2021年3月23日付NHK

橿原 中学生自殺裁判 いじめ認定せず 遺族の訴え退ける

 8年前、橿原市で自殺した中学1年の女子生徒の遺族が、いじめが原因だったとして当時の同級生らを訴えていた裁判で、奈良地方裁判所はいじめ行為自体を認定せず、遺族の訴えを退けました。
平成25年3月、橿原市で中学1年の女子生徒が飛び降り自殺したことをめぐって、母親や姉が、同級生から仲間外れにされたり、「LINE」に悪口を書き込まれたりするなどいじめを受けたことが原因だったと主張して、当時の同級生らと学校を運営する橿原市に対し、あわせて9700万円余りの賠償を求めていました。
これに対し、同級生らや市は、「いじめはなかった」などと裁判で主張していました。
23日の判決で、奈良地方裁判所の島岡大雄 裁判長は、「クラスメートの証言や調査委員会の報告書などからも仲間外しや無視があったとは認められない」として、いじめ行為自体を認定しませんでした。
また、市の責任について、「自殺の要因は複数存在しており、自殺直前のサインを把握することができたとは言い切れない」などと判断し、遺族の訴えを退けました。

【弁護士“不当な判決”】
原告側の代理人を務めた佐藤真理弁護士は23日の判決について、「予想外の極めて不当な判決がなされ、残念だ。控訴審でひっくり返すことが必要だ」と述べました。

【遺族“ただただ残念”】
判決のあと、自殺した女子生徒の母親が会見を開きました。
この中で母親は23日の判決について、「裁判では、教師や学校組織が娘のいじめ被害を把握していたにもかかわらず、被害に対して無為無策だったことが自死につながったという不作為不法行為を問うてきたが、判決はこれらを棄却し、安全配慮義務違反を認めず、ただただ残念だ」と評価しました。
そのうえで、「児童生徒は長時間学校で集団生活をしていて、学校は自死防止に真剣に取り組まなければならない。今回の裁判所はこのような深刻な問題に警鐘を鳴らしてくれず、これでは子どもの命がどんどん失われていく。この判決を受け止めることはできないので、今後の対応を弁護団と協議していきたい」と話していました。

【橿原市のコメント】
判決を受け、橿原市の亀田忠彦市長は、「当時、中学1年生の生徒が亡くなったことについて、市として重く受け止めている。今後、このようなことが起こらないよう、橿原市として努めていきたい」とコメントを発表しました。
また、橿原市教育委員会の深田展巧教育長は、「将来ある若い命が失われたことに対し、大変残念に思う。二度とこのようなことが起こらないように、子どもたち一人ひとりとしっかりと向き合い、心に寄り添った教育となるように努めたい」とコメントを発表しました。

【調査委員会と裁判の経緯】
平成25年3月28日、橿原市で中学1年生の女子生徒が自宅近くのマンションから飛び降りて自殺しました。
女子生徒の両親は原因究明に向けた第3者委員会を求めましたが、委員の選定をめぐって紛糾します。
市の教育委員会は、委員の1人に市の元顧問弁護士を選定しましたが、女子生徒の両親は、中立・公平ではないと主張。
結局、委員は選び直しとなりました。
女子生徒の自殺から2年たち、ようやく調査報告書がまとまります。
報告書では、女子生徒が同級生から仲間外れにされたり通信アプリ「LINE」で悪口を書き込まれたりするなどのいじめがあったとしました。
そのうえで、親に対する不満や思春期で情緒不安定な状態にあったことなど複数の要因が重なり衝動的に自殺にいたったと結論づけました。
この報告書を受け、遺族は、平成25年9月、女子生徒が自殺したのは同級生らのいじめが原因だったとして、同級生4人と橿原市に対し賠償を求める訴えを起こしました。

【橿原市のいじめ対策は】
女子生徒の自殺をきっかけに、橿原市では「いじめ防止基本方針」を策定し、対策を進めてきました。この中では、小中学校に教職員でつくる「いじめ問題対策委員会」を設置し、カウンセラーといった外部の専門家の協力なども得ながら、いじめを防ぐための授業計画を作成したり、ふだんから生徒や児童の状況について情報を収集し、いじめの疑いがある場合、速やかに対応をしたりすることなどが定められています。
また、いじめがあったときの相談先を日常的に教室に掲示するなどして子どもに知らせることも対策としてあげています。
橿原市教育委員会は「対策を実行することで子どもをいじめから守り、みんなが安心して学校にこられる環境作りを進めていきたい」と話しています。

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