平成30年10月13日東京新聞

川口の中学生3度自殺未遂 母「早く動いてくれれば」

埼玉川口市いじめ

「いじめはまだ解決していない」と訴える男子生徒の母親=埼玉県川口市で

埼玉県川口市の市立中学校三年の男子生徒(14)が、入学当初からのいじめを苦に三度の自殺未遂を図っていた問題で、生徒の母親(43)が十二日、本紙の取材に応じた。

生徒は担任教師に助けを求めたが、対応されず、第三者調査委員会の設置も遅かった。母親は「学校や市教育委員会がもっと早く動いていれば、こんなことにならなかった」と憤った。

母親によると、男子生徒は入学間もない二〇一六年五月ごろから、所属するサッカー部の先輩や同級生ら十数人から仲間外れやからかい、暴言を受けるようになった。九月には、いじめの内容や加害生徒の名前を記し「助けてください」と訴える手紙を担任教諭に複数回、手渡した。だが、何の対応もなく、自宅で首つり自殺を図った。

その後も学校の動きは鈍く、男子生徒は十月、二度目の自殺を図った。二度目の自殺未遂を受け、学校はようやく無記名のいじめ調査をしたが、母親は教頭から電話で「いじめは認められなかった」と伝えられた。

一七年四月、男子生徒は自宅近くのマンションから飛び降り、頭や太ももなどの骨を折る大けがをし、車いす生活になった。市教委が、いじめ調査の第三者委員会を設置したのはその七カ月後。母親には知らされなかった。いじめ防止対策推進法では、自殺未遂など命にかかわる事案は「重大事態」とし、教育委員会は速やかに第三者委員会を設置しなければならない。

川口市教委の岩田直代指導課長は「学校に対応を任せたのと、男子生徒から事情を聴ける状態ではないと保護者から聞いていたので、設置が遅れた。設置の説明も担当がしたと聞いている」と説明している。

今年六月、学校で加害生徒から謝罪を受ける席が設けられ、いじめにかかわった生徒の半数ほどは謝罪し、関係は改善した。一方、その席で「自殺を他人のせいにするな」と非難する保護者もいたという。母親は「息子の望みは、いじめた生徒から謝罪をしてほしいだけなのに、かなえられない」と悔しさをにじませた。 (浅野有紀、柏崎智子)

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