【10月1日付 河北新報】

[こいずみ・しょういち]九州大大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。15年3月まで東北大大学院教育学研究科教授。同4月から現職。仙台市の生徒指導問題等懇談会委員長なども務めた。滋賀県出身。

◎悲劇をなくすには(下)白鴎大教授 小泉祥一さん(65)

-仙台市立中1年の男子生徒=当時(12)=が自殺した学校の対応をどうみる。
「2013年施行のいじめ防止対策推進法で、学校はいじめが疑われた段階で早期に幅広く捉え、組織的に
対応する義務が課された。今回、学校は加害生徒をいったん指導したが、その後に激化したいじめをいじめと捉えなかった。この点は法令違反とも言える」
-仙台市教委は遺族の意向で学校名を伏せている。

<現実と向き合え>
「意向を隠れみのにして、『いじめは人権侵害行為で犯罪性がある』ということを加害生徒が認識できないような環境をつくっていないか懸念する。遺族は、問題をうやむやにし、いじめの温床を残したいわけではないはずだ」 「根本的な解決は学校全体で男子生徒の死を悼み、つらい現実と向き合うことが出発点になる。校名を公表する必要性は遺族も理解してくれるのではないか」-市教委の第三者委員会による調査結果の評価は。
「ごく限られた生徒や教師からの聞き取りで、事実や問題の断片にすぎない。報告書は男子生徒を『当該生徒』、いじめた側を『関係生徒』と表現し、被害と加害を曖昧にしている。加害側の家庭環境、放課後や地域の人間関係が影響している可能性もある。効果的な対策には原因と背景の構造的な分析が必要だ」 -事実関係の再調査は必要か。

<追加調査要求を>
「教委の独立性は尊重されるべきだが、4月の教委制度改革で首長が総合教育会議を招集できるようになるなど、教育行政に関与できる余地が広がった。奥山恵美子市長は追加調査を求めるべきだ。そうしないと文部科学相の指示や是正要求が発動される可能性がある」-教師の多忙さが、いじめへの対応を妨げているとの声がある。
「いじめを受けている生徒が明確なサインを出しても対応しないなら、教師としての良心や人権感覚、教育専門性が問われる。生徒にしっかり向き合える労働環境の改善を管理職や教委に求めるべきだ。いじめを認知し、適切に対応した教師を加点する教員評価制度も必要だ」

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