令和4年12月21日 中国新聞デジタル

学校側の調査は不十分 広島大付属三原中の組み体操訴訟 遺族の母親訴え

広島大付属三原中(広島県三原市)の3年男子生徒=当時(14)=20166月に死亡したのは運動会の組み体操の騎馬の崩落が原因として、同市の遺族が広島大(東広島市)に約9600万円の損害賠償を求めた訴訟の口頭弁論が21日、広島地裁福山支部であった。本人尋問で遺族の母親が学校側の調査は不十分などと訴え、結審した。判決は来年4月26日。

母親は運動会まで生徒に病気などはなかったと証言。崩落前後の映像を撮影した保護者がいないか学校にアンケートを求めたが断られたとし、「学校は真実を追求してほしい」と訴えた。騎馬を構成していた生徒から後頭部に膝が当たったなどと直接聞いた内容と、その後に学校側が聞き取った内容が異なっているとした。

この日は当時の担任の男性教諭の証人尋問もあり、生徒も加わって机を騎馬に見立てて動きを検証した結果、男子生徒の後頭部に脚が当たることはないとの結論だったと証言した。

口頭弁論後、遺族側の代理人弁護士は「騎馬に対する教員の危険意識が薄い。学校側の聞き取りには疑問点も多い」と指摘した。大学側の代理人弁護士は「騎馬の崩落はないという主張は変わらない」と述べた。(東山慧介)

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平成30年10月16日朝日新聞広島版

「息子は一生懸命生きていた」組み体操事故、母の悔しさ

中学3年の男子生徒が2年前、夢半ばで突然亡くなった。両親は、運動会で組み体操の騎馬が崩れて頭を強打したのが原因と主張。一方、生徒が通った国立広島大学付属三原中学校(広島県三原市)側は事故そのものを否定し、広島地裁福山支部で裁判が続く。母親が朝日新聞の取材に応じ、我が子への思いを語った。

「将来、パイロットになりたいの?」

「はい」

「そうか、がんばれよ」

息子は空港でフライト後のパイロットに話しかけて、そんな会話をしていました。飛行機に乗る時にはよくパイロットを見つめていたのを覚えています。広島空港に連れていったり、プラモデルや雑誌を買ってあげたりもしていました。

亡くなる少し前には、防衛大学校のことをすごく調べていました。宇宙での仕事の話を聞かせてくれたこともあったので、パイロットから視野を広げ始めていたのかもしれません。

中学から部活でテニスを始めました。小学生から続けている子を意識して「うまくなりたい」とよく口にしていました。休日も友達や夫と練習をしに行っていて、「高校でも続けたいんだ」と話してくれました。

伝達ミスでテニスの試合を欠席すると先生に勘違いされた時には、「もうメンバーを組んでいるから」と先生になだめられても、諦めないでまた先生を説得したんです。「お母さん、出られることになった!」と伝えに来た時は、すがすがしい笑顔でした。こんなに熱中できるものが見つかってよかったね、と私も喜んでいました。

知らない土地に行くことも好きで、家族でいろんな場所を旅行しました。城めぐりをした滋賀や兵庫、民泊のおじちゃんとおばちゃんに可愛がってもらった高知、夫が仕事をしているセブ島――。必ず旅先で小さな置物を買って、棚にきれいに並べるんです。今でもそれを見ると、あんなところも行ったな、一つ一つ大事にしてたんだな、と思い返されます。

息子が亡くなった時、たった2日前の運動会での姿が浮かび「こんな映画みたいなことあるのかな」と受け止め切れませんでした。それからは、ずっと息子の気持ちに寄り添おうとしています。「夢もあって、生きるのにも一生懸命だったのに、こんなことになって悔しいよね」って。できることなら代わってあげたい、何で私じゃないの、とずっと思っています。

「亡くなったくらいで離れ離れにならない」と、今でも家族5人で一緒にいる思いです。この子のお母さんで、本当によかった。

でも、学校から帰ってきたらまず「ただいま!」とリビングに顔を出してくれたことを思い返し、今でも入ってこないかなと思う自分がいます。私が作った大好きなオレンジゼリーを食べながら、ソファでくつろいでいた姿が浮かびます。

一番悲しいのは料理を作る時です。量が少ないんです。仏壇に供える皿に料理を盛ると「あんなにたくさん食べていたのに」と現実に耐えられなくなります。それから、息子が手をつけていない料理を、そのまま下げます……。

学校は「事故はなかった」と言います。そんな学校でも息子にとっては、幼稚園から中学まで一貫で通ってきた、人生そのものです。息子の学校はここだという事実は一生残り続けます。

だからせめて、事実にちゃんと向き合う、いい学校であってほしいと願っています。(橋本拓樹)

〈広島大学付属三原中学校での組み体操をめぐる訴訟〉 2016年6月の運動会で生徒たちは3段の騎馬を組んだまま歩いて退場。男子生徒の両親は、その際に騎馬が崩れ、2段目にいた男子生徒の後頭部に上段の生徒のひざが当たり、2日後に死亡したと主張。学校側は騎馬は無事に「解体した」と事故を否定し、双方の主張は食い違っている。

