2019年10月29日付西日本新聞

中1自殺、遺族へ調査報告拒む 熊本市教委「国の指針知らず」

熊本市の中学1年の男子生徒が4月、自宅マンションから飛び降りて死亡した事案を巡り、市教育委員会が原因などを調査した結果について、男子生徒の保護者への説明を拒否していたことが28日、分かった。文部科学省は自殺の背景調査に関する指針を定め、結果を遺族に説明するよう求めているが、市教委は「指針の存在を把握していなかった」と釈明している。

男子生徒が飛び降りたのは入学式の1週間後だった。熊本県警は「自殺の可能性が強い」と判断。市教委は、いじめやトラブルがなかったか、男子生徒が通っていた小学校も含めて教師や児童生徒に聞き取り調査し、5月に「原因は学校生活に関係するものではない」との結論を出していた。

男子生徒の母親は、「死」と記した小学6年時のノートが見つかったこと、当時の担任が別の複数の児童とトラブルを起こしていたことなどを市教委側に伝え、調査を要請。7月下旬に情報公開請求したところ、市教委は「自殺の原因は学校生活とは無関係と判断したため、調査資料は公開できない」と説明を拒否した。

文科省が2014年に全国の教委に通知した「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」では、児童生徒の自死事案が発生した場合、原因にかかわらず学校が調査し、結果を教委や遺族に報告・説明するよう定めている。学校生活は保護者から見えない点も多く、「遺族の知りたい気持ちに応えつつ、再発防止の観点がないか探ることが目的」(同省)という。

西日本新聞の取材に対し、市教委総合支援課は「取材を受けるまで指針の存在を把握していなかった」と釈明。文科省は毎年、会議などで周知するとしているが、同課は「情報の共有ができておらず、通知があった当時の担当者から引き継ぎもなかった」と答えた。

文科省児童生徒課は「熊本市教委の一連の対応は理解しがたい」とコメント。男子生徒の母親は「一人で調べるには限界があり、何度も調査をお願いした。市教委の対応は信じられない」と話した。 (壇知里)

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2019年10月1日NHK

【青森】高校生自殺で八戸学院野辺地西高校が第三者委 生徒の持ち物から「死・ね」と書かれた紙が…学校側はいじめを否定

野辺地町にある私立高校に通っていた当時高校2年の男子生徒が、ことし1月に自殺したことを受けて、学校側が、外部の専門家による第三者委員会を設置し、自殺の原因を詳しく調べていることがわかりました。
保護者側は「学校でのいじめが原因ではないか」と訴えていますが、学校側は、調査の結果、いじめは確認できなかったとしています。

野辺地町にある八戸学院野辺地西高校によりますと、当時、高校2年の男子生徒がことし1月に自宅で自殺し、学校は県と対応を協議する一方で、自殺の原因を調べるため、同級生たちへのアンケートや教員への聞き取りを行ったということです。

その結果、学校では「遺書が見つかっておらず、調査でも学校でのいじめは確認できなかった」と遺族側に伝えました。

しかし、生徒の遺族は、子どもの持ち物から「死ね」と書かれた紙が見つかった、などとして、「学校でのいじめが原因で自殺したのではないか」と訴え、学校側は、ことし7月、弁護士や臨床心理士などによる第三者委員会を設置しました。

第三者委員会は、ことし8月からこれまで4回、会合を開き、自殺の原因を詳しく調べていて、来年1月までに調査結果を出したいとしています。

野辺地西高校の橋場保人校長は「情報が錯綜して調査に影響を与えることや、生徒への心理的な負担を考えて、第三者委員会の設置などを非公開にした」と話しています。

また高校を運営している学校法人光星学院の古川聡常務理事は「原因がはっきりしてから公表するつもりだった。ほかの生徒のケアを行いながら、委員会の調査に協力していきたい」と話しています。

野辺地西高校を運営している学校法人光星学院の古川聡常務理事は「遺族の意向を受けて、ことしの7月に、弁護士や大学の専門家など4人からなる第三者委員会を設置して、これまで4回、会合を開いている。ほかの生徒のケアを行いながら、委員会の調査に協力していきたい」と話しています。

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位置情報共有アプリが発端 長崎・高校生自殺で第三者委がいじめ認定

