2021年3月28日付朝日新聞

顧問「同性のもめ事、面倒くさい」 いじめの認識不十分

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尼崎市立尼崎高校でのいじめ対応問題について調査報告があった市総合教育会議=22日、尼崎市東七松町1丁目、中塚久美子撮影

兵庫県尼崎市立尼崎高校の水泳部で2017年と19年、いじめを受けた生徒2人が不登校となり、ともに転校した。調査した第三者委員会の委員らは、いじめに対する学校側の認識について「レベルが低い」と断じた。市教育委員会は、部活動顧問になる前にいじめ対応研修を受講させるなどの再発防止策を打ち出した。

有識者らで構成する第三者委員会「尼崎市いじめ問題対策審議会」が2件を調査し、今月17日に調査結果を発表した。

第三者委によると、同校水泳部では17年と19年、いずれも女子生徒が他の部員から無視されるなどのいじめを受けた。顧問は被害生徒の相談内容を否定したり、話し合いで解決しようとしたりしたという。

心療内科を受診していた17年の被害生徒は、話し合い後に全く登校できなくなった。他の部員から激しい叱責(しっせき)を受けた19年の被害生徒は話し合いの翌日、過呼吸を起こし、同じく不登校となった。2人とも転校したという。

生徒宅を訪れた顧問が「今は我慢のとき」

いじめによって心身に重大な被害が生じた疑いがある場合、いじめ防止対策推進法の「重大事態」にあたり、学校側は調査する必要がある。しかし、顧問は学校の管理職に迅速に報告せず、17年のいじめでは、市教委と学校が2年以上放置した。また生徒側が同校に提出する転学願を、当時の教頭らが無断作成していたことも判明した。

19年のいじめでは、生徒宅を訪れた顧問が「時間が解決するので今は我慢のときです」「同性同士のもめ事は面倒くさい」などと発言したという。

第三者委員会の委員らは、いじめへの学校側の認識を「端的にいうとレベルが低い」と強調。同校では体育科が独立組織のようになり、体育科のみで問題解決しようとする風潮が蔓延(まんえん)していることも指摘した。また市教委の問題点としては、転校で解決したという不十分な認識を挙げた。

調査を受け、市教委は22日の市総合教育会議で、市立高校における再発防止策を提示した。いじめ対応研修の受講を部活動の顧問になる条件としたほか、市立尼崎高校体育科の教官室のガラス張り化、部活ごとにある教官室廃止、市教委への転学・退学者の報告義務化などを盛り込んだ。

市立尼崎高校では19年、男子バレーボール部や硬式野球部での体罰も明るみに出ており、いじめ対応問題とともに、体罰根絶の取り組みも報告された。

稲村和美市長は会議後、「大変遺憾で重く受けとめている。正直、予想以上にうみがたまっていたと再認識した」としたうえで、「重大事態になる前にサポートにつながる学校であるよう、しっかり再生させたい」と語った。(中塚久美子)

尼崎市立高校における再発防止策

・いじめ・体罰の発生を知ったら、どんな内容でも管理職への報告を義務付け

・部活動顧問の着任前にいじめ対応研修を受講

・体育科教官室をガラス張り

・部活ごとにある教官室廃止

・不登校の状況を毎月調査

・転学者や退学者の市教委への報告義務化

※市教委の発表による

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