顧問暴言で「絶望感」 バレー部員自殺で第三者委

令和2年7月23日付朝日新聞岩手版

バレー部員自殺で第三者委

佐藤博教育長(右)に調査報告書を手渡す第三者委の佐々木良博委員長=2020年7月22日、盛岡市

バレーボール部員だった高校3年の男子生徒(当時17)が自ら命を絶ってから2年。22日に公表された第三者委員会の調査報告書は、遺族が問題視していた顧問の暴言が、男子生徒が死にたいと思うようになった一因になったと認めた。学校や県教委の対応にも不備があったとしている。

全国選抜チームの合宿に参加した経験もあった新谷翼さん。2018年7月3日、自室で亡くなっているのを家族が見つけた。

報告書は18年の高校総体でチームが負けた際、顧問が責任を翼さんなどに押しつける発言をするなど、顧問の各発言は社会的相当性を欠き、教員としての裁量を逸脱していたと指摘した。その上で、高校総体県予選の敗北で自責の念に駆られ、自身の苦しみが受け入れられなかったことで絶望感や孤立感を深め自死以外を考えることができない状態になったと結論づけた。

高校や県教委にも「適切な対応をとるべきだった」と指摘。顧問が過去に在籍していた高校での言動が裁判で争われていたにもかかわらず、「県教委は顧問の指導の内実を軽視し再発防止に生かそうとする姿勢に欠けていた」と指摘。指導や対応を怠ったことが本件事案につながった可能性は否定できないと強調した。

佐藤博教育長は会見で「学校や県教委の対応、不適切、不十分さについて指摘があった。すべてを厳粛に受け止め、二度とこのようなことが起きてはいけないという思いを強くした」と述べた。近く県立学校長を集め事案の内容や再発防止について周知する考えを示した。(御船紗子、上地一姫)

「翼の名誉は若干回復した。でも、これが区切りだとは思わない」。調査報告書を受け取った翼さんの父、聡さん(53)は複雑な胸の内を語った。

翼さんの遺書に、バレーボールで「ミスをしたら一番怒られ、必要ないと、使えないと言われた」などと記されていたことから、聡さんら遺族側は、顧問の暴言が翼さんを追い込んだと主張。

第三者の立場で調査するよう、県教委に求めていた。

遺族側の弁護士は「暴言や暴行があったという当時の事実が明らかになったことは評価する」とした。一方で、顧問が今も同じ高校で教師を続けていることについて、「生徒への聞き取りなど、調査が公平であったか強い疑問がある。何より県教委がパワハラを容認することにつながるのではないか」と指摘した。

聡さんは2018年11月、顧問が翼さんの顔面などにボールを投げつけたとして暴行罪で刑事告訴したが、盛岡地検は今年4月、男性顧問を不起訴処分としている。

顧問を巡っては、別の高校でバレー部顧問を務めていた際、元部員が体罰で精神的苦痛を受けたとして提訴し、県側に40万円の支払いを命じた高裁判決が確定している。聡さんは「あの事件を学校や県教委がしっかりと受け止め、顧問に指導していれば翼は死ぬことはなかったかもしれない。同じような事案が起きないように、県教委には対策を改善してほしい」

と訴えた。(中山直樹)

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