2019年8月29日付東京新聞

 前橋市の県立勢多農林高二年だった伊藤有紀さん=当時(17)=が二月に自殺したとみられる問題で、有紀さんが設けた会員制交流サイト(SNS)のツイッターに「いじめの積み重ねで(中略)そろそろ限界」「私をいじめてる」と「いじめ」という言葉を一年当時に二カ所書き込んでいたことが分かった。有紀さんはいじめをうかがわせる二十七枚のメモを残しているが、「いじめ」と直接表現した記載が見つかったのは初めて。 (菅原洋、市川勘太郎)
 有紀さんのツイッターは非公開だが、記者が両親の了承を得て閲覧した。ツイッターにある「ヒカル」という名は個人情報を保護する仮名の「ハンドルネーム」。記載の中では家族旅行の情報などが事実と一致しており、有紀さんの書き込みに間違いない。
 ツイッターにあるいじめの記載の一つは、二〇一七年九月九日の書き込み。「少しのいじめの積み重ねで自分が歪(ゆが)んでいってるような気がする…折れたくないのに…そろそろ限界」と告白した。
 もう一つの書き込みは同年八月三十日。「(学校で)倉庫掃除をする時にメンバーが私と、私をいじめてる奴達(やつたち)で(中略)声かけたら『うざ(ったい)』とか返されて泣きそうになった私」と記した。
 さらに、同年七月十三日にはいじめの表現はないが、ツイッターを通じて知り合った人に悩みを相談。「私他の人から悪口言われるの、そのせいか最近全く食べられなくなっちゃった、どうしよう…」と書き、食べても吐くほど苦悩していると打ち明けた。
 続いて悪口の内容について「目でかすぎでキモ(ち悪)い、潰(つぶ)したくなる」と言われたという。
 有紀さんが残したメモでは、三件の書き込みに先立つ一七年とみられる七月三日、生徒から醜いネズミの「ハダカデバネズミ」に似ていると言われたという趣旨と、「『キライ』とも言われた」と記している。
 しかし、勢多農林高が三月に公表した基本調査結果では、メモの記載を裏付ける生徒の証言がないなどとして、同年を中心に記したとみられる二十七枚を全ていじめとは認めなかった。
 こうした調査結果に強い不満を表している両親の意向を受け、現在は県教育委員会が設けた有識者らによる県いじめ問題等対策委員会が調査している。
 父親(63)は「本人がツイッターに『いじめ』と書いた証拠があるのだから、(県教委は)いじめがあったと認めるべきだ。いじめによって食べられず、吐くほど追い詰められていたとは…」と声を震わせた。
前橋

亡くなった伊藤有紀さん(遺族提供)

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前橋・死亡高2 自身でツイッター投稿 「いじめ積み重ね…そろそろ限界」

2019年8月29日付東京新聞

 前橋市の県立勢多農林高二年だった伊藤有紀さん=当時(17)=が二月に自殺したとみられる問題で、有紀さんが設けた会員制交流サイト(SNS)のツイッターに「いじめの積み重ねで(中略)そろそろ限界」「私をいじめてる」と「いじめ」という言葉を一年当時に二カ所書き込んでいたことが分かった。有紀さんはいじめをうかがわせる二十七枚のメモを残しているが、「いじめ」と直接表現した記載が見つかったのは初めて。 (菅原洋、市川勘太郎)
 有紀さんのツイッターは非公開だが、記者が両親の了承を得て閲覧した。ツイッターにある「ヒカル」という名は個人情報を保護する仮名の「ハンドルネーム」。記載の中では家族旅行の情報などが事実と一致しており、有紀さんの書き込みに間違いない。
 ツイッターにあるいじめの記載の一つは、二〇一七年九月九日の書き込み。「少しのいじめの積み重ねで自分が歪(ゆが)んでいってるような気がする…折れたくないのに…そろそろ限界」と告白した。
 もう一つの書き込みは同年八月三十日。「(学校で)倉庫掃除をする時にメンバーが私と、私をいじめてる奴達(やつたち)で(中略)声かけたら『うざ(ったい)』とか返されて泣きそうになった私」と記した。
 さらに、同年七月十三日にはいじめの表現はないが、ツイッターを通じて知り合った人に悩みを相談。「私他の人から悪口言われるの、そのせいか最近全く食べられなくなっちゃった、どうしよう…」と書き、食べても吐くほど苦悩していると打ち明けた。
 続いて悪口の内容について「目でかすぎでキモ(ち悪)い、潰(つぶ)したくなる」と言われたという。
 有紀さんが残したメモでは、三件の書き込みに先立つ一七年とみられる七月三日、生徒から醜いネズミの「ハダカデバネズミ」に似ていると言われたという趣旨と、「『キライ』とも言われた」と記している。
 しかし、勢多農林高が三月に公表した基本調査結果では、メモの記載を裏付ける生徒の証言がないなどとして、同年を中心に記したとみられる二十七枚を全ていじめとは認めなかった。
 こうした調査結果に強い不満を表している両親の意向を受け、現在は県教育委員会が設けた有識者らによる県いじめ問題等対策委員会が調査している。
 父親(63)は「本人がツイッターに『いじめ』と書いた証拠があるのだから、(県教委は)いじめがあったと認めるべきだ。いじめによって食べられず、吐くほど追い詰められていたとは…」と声を震わせた。
亡くなった伊藤有紀さん(遺族提供)

