平成29年7月4日中日新聞
多治見プール事故、市賠償へ 飛び込みの中3重傷

岐阜県多治見市立小泉中学校で2015年6月、水泳の授業中に飛び込みをした当時3年生だった男子生徒(16)が、プールの底で頭を打ち重傷を負った事故で、同市は3日、教員が飛び込みの指導をしたとして事故の責任を認め、損害賠償に応じることを明らかにした。市は事故当初、飛び込みを禁止していたと発表していた。
市教委によると、生徒はほぼ垂直に頭からプールに飛び込み、頸椎骨折や頸髄損傷などの大けがを負った。
現在は高校に通いながら治療やリハビリを続けているが、自律神経と感覚神経のまひ、上下肢の運動障害などの後遺症が残っている。
生徒側は15年9月、子どもの権利侵害などの支援を行う市子どもの権利擁護委員に救済を申し立てた。委員3人が事故原因を調査して市の責任を認め、16年5月に同校と市教育長に「教員への研修が不足し、飛び込みの危機意識の低さが事故を招いた」と勧告した。
生徒側は今年6月2日、2749万円の損害賠償のほか、事故後に市が誤った事実を発表したことへの謝罪や再発防止策などを求める要望書を市に提出。市側は同30日に生徒側に回答書を示し「事故後の報道で深い悲しみと憤りを感じられたのは大変遺憾」と責任を認め、賠償に応じる方針を示した。今後、賠償金額などについて協議を続ける。
市役所で3日に記者会見した生徒の父親(47)は「息子は今も苦しんでいる。事故を繰り返さないためにも市の誠実な対応を期待している」と話した。その後、渡辺哲郎市教育長も会見し「教育委員会の責任は重い。誠意を持って真摯に対応していきたい」と述べた。
◆授業で指導、責任認める
市教委によると、事故は2015年6月26日、体育の授業中に発生。男子生徒は接地面から高さ33センチのスタート台から前方へ高く飛び、水面にほぼ垂直に飛び込み、底に頭をぶつけた。水深は最大で1・1メートルだが、実際の深さは不明。
教員は学習指導要領で飛び込みが禁止されているのを認識しており、同15日の最初の水泳の授業で飛び込まないように、全員に注意した。ところが事故4日前、男子生徒を含む6人に授業中、スタート台からの飛び込みを指導。
水泳部員が見本を見せた後、男子生徒を含む5人が飛び込みの練習をしたという。
生徒側代理人の弁護士は「男子生徒が4日前に指導を受けたことが、事故の引き金になった」と指摘。市教委も「指導が一因になった」と認める。プールサイドには飛び込み禁止の看板も設置されていた。

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