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説明会求める保護者も

三原組み体操訴訟 学校側「予定ない」

広大付属ピラミッド2

亡くなった男子生徒が通っていた広島大付属三原中

広島地裁福山支部で24日に始まった組み体操後の生徒の死亡を巡る訴訟。運動会があった三原市館町の広島大付属三原中はこれまで、裁判に至った経緯などを保護者全体には説明しておらず、裁判が始まったことを知らない親もいた。「何かあったのか知らせてほしい」との声も聞かれた。   (32面関連)

「情報がないことに不安と不信を感じる」。

子どもが同中に通う30代女性は、保護者向けの説明会の開催を求める。「裁判になって学校から説明があるかなと思っていたが、何もない。説明してほしい」と話す。

生徒が死亡したのは2016年6月。遺族によると、保護者の会合で原因調査の協力を学校側に求めたが拒否されたという。40代の保護者男性は「遺族に適切な対応をしていれば裁判にはならなかったのでは」と述べる。

同校PTAの下宮彰浩会長によると、学校からは、PTA役員と堡m者代表が集まる会合で一度、説明かあったという。「これまで2度、学校に保護者への説明会を開いてはどうかと提案したが、実現しなかった」という。

「保護者から説明会を求める声が増えるなら一学校への要望を検討したい」と話した。

同中はこの日、小学校入学試験の採点業務で休校。宮本直彦副校長は取材に対し「遺族の心情、意見の違いから他の保護者に経緯などを直接伝えるのが難しい。説明会を開く予定はない」と述べた。

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平成30年1月25日中国新聞

学校側請求棄却求める

三原組み体操訴訟地裁福山で弁論

三原市館町の広島大付属三原中3年の男子生徒=当時(14)=が2016年6月に死亡したのは運動会の組み体操が原因として、同市の遺族が広島大(東広島也に約9600万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が24日、広島地裁福山支部であった。大学は請求棄却を求めた。組み体操後の死亡を巡る訴訟は、確認できる限り全国2例目。意見陳述で生徒の母親は大学に対し「息子の命をどう守っていくべきだったのか、しっかり見つめてほしい」と主張。死亡後、「大学から対応を拒否され続け、傷ついた」と訴えた。

大学側代理人の増田義憲弁護士は「事故はなかったとして請求の棄却を求める」と争う姿勢を示した。

訴状によると、遺族は組み体操の「移動ピラミッド」(3段騎馬)の演技後にピラミッドが崩落したと主張。生徒の後頭部に衝撃が加わったとしている。事故後も学校が原因の究明や安全対策の検証、保護者への説明を怠ったとした。

運動会は16年6月18日にあり、生徒は組み体操などに参加。20日未明に自宅で体調が悪化し、病院に搬送され、同午前5時50分ごろに脳内出血で死亡した。(高本友子)

広大付属ピラミッド1

原告側か示したビデオ画像。奥右に退場後、組み体操が崩落したとする

遺族側が映像公開「崩落」を主張

男子生徒の遺族と蜃に代理人の渡部吉泰弁護士は24日、運動会の組み体操で男子生徒の上の生徒が落下しているとするビデオ映像を公開し、「騎馬は崩れている」と主張した。大学側は「崩落しておらず、事故はなかった」としている。

口頭弁論後に遺族側か、福山市の広島弁護士会福山地区会館で、約10分間の組み体操の終盤の映像を示した。死亡した生徒は、9人で組む移動ピラミッド(3段騎馬)の中段。騎馬は約40肩進み、退場門付近で上段の生徒が下側に姿を消している。

渡部弁護士は「崩れる前から左右にふらつき危険な状態だった。周囲の教員は漫然と見ている」と学校側の責任を指摘した。ほかにも、上段の生徒が落下して一いるように見える騎馬が複数あるとした。映像は、遺族が大学側から提供を受けた。崩れた現場が映っているとして証拠提出した。

広島大は「現時点で映像を確認しておらずコメントできない」としている。

教育評論家の尾木直樹さんは「事故の可能性がゼロと言えない状況にある以上、学校側に調べる責任がある。それが今後の生徒の安全確保にもつながる」と話している。(山本庸平)

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平成29年10月4日中国新聞
「学校の姿勢に失望」
三原組み体操提訴の両親会見
両親
「真実を明らかにしたい」と会見で訴える生徒の両親
 三原市館町の広島大付属三原中3年の男子生徒=当時(14)=が昨年6月、運動会の組み体操に参加した2日後に死亡した問題で、同市の生徒の両親が3日、弁護士と市内で記者会見した。両親は「事実を隠そうとする学校の姿勢に失望した」と提訴決意の思いを語った。
 遺族側は組み体操の移動ピラミッド(3段騎馬)を解体する際に崩落があったと主張。昨年7月と12月、生徒が亡くなった経緯や原因調査への協力を保護者の会合で依頼したいと同校に要望した。事前に内容も通知したが、2度とも出席を拒否されたという。父の会社社長男性は「息子の最期に何かあったのか知りたか
った」と声をつまらせた。
 取材に対し同校は「騎馬が崩れていないのに、崩れた前提で保護者に話をしてもらうことはできない」と説明している。
 遺族は、学校が十分な安全対策を講じなかったとして今月1日、学校を運営する広島大(東広島市)に約9千万円の損害賠償を求める訴訟を広島地裁尾道支部に起こした。