亡くなった伊藤有紀さん(遺族提供)

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令和元年8月26日付朝日新聞滋賀版

越直美・大津市長に聞く いじめ防止への取り組み

夏休みが終わり、新学期が始まる。でも、いじめや人間関係などに悩み、「学校に行くのがつらい」と感じている子どもらの救いとなる居場所はあるのだろうか。小学生と高校生の時にいじめに遭い、今はいじめ防止の政策を進める側となった大津市の越直美市長(44)に取り組みへの思いなどを聞いた。(山中由睦(よしちか)、新谷千布美)

――市長自身も、子ども時代にいじめを受けた経験があるそうですね

小学3年と高校生の時です。親に相談することもできず、休めない。学校に行くことが苦痛でした。

自分の居場所は小学校の時は家に帰ってから。学年が違う友達がいて、私がいじめられていることを知らないので一緒に遊べました。高校の時はクラスで話す人がいなくて悪口を言われても、授業が終わって所属していた水泳部に行くと違うクラスの友達がいました。放課後になるのが待ち遠しかった。

自分がクラスでいじめられている時、それ以外のコミュニティーがあるということも居場所の一つなんだと思っています。

――「居場所」で、いじめられていることを打ち明けられましたか

言えなかったです。いじめられている人間であるということが、恥ずかしいと思っていたので相談はしませんでした。ただ相談できなくても、いじめを受けていることを知らない友達がそばにいたのは良かったと思います。

――市立中学2年の男子生徒が自殺してから8年。子どもの居場所をつくるため、市はどんな取り組みをしてきましたか

子どもの居場所づくりはとても大事。学校以外にフリースクールをつくるとか、(夏休み明けに)学校に行きたくないと思えば、全然行かなくてもいいと思う。いじめられた子どもの声を聞くと、「学校に行きたいけれど行けない」という子どももいます。いじめた人は学校に行っているのに。加害者は学校に行けて、いじめられた子どもが学校から疎外されてしまうのは絶対におかしい。

行きたいと思った時に行ける場所や教室を、学校内につくる必要があると考えています。

――大津市では市立の55全小中学校に、いじめ担当の教員を配置していますね

担任を持たない「いじめ対策担当教員」を置き、いじめの情報が行き渡るようにしています。2010年度に市内のいじめの認知件数は53件でしたが、昨年度は3648件。いじめの対策担当教員が情報を収集し、それまで見逃していたいじめを見つけられるようになったのは大きな成果です。

保健室も大事な居場所です。保健の先生に「おなかが痛い」って言って会いに行くだけでもいい。学校の中の居場所。大津市は学校に1人ずつだった保健の先生を複数配置し、研修を受けてもらい、「こころとからだの先生」に認定する取り組みを進めています。

――学校の外では、いじめ対策推進室を設置し、相談調査専門員が相談を受ける窓口を設けました

教育委員会以外で相談できる場所をつくるためです。相談調査専門員に臨床心理士や弁護士がおり、自宅や公園など学校以外の場所で子どもから話を聞きます。

ただ相談室に本人が連絡することは、すごく勇気がいることです。子どもたちのコミュニケーションの手段は電話よりSNSに移っています。知らない人にいきなり電話するのはハードルが高いので、17年に無料通信アプリ「LINE」の相談窓口を設けました。

昔と違うのは、今は家に帰ってからもいじめが続くということです。大津市では小学生の5割、中学生の8割がスマートフォンや携帯電話を持っています。学校でのリアルないじめがSNS上でも続いてしまう。家に帰ってから助ける手段として、LINEの相談窓口はSNS上の「居場所」なのかなと思います。

