登別・中1転落死、いじめ有無は 第三者委調査

令和2年7月23日付朝日新聞北海道版

北海道登別市中1年男子生徒転落死

初会合で審議する第三者委員会。左が竹内亮平会長=7月22日、北海道登別市

北海道登別市で6月22日、市立中学校の1年男子生徒(13)が転落死した問題の本格的な調査が始まった。22日、登別市教育委員会が設置した第三者委員会が初会合を開いた。

生徒が死亡した原因は「いじめ」なのか、学校の指導力に問題はなかったのか。母親(39)は「真相を明らかにしてほしい」と訴えている。

男子生徒は6月22日午前8時すぎ、自宅の集合住宅から転落死した。道警は自殺の可能性もあるとみて調べている。母親が「長男はいじめで自殺した」と学校側に訴えたことなどから、市教委は第三者委を設置した。

第三者委の会長は竹内亮平氏(精神保健福祉士)、副会長は水上志子氏(臨床心理士)。増川拓氏(弁護士)、阿知良洋平氏(室蘭工業大講師)、皆川夏樹氏(登別市PTA連合会理事)の計5人の委員で構成されている。

初会合は午後6時から始まった。市教委は委員に対し、いじめの有無、学校や市教委の対応、再発防止策について検討を求めた。

校長によると、男子生徒の性格は「だれとでも分け隔てなくつきあえる子。休み時間には自然と友だちが集まる明るい人柄だった」という。しかし、部活の仲間との関係で悩んでいた。

亡くなる4日前の18日、腹痛を起こして保健室に行き、養護教諭に「部活で疲れている」「人間関係です」と話したが、養護教諭は担任や校長には伝えなかった。校長は「生徒のサインを見逃した」と謝罪している。

市教委などによると、通夜前日の23日、校長の立ち会いのもと、母親が部活の生徒たちと会い、「なぜいじめたのか」などと問い詰めた。生徒たちは「からかったけど、いじめていない」と答えたという。

市教委は、全校生徒292人を対象にアンケートを実施。同じ部活の生徒から体形の特徴や運動能力についてからかわれていたことを確認した。

母親は長男が悩んでいることに気づいていなかった。母親によると、死後、長男のスマホをみて、部活のグループLINEで筋トレをしている動画を送るように指示され、体形について書かれていたことを見つけた、という。さらに、オンラインゲームの対戦相手に「相談できる相手もいないし、つらい」と悩みを打ち明けていた。

母親は22日、第三者委について「いじめの真相を明らかにしてほしい」と話した。「からかっただけというが、受け取る側の気持ちはまた別。いじめがあったことを認め、謝罪すべきだ。

真実を明らかにして、二度と繰り返さないようにしてほしい」と訴えている。(西川祥一、芳垣文子)

福井雅英・滋賀県立大教授(元北海道教育大教授、臨床教育学)の話 保健室を訪れて悩みの一端を吐露した事実は重要だ。養護教諭が専門力量を発揮できていたか、その学校における保健室の位置づけや教職員集団の認識も問われるだろう。悩みの内実を深くつかむ教師のセンスと共有する集団力量が求められる。男子生徒の苦悩は何だったかを考え合うこと、

なぜそれが把握できなかったのか、その深い悩みから救い出すにはどうすればよかったか、緊急の介入と日常の実践の見直しなどが必要だろう。「いじめ」かどうかの事実認定に傾斜して問題を限定するのは危険だ。

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