平成29年8月31日神戸新聞
川西・高2いじめ自殺5年 両親、再発防止へ支援に力

川西高2いじめ
いじめを受けて自殺した息子の写真を見ながら5年間を振り返る両親=神戸市内

 2012年、兵庫県川西市の兵庫県立高校2年の男子生徒=当時(17)=が2学期の始業式前日、いじめを苦に自殺してから、来月2日で5年となる。いじめと自殺の関連が裁判などで認められ、両親にとっては息子の「名誉回復」に向けた取り組みに区切りがついて迎える初の命日となる。「あの子の死を風化させないことが、再発防止につながる」。
両親は神戸新聞社の取材に、経験を語り、いじめに苦しむ当事者やその家族をサポートする活動に力を入れる決意を語った。(井上 駿)
 男子生徒は、同級生3人から「ムシ」と呼ばれたり「汚い」と言われたりするなど言葉の暴力を受けていた。学校が設置した第三者委員会はいじめと自殺を「関連づけるのは困難」と結論づけたが、両親が県や同級生などを相手に起こした損害賠償請求訴訟では、関連が認められた。学校は今年5月、判決の内容を盛り込んだ追加報告書を県教育委員会に提出した。
 だが、男子生徒の死以降も全国でいじめを受けた児童生徒の自殺が相次ぎ、この1年間だけでも、県内では四つの第三者委が発足している。一方、事実の隠蔽や不十分な実態調査など、学校や教育委員会、調査する第三者委のずさんな対応が浮き彫りになるケースも少なくない。父親(65)は「子どもを失った親が願うのは『何があったのかを知りたい』という一心。学校や教委は、その願いに応えていない」と批判する。
 息子の死を風化させないために、「全国学校事故・事件を語る会」の活動にこれからも力を注ぐという両親。今月26日には、神戸市内で開かれた同会の大集会に参加した。いじめを受け、今も後遺症に苦しむ若者に、母親(59)は「私は優しい息子を亡くしてしまった。私も頑張るから、一緒に頑張ろうね」と、亡き息子の姿を重ね合わせながら語り掛けた。
 5年の歳月で2人の心の傷が癒えたわけではない。息子も写る家族写真は自宅のあちこちに飾られ、部屋も当時のまま。家族思いで優しかった息子との思い出を支えに、なんとか生きてきた。「加害生徒を許すことはできない。息子を守れなかった自分たちを責める気持ちも消えない」 もし、天国の息子に会えたなら。相談もなく先に逝った親不孝を叱った後、ぎゅっと抱きしめようと、母親は決めている。
いつか訪れるその日まで、同じ苦しみを味わう人がもう二度と出ないよう、息子の人生と命の重さを積極的に伝えていくつもりだという。
 【無料の子ども相談電話など】
 ▽チャイルドライン(0120・997777)=18歳まで対象。午後4~9時。一部地域は夏休み明け前後に時間拡大、
日・祝日は休みの地域も
 ▽24時間子供SOSダイヤル(0120・078310)=24時間受け付け
 ▽子どもの人権110番(0120・007110)=月-金曜日〈祝日を除く〉午前8時半~午後5時15分

【川西市の高2男子いじめ自殺】2012年9月2日、兵庫県立高校2年の男子生徒=当時(17)=が川西市内の自宅で
自殺した。その後、同級生3人から言葉によるいじめを受けていたことが判明。県警は13年5月、同級生3人を侮辱容疑
で書類送検。神戸家裁は3人を保護観察処分とした。同年12月、両親が同級生や県などに損害賠償を求めて提訴。
神戸地裁判決はいじめと自殺の関連を認め、同級生と県に計210万円の支払いを命じた。学校は今年5月、自殺と
いじめの関連を認める追加報告書を県教育委員会に提出した。

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