――いじめ対策で足りないと感じていることは

いじめが見つかる件数は増えたけれど、先生がいじめと思っていなかったり、発見してもその後の対応がよくなかったりしたこともあります。

大津市では、いじめの疑いがあれば24時間以内に学校が教育委員会に報告書を提出します。これまでに約1万件の報告書があります。どういう対応だと解決し、逆に重大事態になってしまうのかをAI(人工知能)で分析しています。これから先生が大量退職する時代を迎えます。若い人がたくさん入っても「経験がないからいじめの対応ができない」ということがあってはなりません。

 

いじめなどの主な相談窓口(大津市調べ)

《大津市》

*おおつっこほっとダイヤル

電話0120・025・528

弁護士や臨床心理士らの相談調査専門員が、いじめなどに関する相談に応じる。平日の午前9時~午後5時(火曜日は午後8時まで)。

*おおつ子どもナイトダイヤル

電話077・523・1501

夜間も相談員が対応する。午後5時~翌午前9時。第3日曜日は24時間対応している。

《県》

*こころんだいやる

電話077・524・2030

おおむね30歳くらいまでが対象。午前9時~午後9時。

《県教委》

*いじめで悩む子ども相談員

電話077・567・5404

電話だけでなく、直接会う相談にも応じる。平日の午前9時半~午後6時。

《県警》

*少年課大津少年サポートセンター

電話077・521・5735

少年補導に携わる職員が、いじめや非行などの相談に乗る。平日の午前8時半~午後5時15分。

《滋賀弁護士会》

*こどもの悩みごと110番

電話0120・783・998

弁護士が20歳未満の子どもやその保護者を対象に応じる。水曜日の午後3~5時。

大津いじめ自殺問題 大津市立中学2年の男子生徒(当時13)が2011年10月に自殺。市教育委員会はいじめと自殺との因果関係は不明として調査を終えたが、生徒の両親が12年2月に市や元同級生3人らに損害賠償を求めて提訴(3人のうち2人が賠償命令を受けたが控訴し、大阪高裁で係争中)。一方で市の第三者調査委員会が13年1月に「(元同級生2人の)いじめが

自殺の直接的要因」とする報告書をまとめたことを受け、市は15年3月、責任を認めて両親と和解した。この問題をきっかけに「いじめ防止対策推進法」がつくられ、13年9月に施行された。

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令和元年8月21日付神戸新聞

尼崎の中2男子、電車のはねられ死亡 転校前の神戸でいじめか 神戸市教委調査へ

2018年11月、兵庫県尼崎市立中学校2年の男子生徒=当時(14)=が同市内で電車にはねられて亡くなった事故を巡り、男子生徒が前年まで在籍していた神戸市立中学校や、その前に通っていた同市立小学校でいじめを受けていた可能性があるとして、神戸市教育委員会が調査することを決めた。関係者への取材で分かった。(大盛周平、佐藤健介)

男子生徒は、神戸市立小学校5年の秋から同市立中学校1年の秋まで神戸市北区で過ごした。

母親によると、小学校の卒業を控えた17年3月、自宅を訪れた当時の担任から、男子生徒の机に「死ね」などの落書きがあったことを告げられたという。

生徒は17年秋ごろに「いじめがトラウマになっている」として引っ越し、尼崎市立中学校に転校。しかし体調を崩して入退院を繰り返し、18年11月19日、JR神戸線尼崎-立花間の踏切内で電車にはねられて亡くなった。

その後、尼崎市教委は男子生徒が自殺したとみて学校生活などを調査し、いじめはなかったと結論づけた。一方、母親は事故直後、神戸市教委にも調査を要望していた。

両市教委が協議した結果、神戸市教委が当時の教員や生徒らに事情を聴くことを決めた。ただ、自殺といじめの因果関係について、神戸市教委の担当者は「神戸を出て時間がたっており、調べることは難しい」としている。

母親は「調査を望みながらここまで待たされた。早急に事実を明らかにしてほしい」と話している。

兵庫県教委は「国のガイドラインは、学校設置者(教委)がある市町でのいじめや不登校を想定している。違う自治体にまたがる事案については示されていない」と指摘。「遺族と意見を共有し、両市教委の相談に乗りながら進めたい」としている。

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仙台中2自殺、いじめ要因 第三者委が調査結果を答申

2019年8月9日付日本経済新聞

仙台市で2017年、市立折立中2年の男子生徒(当時13)が自殺した問題で、市教育委員会の第三者委員会は9日、同級生からのいじめを中心に、学校側の対応の不十分さなど複数の要因が自殺につながったとの調査結果を佐々木洋教育長に答申した。

