平成30年2月5日朝日新聞大阪本社版夕刊

広島の中3女生徒死亡、「いじめあった」 第三者審議会

 広島佐伯区教育委員会謝罪

死亡した女子中学生と遺族に対し、頭を下げる広島市教育委員会の山崎哲男課長(手前)=5日午前10時5分、広島市役所、

上田幸一撮影

広島佐伯区調査委

死亡した女子中学生に対するいじめについて、記者の質問に答える広島市いじめ防止対策推進審議会の林孝会長(左)=

5日午前9時22分、広島市役所、上田幸一撮影

 

広島市佐伯区の市立中学校で昨年7月、3年生の女子生徒が校舎から転落死した問題で、市教育委員会が設置した第三者組織「市いじめ防止対策推進審議会」は5日、「入学当時から断続的にいじめがあった」などとする調査結果を公表した。今後、学校の対応

に問題がなかったかどうかや死亡との因果関係などを調べる。

市教委などによると、女子生徒は昨年7月24日、学校の敷地内で倒れているのが見つかった。自宅にはいじめを受けていたことをうかがわせる内容のメモが残っており、遺族が「いじめを苦に命を絶ったと考えている」と市教委に伝えていた。

審議会のこの日の会見によると、女子生徒は中学入学当初から数人の生徒に頻繁に容姿についてからかわれたり、悪口・暴言を

言われたりしていたという。2年になると、より多くの生徒がこれに加わり、消しゴム片を投げられるなどの嫌がらせもあったという。

3年生の時には「死ね」「消えろ」などの脅し文句を頻繁に言われていたほか、たたかれることもあったことが確認されたという。

女子生徒が通っていた中学校の校長は、いじめを早期に把握し、適切に対応できなかったとして、「強く責任を感じている。学校の対応に課題があったことは明らかだと考えている」との談話を出した。

一方、女子生徒の両親は代理人の弁護士を通じ、「娘がいじめを受けていたことを思うと、大変つらい気持ちになる。何度も学校に伝えていたのに、どうして止められなかったのだろうか、という思いがある」などとコメントした。

市教委は昨年9月、今回の事案について、いじめ防止対策推進法の「重大事態」に該当すると判断し、①いじめの事実の全容

②学校などの対応③死亡にいたる過程や心理の検証④今後の対応と再発防止――の4点について審議会に諮問。審議会は、生徒と教職員にアンケートを実施し、女子生徒が1年生のころから悪口を言われたり、掃除を邪魔されたりしていたなどの記述を把握、個別の聞き取り調査を進めていた。

審議会の会長を務める林孝・広島大大学院教育学研究科教授は「いじめは人として許されない行為。今後、学校の対応がふさわし

かったかどうかを調べていく」と述べた。

「いじめを防ぐことができなかったことを申し訳なく思います」。審議会の発表後、続けて会見をした広島市教育委員会の山崎哲男生徒指導課長は深々と頭を下げ、糸山隆市教育長のコメントを代読した。

審議会はこの日、いじめに対する学校の対応についてはまだ「調査中」と発表したが、山崎課長は「生徒の声や保護者からの訴えに対して組織的に対応できていなかった」と説明。「審議会から情報を提供してもらいながら、いち早く改善したい」と述べた。

さらに山崎課長は「明るく生きたかったであろう機会を奪う形になったことに言葉はなく、申し訳なく思っている」と声を震わせた。その上で、「生徒の悩みや苦しみについての情報がどこかで止まっていたのだろう。そこに大きな課題があった」と話した。(松崎敏朗、久保田侑暉)

 

 

「いじめ、学校に伝えたのに止まらず」死亡の生徒の両親

 

広島市佐伯区の市立中学校で昨年7月に3年生の女子生徒が校舎から転落死した問題で、「いじめがあった」とする調査結果を

市教育委員会が設置した第三者組織が発表したことを受け、女子生徒の両親が弁護士を通じてコメントを出した。主な内容は以下の通り。

いじめの事実につきましては、あらかじめ審議会の方々からご説明を頂きました。そこでは、私たちが把握していなかったいじめの事実も多数報告されていました。

娘は、私たちにお菓子を作ってくれたり、マフラーを編んでくれたりする、家族思いの明るい子でした。また、いつも外に出て、近所の人にもよくあいさつし、周囲の人たちからも愛されるいい子でした。それだけに、娘が学校でいじめを受けていたことを思うと、大変つらい気持ちになりますし、娘がいじめを受けていることについては私たちから何度も学校に伝えていたのにどうして止められなかったのだろうか、という思いもあります。

学校に対しては、今回のいじめの事実を正面から受け止めていただきたいと願うばかりです。

学校の対応の問題点につきましては、現在審議会の方で調査中と伺っていますので、その調査を待ちたいと思います。真実が明らかになり、二度とこのようなことが起きないことを願います。

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