2020年10月14日付毎日新聞

柔道部顧問が中1生徒の背骨折る 傷害容疑で逮捕 アイス食べたことに立腹 兵庫

中学校の柔道部顧問で、1年生の男子生徒2人に暴行を加えて背骨を折るなどの重軽傷を負わせたとして兵庫県警宝塚署は12日、傷害の疑いで同県宝塚市立長尾中学校教諭、上野宝博(たかひろ)容疑者(50)=同県西宮市柏堂西町=を逮捕した。2人が無断でアイスキャンディーを食べたことに腹を立て、「柔道の練習だ」といって体罰を加えたという。

調べでは、上野容疑者は9月25日午後4時半ごろから約30分間、校内の武道場で、12歳と13歳の部員2人を柔道技で投げ飛ばして顔をたたいたり、寝技をかけたりしてけがをさせた、

としている。12歳の生徒は背骨骨折で全治3カ月の重傷。もう1人の生徒は執拗(しつよう)に寝技をかけられ、首を打撲する軽傷を負った。容疑をほぼ認めているという。

宝塚市教委によると、上野容疑者は、2人が道場内にあった冷蔵庫のアイスキャンディーを無断で食べたことに立腹。2人は謝ったが、練習中に一方的に投げ技や寝技を繰り返し、1人は絞め技で失神した後も平手打ちで起こし再び技をかけ続けた。副顧問の40代の男性教諭が現場にいたが、「恐怖で制止できなかった」と傍観していた。重傷の生徒が逃げ帰り、保護者が学校に問い合わせて発覚。10月に被害届が出され、宝塚署が捜査していた。

市教委によると、上野容疑者は2016年4月に長尾中に赴任した。2年生の生徒指導を担当し、柔道三段。負傷した2人は初心者だった。上野容疑者は当初、同校の調査に「指導が行き過ぎた」と弁明。当日夜に教頭らと生徒宅に謝罪に行った際に体罰だと認めたという。

上野容疑者は前任校でも11~13年に、体罰で生徒の鼻を骨折させるなどし計3回処分(減給1、訓告2)されていた。怒りを抑えるための「アンガーマネジメント」と呼ばれる研修も受けていたという。

記者会見した森恵実子教育長は「体罰を受けた恐怖は筆舌に尽くしがたく、胸が押しつぶされそうになる。心から深くおわび申し上げる」と陳謝した。【関谷徳、土居和弘】

 

「人道的な問題」被害者団体が批判

2011年に名古屋市立高校の柔道部員だった次男を練習中の事故で亡くした「全国柔道事故被害者の会」の倉田久子代表(60)は、「初心者を相手に年齢も体格も立場も上の人間が指導を外れた暴力を振るうとは、柔道を離れた人道的な問題だ。誰が考えてもあるまじき行為」と批判した。

また、上野容疑者が過去に3回、体罰を理由に処分を受けていたことについて、「指導を続けさせる宝塚市教委のあり方、市全体、ひいては兵庫県全体の問題だ。指導の場に立たせないような処分が必要だが、トップが本気で取り組まなければ改善されない。第三者委員会が調査するならば、被害者の立場に立つ委員を選び、被害者側が傍聴し、報告書をチェックできる態勢を取るか注視する必要がある」と話す。

柔道では、中高生の練習中の事故が多発し、各地で訴訟も起きている。同会では、重篤事故の被害者の共通点として、①初心者②1年生③実力差④体格差――などを挙げている。

倉田代表は「柔道による事故は変わらず起き続けている。全日本柔道連盟は安全な指導方法を普及啓発しているが、意識の低い指導者には届いていない。指導者資格制度を見直す時期が来ている」と訴えた。【稲田佳代】

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