中2自殺問題で第三者委の委員長(左)から調査報告書を受け取る仙台市教委の佐々木洋教育長(9日午後、仙台市)=共同

佐々木氏は「命を守りきれなかったことをおわびしたい。真摯に受け止め、いじめ防止に全力で取り組む」と述べた。

報告書は「くさい」「頭悪い」といった暴言を受けたり、机に「死ね」と落書きされたりしたなど8件をいじめと認定。授業中に大声を出した男子生徒の口に粘着テープを貼るなど、教員による体罰2件も認め「いじめを許容する雰囲気を助長した」とした。

繰り返し被害を訴えても学校側の効果的な指導や介入がなく、男子生徒が無力感を強めたと分析。自殺は「いじめを中心として、学校の指導や保護者との連携不足など複数の要因が相互に関連した」と結論付けた。再発防止へ、学校内での情報共有態勢の強化やスクールカウンセラーの積極的な活用を提案した。

遺族は「納得できる内容で、亡き息子に良い報告ができる。大切な命を奪ういじめは、もう絶対にあってはいけない」とのコメントを出した。

男子生徒は17年4月、自宅近くのマンションから飛び降り死亡した。〔共同〕

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令和元年7月17日付神戸新聞

神戸・高1転落 生徒本人が徹底調査希望 調査委が初会合

神戸市東灘区の市立六甲アイランド高校で2017年12月、当時1年の男子生徒が長時間の別室指導後に校舎から転落し一時重体になった問題を巡り、原因究明に当たる調査委員会の初会合が16日、同市内であった。生徒本人が意見陳述し、徹底調査を要望した。

代理人弁護士によると、生徒はツイッターで問題を起こしたなどとして2日間で約16時間の指導を受けた後、校舎5階から転落。今は転校し、後遺症で松葉づえを使っている。生徒側は市教育委員会への不信感から、市長部局下での第三者による調査委設置を要望。調査委は市教委に置かれたが、調査権限は市長部局の行財政局に委任された。

初会合では、委員長に愛知教育大の折出健二名誉教授を選出。今後、教員や生徒らから聞き取り、生徒が転落に至った背景を検証する方針を確認した。生徒側は意見陳述で、弁解の機会がないまま別室指導で教員に「退学や」と言い渡されたことや、治療で体中に金属が入り、後遺症で嗅覚も失われるといった現状を伝えた。その上で「真実が知りたい」とし、「教委や学校に忖度せず、徹底した調査を」と求める要望書を提出した。(佐藤健介)

 

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令和元年7月12日朝日新聞

子どもの自殺、再調査でいじめ認定相次ぐ 遺族も不信感

子どもが自殺した原因や背景を調べるため、教育委員会が作った第三者委員会などの判断が再調査を経て覆され、「いじめが原因だった」と認定される例が続いている。遺族からの不満もあり、第三者委員会のあり方はいじめ防止対策推進法の改正に向けた焦点の一つだが、国会議員の議論はストップしている。

「やっと長いトンネルの出口が見えました。長く苦しい2年10カ月でした」

仙台市立中2年だった息子が2016年2月に自殺した男性は、昨年末の会見でこう語った。この日、市の第三者機関「いじめ問題再調査委員会」が、いじめを認定して「(自殺と)強い因果関係があった」と答申した。

息子が命を絶った直後から、市教委はいじめが原因となった可能性に否定的な立場を取った。発生翌日の会見で、市教育長(当時)は「継続したいじめで自殺に至ったというものではないだろう」と発言した。

約2カ月後には市教委が設けた第三者委が立ち上がったが、議論は原則非公開だった。17年3月の答申は、部活の後輩から「キモイ」と言われたなどの事実を認定。「いじめによる精神的苦痛が理由の一つ」としながら、詳しい経緯や加害者を明らかにしないまま、男子生徒については「発達上の課題があり、からかいの対象になりやすかった」とした。

「いじめられて当然と、自分の息子が悪いような書きぶり」と反発した男性は、再調査を申し入れた。ちょうど同じころ、別の市立中学2年の男子生徒(当時13)が自殺をした。市教育長が「いじめというよりからかい」と説明しながら、数日後には「過去にいじめがあった」と発言して対応が定まらないなか、文部科学省が「いじめの重大事態として扱うように」と異例の指導をした。これを受ける形で、市長が16年の自殺についても、いじめ防止対策推進法に基づく再調査の実施を決めた。

