高校推薦基準把握せず
広島県14市町教委各校長に委ねる
府中町中3自殺

 

広島県内の23市町のうち14市町の各教委が、所管する中学校の高校受験の推薦基準を把握していなかったことが分かった。校長の裁量に委ねているケースが多く、学校によって異なるのが実情だ。府中町立府中緑ケ丘中3年の男子生徒=当時(15)=が昨年12月に自殺した問題では、学校が2年前の誤った万引記録に基づき、推薦できないと進路指導していた。この問題を受け、14市町のうち8市町教委が既に学校から基準を聞き取ったり、ふフ後確認したりする予定でいる=30面関連。
(府中町進路指導問題取材班)
推薦基準について、府中緑ヶ丘中では従来、3年時の非行歴を判断材料の一つとしていた。しかし町教委や保護者に伝えないまま、昨年11月に1、2年時の非行歴も考慮することに変更した。命を絶った生徒の誤った万引歴は1年時のものだった。
中国新聞の取材に「各校の推薦基準を把握していなかった」と答えたのは府中町のほか、広島、呉、三原、尾道、福山、三次、庄原、廿日市、安芸高田、江田島
の10市教委と、安芸太田、北広島、神石高原の3町教委。学校の規模や状況が異なるため、「推薦するかどうかは、各校が判断するのが適当だから」とする意見
が多い。
府中町の問題発覚後、所管する中学校の推薦基準を確認したのは同町教委のほか、呉、三原、庄原、安芸高田の4市教委。呉市教委は「大半の学校が非行歴を
基準として扱い、内規に明文化している」と明かした上で、実際の運用は非行歴を単純に当てはめず、現在の子どもの状況を見て判断することにしているため問
題はないとする。
尾道、廿日市、江田島の3市教委は今後、各校への聞き取りなどを通じ、基準を把握する考え。今のところ、基準や運用面の改善を求める市町教委はない。
一方、広島市教委は「推薦基準は、1年生時から生徒や保護者に伝えるよう校長会などで指示してきた」と説明。安芸太田町教委は「学校ごとに単純な基準は
なく、それぞれ進路判定するようにしている」とする。両市町のほか、福山、三次両市と神石高原、北広島両町は基準を確認する予定はないとしている。
県教委の下崎邦明教育長は14日の記者会見で、1年時の非行歴による推薦の可否判断について「普通はあり得ない。聞いたことがない」と述べる一方、県内の
他の中学校の基準については「現時点で確認するつもりはない」とした。

組織的な学校運営できず/報告書不十分

県教育長会見

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府中緑ヶ丘中3年の男子生徒の自殺問題について見解を述べる下崎教育長

府中緑ケ丘中3年の男子生徒が誤った万引記録に基づく進路指導後に自殺した問題で、広島県教委の下崎邦明教育長は14日の記者会見で、同校は組織的に運営できておらず、調査報告書も「問題の背景の分析が十分でない」との認識を示した。県教委は同校の報告書作成を指導しており、不十分な内容のまま同校が遺族に渡したことについて「結果的に指導が行き届いていなかった」と述べた。
下崎教育長は、高校受験の推薦基準に一貫性がないことなどを挙げ、同校の運営について「管理職が関わつて方向性を出していなか った」と分析。「組織の体晏なしておらず、パラパラだ」とした。調査報告書については「事実関係を並べるだけでは再発防止につながらない」との見解を示した。
下崎教育長によると、生徒が亡くなった直後から職員を同校に派遣し、調査報告について指導したり不十しかし、同校は2月末に報告書をまとめ、遺族に渡したという。
下崎教育長は冒頭に「子どもが自ら命を絶つことはあってはならない。大変厳しく受け止めている」と述べた。今後、組織的な学校運営の重要性について校長会や管理職の研修で伝えるという。
(根石大輔)

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