平成29年11月2日中国新聞
広島大付属三原中 運動会2日後に生徒死亡
「組体操が原因」提訴
  遺族、安全措置問う
広大付属三原
 三原市館町の広島大付属三原中3年の男子生徒=当時(14)=が2016年6月に死亡したのは運動会の組み体操が原因として、同市の遺族が1日、学校を運営する広島大(東広島市)に約9千万円の損害賠償を求め広島地裁尾道支部に提訴した。生徒は運動会の2日後に死亡。学校が十分な安全対策を講じなかったと訴えている。(中島大)
 提訴したのは、父親の会社社長男性と家族。訴状によると、運動会は16年6月18日に同校グラウンドであり、生徒は組み体操などに参加した。20日未明に自宅
で体調が悪化。病院に運ばれ、同午前5時50分ごろ脳内出血で死亡した。
 遺族は、組み体操「移動ピラミッド」 (3段騎馬)で生徒が頭の痛みを訴えており、後頭部に衝撃が加わったと主張。演技後、ピラミッドが崩落したとし、「学校が演技内容と危
険性を十分認識しておらず、事故を未然に防ぐ措置を取っていなかった」と訴える。
 同校によると、ピラミッドは上段(1人)中段(2人)下段(6人)の3段。
下段が歩いて退場する。男子生徒は中段で四つんばいになっていた。
 同校は、生徒の死亡後、他の生徒から聞き取りを実施。中国新聞の取材に「ピラミッドは崩れなかった。事故とは考えていない」と説明した。17年6月の運動
会は移動ピラミッドを中止した。「危険性があった。遺族の心情にも配慮した」としている。

専門家は危険性指摘
国も昨年対策通知
移動ピラミッドのイメージ
「移動ピラミッド」のイメージ
 広島大付属三原中の運動会で実施された組み体操「移動ピラミッド」は、「動きがあるため危険性が高い」と指摘する専門家もいる。全国的に多発する組み体操事故を受け、国は昨年、各学校に安全対策の徹底を通知していた。
 学校事故の問題に詳しい名古屋大大学院の内田良准教授(教育社会学)は「生徒の死亡と組み体操の因果関係は分からない」とした上で、「国立の学校として玄夷して見直しをすべきだった」と話す。
 同校であった移動ピラミッドは高さは3段と極端に高くはないが、内田准教授は「土台が動くので崩れる可能性がより高くなる」と指摘。「段数が少ないから安全だという誤解が学校にあったのではないか」と推測する。
 スポーツ庁が2016年3月に出した通知は、タワーやピラミッドの組み体操は「確実に安全な状態で実施できるかどうかを確認し、できないと判断される場合は実施を見合わせる」とした。同庁によると、1969年度以降、組み体操で死亡した子どもは全国で9人、障害が残った子どもは92人いる。
 学校に男子生徒の死亡についての再調査を求めるのは、教育評論家の尾木直樹さん。「責任追及という意味ではなく、学校の行事で死亡の疑いがある場合は、遺族の立場に立って調査に入るべきだ」と話す。
 尾木さんは日本の学校で・の死亡事故が、他の先進国に比べて多い現状も指摘。
 「現場の学校や保護者も、子どもの安心安全を第一に考えてほしい」と訴えている。(中島大)

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