平成28年2月28日付朝日新聞西部本社版

母親「うやむやにできない」 熊本高1自殺の報告書受け

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 報告書を受け取った後、記者会見した女子生徒の母親=26日午後、熊本市中央区、仲大道撮影

2013年8月に、「LINE(ライン)」の書き込みなどでいじめを受けていた熊本県立高校1年生の女子生徒(当時15)が自殺した問題で、学校の調査委員会(委員長=園部博範崇城大准教授)は26日、「いじめが自殺に直接的な影響を与えたとは認めがたい」とする報告書をまとめた。

「すべてをうやむやにされたような報告書。納得できません」。自殺した女子生徒(当時15)の母親(48)は学校調査委からの報告を受けた26日、熊本市内で弁護士とともに会見し、時折涙を流しながら、とつとつと語った。

「娘の死とずっと向き合ってきて、いじめが100%原因だと思ってきた」という。だが、2年半待ち続けた報告は、到底受け入れられるものではなかった。

調査委は、女子生徒が夏休みを境に寮生活をやめられると見込んでいたと指摘。学校から「トラブルは解決した」と伝えられていた両親が寮生活をやめさせる判断をしなかったことも、「うつの状態」に陥った一因であるとした。

母親は「寮をやめさせなかったのが原因と言われ、ものすごくつらい。子どもを不幸にしたい親なんていません」と憤った。同席した弁護士も「(学校側が)情報をきちんと保護者に伝えていればこうはならなかったはず」と指摘した。

今後の対応は報告書を読み込んで決める。しかし、来月には女子生徒の同級生が高校を卒業するため、「再調査は難しくなるのでは」との不安もよぎる。

夫も14年7月に自殺。「すべてを壊されてしまいました。ともに悲しみ泣ける主人も失(な)くしてしまいました。この先、一生、心が癒やされることはありません」。母親はそんな思いを便箋8枚につづり、蒲島郁夫知事に渡してほしいと、県教委の担当者に渡した。

母親は言う。「学校側を守るための報告書なのかなと感じました。娘と夫には『とても残念だったね』と報告します」(籏智広太)

 

■踏み込めていない印象

〈林幹男・福岡大教授(臨床心理学)の話〉 いじめと自殺の間に一定の時間があり、直接的な因果関係を特定することは確かに難しい。ただ、調査は全体的に踏み込めていない印象がある。トラブルを複数の教職員で共有しなかったこと、「寮に戻っても大丈夫」という安全保証が十分なされなかったことなど、学校の対応のまずさと自殺の因果関係について、もっと調査する必要があったのではないか。

 

■公正な調査と思えない

〈いじめ問題に取り組むNPO法人ジェントルハートプロジェクトの小森美登里理事の話〉 学校の調査委員会で校長など利害関係者も入っていて、公正な調査とは思えない。調査委が認定したいじめは、どれも精神的な負担が大きく、一つでも継続すれば生きる気力を失う。それを5件も認定しながら、自殺との因果関係を認めないということは、意図的としか思えない。

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