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平成29年11月3日中国新聞
学校側「再調査しない」
三原組み体操問題生徒遺族に回答

 三原市館町の広島大付属三原中3年の男子生徒=当時(14)=が昨年6月、運動会の組み体操に参加した2日後に死亡した問題で、組み体操と死亡の因果関係の再調査を求める遺族に対
し、学校側は再調査の意向はないと伝えていたことが2日、分かった。取材に対し同校は、運動会後に調査をしたと説明している。
 同市の遺族は、生徒が参加した組み体操「移動ピラミッド」を解体する際、崩落する事故があったと主張。死亡から1年たった6月、「事実が明らかになっ
ていない」として質問状を同校に提出した。当日の指導教員の配置など27項目について見解を求め、再調査を求めた。
 同校の6月15日付の回答によると、「生徒の死亡を引き起こすような行動、状況はなかったと考えている」と説明。「今後、再調査は予定していない」とした。同校は生徒の死亡後、
組み体操に参加した生徒に聞き取りを実施。「崩れていなかった」との回答を得たとしている。
 取材に対し同校は「聞き取りをした生徒は既に卒業している。聞いたことは間違いないので再調査の必要性はない」と説明した。
 遺族は、学校が十分な安全対策を講じなかったとして今月1日、学校を運営する広島大(東広島市)に約9千万円の損害賠償を求める訴訟を広島地裁尾道支部に起こした。同校は「内容については訴状が手元にな
いので回答できない」としている。(中島大)

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平成29年11月2日中国新聞
広島大付属三原中 運動会2日後に生徒死亡
「組体操が原因」提訴
  遺族、安全措置問う
広大付属三原
 三原市館町の広島大付属三原中3年の男子生徒=当時(14)=が2016年6月に死亡したのは運動会の組み体操が原因として、同市の遺族が1日、学校を運営する広島大(東広島市)に約9千万円の損害賠償を求め広島地裁尾道支部に提訴した。生徒は運動会の2日後に死亡。学校が十分な安全対策を講じなかったと訴えている。(中島大)
 提訴したのは、父親の会社社長男性と家族。訴状によると、運動会は16年6月18日に同校グラウンドであり、生徒は組み体操などに参加した。20日未明に自宅
で体調が悪化。病院に運ばれ、同午前5時50分ごろ脳内出血で死亡した。
 遺族は、組み体操「移動ピラミッド」 (3段騎馬)で生徒が頭の痛みを訴えており、後頭部に衝撃が加わったと主張。演技後、ピラミッドが崩落したとし、「学校が演技内容と危
険性を十分認識しておらず、事故を未然に防ぐ措置を取っていなかった」と訴える。
 同校によると、ピラミッドは上段(1人)中段(2人)下段(6人)の3段。
下段が歩いて退場する。男子生徒は中段で四つんばいになっていた。
 同校は、生徒の死亡後、他の生徒から聞き取りを実施。中国新聞の取材に「ピラミッドは崩れなかった。事故とは考えていない」と説明した。17年6月の運動
会は移動ピラミッドを中止した。「危険性があった。遺族の心情にも配慮した」としている。

専門家は危険性指摘
国も昨年対策通知
移動ピラミッドのイメージ
「移動ピラミッド」のイメージ
 広島大付属三原中の運動会で実施された組み体操「移動ピラミッド」は、「動きがあるため危険性が高い」と指摘する専門家もいる。全国的に多発する組み体操事故を受け、国は昨年、各学校に安全対策の徹底を通知していた。
 学校事故の問題に詳しい名古屋大大学院の内田良准教授(教育社会学)は「生徒の死亡と組み体操の因果関係は分からない」とした上で、「国立の学校として玄夷して見直しをすべきだった」と話す。
 同校であった移動ピラミッドは高さは3段と極端に高くはないが、内田准教授は「土台が動くので崩れる可能性がより高くなる」と指摘。「段数が少ないから安全だという誤解が学校にあったのではないか」と推測する。
 スポーツ庁が2016年3月に出した通知は、タワーやピラミッドの組み体操は「確実に安全な状態で実施できるかどうかを確認し、できないと判断される場合は実施を見合わせる」とした。同庁によると、1969年度以降、組み体操で死亡した子どもは全国で9人、障害が残った子どもは92人いる。
 学校に男子生徒の死亡についての再調査を求めるのは、教育評論家の尾木直樹さん。「責任追及という意味ではなく、学校の行事で死亡の疑いがある場合は、遺族の立場に立って調査に入るべきだ」と話す。
 尾木さんは日本の学校で・の死亡事故が、他の先進国に比べて多い現状も指摘。
 「現場の学校や保護者も、子どもの安心安全を第一に考えてほしい」と訴えている。(中島大)

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