市長の下に設けられた新たな第三者委は、遺族推薦の弁護士らも委員となった。18年末の答申はいじめとの因果関係を認めただけでなく、当初の第三者委の答申に対しても「発達上の課題があることを、いじめの要因として結びつける論理は正当化されるべきではない」と批判した。

青森県でも、調査がやり直された。16年8月に青森市立中学2年の葛西りまさん(当時13)が自殺したことをめぐり、市教委の常設機関「いじめ防止対策審議会」は17年、「いじめと自殺の因果関係は分からない」としたうえで「思春期うつ」を自殺の一因とする最終報告案をまとめた。だが、遺族は「根拠がない」と批判し、市長が委員の交代や再調査を市教委に要請する事態となった。

委員全員を入れ替えた再調査の末、18年8月にまとまった最終報告ではいじめが自殺の引き金になったと認められ、学校側の組織的な対応の不備が指摘された。父親は会見で「(前の)審議会でしっかり調査してもらえればここまで苦しまずに済んだ」と語り、調査のあり方について検証を求めている。

同県東北町で16年8月に町立中1年の男子生徒(当時12)が自殺した際も、同じような展開だった。町教委の審議会は自殺の背景として、いじめ以外に「本人の特性」や「思春期の心性」を挙げ、遺族が反発。新たに設けられた再調査委は昨年3月、これらの表記について「推測の域を出ず、妥当ではない」と指摘し、「学校の対応の不備が原因となった可能性を否定できない」と結論づけた。

山口県の県立高2年の男子生徒(当時17)の自殺について、県教委の第三者委が「いじめのみを自殺の要因と考えることはできない」としたのに対し、県の調査検証委は今年2月、いじめが主因とする報告書を公表。神戸市立中学3年の女子生徒(当時14)が自殺した問題では、市教委の第三者委がいじめとの自殺との関係を明確にしなかったものの、市の再調査委が今年4月、関連性を認める判断を示した。(高橋昌宏、土井良典)

いじめ被害をどのように調査・検証をするのかは、「いじめ防止対策推進法」の改正作業でも大きな論点となっている。

今の制度では、経緯や原因の解明を第三者委に依頼するのかや、その場合の委員の人選は主に教育委員会が判断している。だが、「学校側に近すぎる」という批判があり、法改正に向けた検討をしている超党派の国会議員勉強会は被害者側が求めれば、最初から首長部局のもとに第三者委を設置でき、人選にも関われないか、検討してきた。

ただ、勉強会の座長の馳浩元文科相が4月に出した試案では、この内容が「自治体の負担が大きくなる」「教育への政治介入の懸念がある」などの理由で削られた。委員の人選についても「利害関係のない者を最低2人入れる」との内容にとどまった。これに対し、自殺をした子どもの遺族らの団体が強い反発を示し、議員の中からも再考を促す声が上がっている。

学校が取り組むべき対策をどのように法律に盛り込むのかなどをめぐっても、議員の間の意見が分かれ、勉強会の議論はその後、実質的にストップした。通常国会を目指していた、改正法案の提出も見送られた。(矢島大輔)

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令和元年7月8日付朝日新聞

暴力や金銭要求、同級生らに実態調査へ 岐阜の中3自殺

岐阜市の中学3年の男子生徒が転落死し、自宅からいじめを示唆するメモが見つかった問題で、市教育委員会は8日、生徒が通っていた中学校で、いじめの実態を調べるためのアンケートを始めた。

アンケートは3年生全員と死亡した男子生徒と同じ部活動の計約200人が対象。週内にも回収し、第三者委員会が調査する。

生徒の死亡後、学校には暴力や金銭要求を受けていたとの情報が寄せられ、市教委は生徒がいじめを受けていたと判断。第三者委が年内にも調査結果をまとめる。

市教委によると、5月末、いじめ被害を示唆するメモを男子生徒の同級生が担任に渡したが、担任は一部の事柄への指導にとどめていた。担任はメモを学年副主任の教諭だけに見せ、シュレッダーで廃棄した可能性が高いという。

また、男子生徒は1、2年生のときの定期アンケートでも「嫌なことをされた」「暴言をはかれた」と記したが、進級後の新クラスごとに結果を引き継ぐ仕組みがなかったことも新たに分かった。

この問題を受け、文部科学省は8日、担当者を岐阜市に派遣し、真相の解明や再発防止、遺族への対応、他の生徒の心のケアなどについて指導した。(高木文子)

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