は、生徒がSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に手の指の皮がむけた写真とともに「部活頑張ったよ……野球をニートがやると死ぬんだよ」などと書き込んでいたことを知った。顧問からは「1日200~300回バットを振っていた」と聞かされたが、顧問は「嫌がっているとは思わなかった」と釈明したという。
一方、テニス部の練習に出られなくなった生徒は、部員からSNSで「部室にあるお前の荷物全部池にすてる」などのメッセージを受け取っていた。
こうした経緯を知った遺族は、部活動での指導やいじめが自殺の原因ではないかと疑い、学校側に真相解明を要望。
昨年8月、県教委に常設しているいじめ問題調査委員会が調査部会を設置したが、遺族は「事前に知らされておらず、(調査部会の設置を報じた)テレビのニュースで初めて知った」という。校長経験者や弁護士ら調査部会のメンバーも遺族と協議することなく決められており、遺族は「公平性や中立性に疑問がある」と訴えている。
県教委学校安全・体育課は取材に「(メンバーの選定について)遺族と協議はしていないが、どういった職能団体から入ってもらうかについて説明した」と話した。
国「人選、要望に配慮を」「息子がなぜ自死の道を選ばなくてはならなかったのか。原因が分かるまでは一歩も引けない」。生徒の母親(40)は6月、山口県教委が設置したいじめ問題調査委員会に宛てた手紙にこう記した。
いじめ防止対策推進法に基づく国の基本方針は、調査組織の構成や方法などについて「できる限り、遺族と合意して
おくことが必要」と規定している。県教委は自分たちが事務局を務める調査委に調査を依頼した上、実際に調査を担う部会のメンバーも遺族と協議することなく決められており、遺族は「一方的だ」と反発する。
いじめ自殺を巡る調査委のメンバー選定で遺族が不満を持つケースは少なくない。2013年に奈良県橿原市の中1女子生徒が自殺した事案では、市教委が設置した第三者委の委員に市の元顧問弁護士が就いていたことが分かり、中立性を問題視した遺族の訴えで委員が選び直された。
こうした実態を受け文部科学省は今年3月、いじめ重大事態調査のガイドラインを作成。「被害生徒や保護者の「『何があったのか知りたい』という切実な思いを理解し、対応に当たること」と明記し、メンバー選定でも「被害生徒・保護者からの要望」に配慮するよう改めて求めた。
今回の山口県教委の対応について、いじめ調査に詳しい渡部吉泰弁護士(兵庫県弁護士会)は「法やガイドラインの趣旨に反している。被害者の権利がどのように侵害されたのかを明らかにするのが調査委の職責であり、遺族の意向を踏まえるのは大原則だ」と指摘した。

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