2022年12月24日付朝日新聞デジタル

熊本の中1自死、校長ら16人懲戒処分 「死」つづるノート報告せず

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教職員の処分を公表し、謝罪する熊本市教委の遠藤洋路教育長(左)ら=2022年12月23日、熊本市役所、堀越理菜撮影

 熊本市教育委員会は23日、7事案で教職員計25人を懲戒処分などにし、発表した。このうち2019年に中学1年の男子生徒が自死した問題の関係では、生徒が小学6年時の校長ら16人が懲戒処分などとなった。

 男子生徒が自死した問題では、調査委員会が小学6年時の担任教諭の不適切な指導と自死との関連を認め、市教委はこの教諭をすでに懲戒免職としている。

 市教委によると、この問題の関係者では今回、計26人が懲戒処分や措置の対象となり、退職者を除く16人が懲戒処分などとされた。

 小学校の当時の校長(62)は、生徒が「死」などと書いていたノートについて報告を受けたが保護者に伝えなかったなどとして減給10分の1(2カ月)。当時の教頭(50)は、自死後もこのノートについて市教委に報告しなかったなどとして、より重い停職14日となった。

 また、繰り返されていた担任教諭の体罰や暴言の未然防止や、自死後も含めた適切な対応がされていなかったなどとして、市教委の関係者ら7人を戒告。遠藤洋路教育長(すでに3カ月の減給が決定)ら6人を訓告、当時の学校管理職1人を厳重注意とした。

 遠藤教育長は「反省と教訓を踏まえて二度とこうしたことが起きないように今後の対応をしっかり考え、よりよい学校、教育委員会づくりに全力を尽くしたい」と、改めて謝罪した。外部の有識者を交えた協議を行うなどして、再発防止のための新たな体制づくりをしたいと考えを述べた。 亡くなった男子生徒の母親は取材に、処分について「校長と教頭の処分は軽いなと思う。特に、校長の責任は相当重いはずなのに教頭よりも処分が軽いのは驚きだ」と話した。また、今後の対応については「教育現場で体罰だけでなく、暴力が伴わない不適切な言動についても、しっかり問題と認識して対応していってほしい」と訴えた。

女子児童盗撮など 7人処分

 男子生徒の自死の問題以外では、計7人が懲戒処分となった。

 勤務する小学校の更衣室などで女子児童を盗撮したとされる小学校の男性教諭(26)は懲戒免職となった。スリルを味わったり、性的な欲求を満たしたりするためだったと話しているという。保存されていた盗撮のデータを消去させ、市教委に対してデータはなかったと虚偽の報告をしたとして、校長(55)は停職6カ月。

 市体罰等審議会で、女子児童の脇腹をつつくなど児童を不快にさせる性的な行動など計5件が暴言等と認定された小学校の男性教諭(40)は停職1カ月。教頭は厳重注意。そのほか、同審議会で体罰などが認定された、小中学校の教諭計4人も戒告や減給となり、うち1件で校長が厳重注意となった。(堀越理菜)

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2022年12月19日 付熊本日日新聞

優秀な指導者の「恐怖支配」元教え子の後悔 熊本市 懲戒免職元教諭の体罰や暴言【放置された不適切指導】㊤

「元教諭から毎日のように殴られた」と証言する紫谷星伍さん=熊本市中央区

熊本市教育委員会は2日、42件の体罰や暴言などを踏まえ、市立校に勤務していた元教諭を懲戒免職処分とした。被害に遭った元児童や保護者、教員、元管理職など20人以上の証言から、元教諭の不適切な指導がなぜ放置され続けたのかを考える。元教諭にも取材を申し入れているが、今のところ実現していない。

◇ ◇

天草市の自営業紫谷[しこく]星伍さん(32)は地元の成人式に出席した12年前、小学生の頃に担任をしていた男性の元教諭を見つけた。「やられたこと、全部覚えてますから」とすごむと、元教諭は「俺も若かったけん、本当に悪かった」と謝った。

拍子抜けした紫谷さんは、仕返しするつもりで固めていた拳を緩めた。

元教諭は20194月に自殺した熊本市立中1年の男子生徒の小学6年時の担任。複数児童に不適切な指導を繰り返したとして、2日付で懲戒免職処分となった。

紫谷さんは一連のニュースを見るうちに「あの時、自分が殴っていたら、子どもたちは犠牲にならずに済んだだろうか」と思うようになった。

忘れられない場面がある。「そこに座れ」。元教諭は砂利の上に正座するよう小学4年の紫谷さんに命じ、「痛いだろう」と靴で太ももを踏み付けた。石がすねに食い込み、紫谷さんが泣き出すと、元教諭はにやっと笑ったという。

紫谷さんは忘れ物が多く、元教諭に連日殴られた。「1回で2030発の時もあり、体中にあざがあった」。ある日、登校中に怖くなって公園に隠れた。それがきっかけで周囲が事情を知り、元教諭の行為が校内で問題化。元教諭は手を上げても寸前でやめるようになり、やがて異動した。

紫谷さんが注意欠陥多動性障害(ADHD)と分かったのは、その後だ。

一方、元教諭には担当教科や文化系部活動の優秀な指導者という側面もあった。男子生徒の自殺

を調べた熊本市の詳細調査委員会の報告書には、多くの教職員や児童、保護者が元教諭の指導力を高く評価したとある。男子生徒が通った小学校で指導した部も、数々の賞を獲得している。

男子生徒の友人だった元児童(15)が元教諭について覚えているのは、数秒以内の整列や大きい声での返事、5分前行動などを強要する厳しい指導。「外からは統率の取れたクラスに見えたと思う」としつつ、「恐怖支配だった。返事の声が小さいと、壁に向かって『はい』と何十回も言わされた」と証言する。

報告書によると、元教諭から被害を受けたとする子どもや保護者が不適切な指導の再発防止を求める嘆願書を市教育長に出すと、支持する側は寛大な処置を求める嘆願書を出した。

市教育委員会の複数の担当者が、指導力を評価する声があるため元教諭の処分が保留され続けた

と考えていた、とも報告書は指摘している。

「大人たちが元教諭を教壇から引きずり降ろす機会はいくらでもあった。成人式で仕返しをやめた私も、動かなかった大人の一人なんです」。紫谷さんは今も後悔している。(植木泰士)

 

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2022年12月3日付熊本日日新聞

処分遅すぎる体罰など受けた同級生が会見 熊本市中1自殺、元担任教諭が懲戒免職

男性教諭の懲戒免職処分を受けて記者会見する元児童2人=3日、熊本市中央区

2019年に自殺した熊本市立中1年の男子生徒を小学6年時に担任した男性教諭が42件に上る体罰などを理由に懲戒免職処分となったことを受け、生徒の同級生だった元児童2人が3日、熊本市で記者会見し、「処分は遅すぎる」と市教育委員会や学校の対応を批判した。再発防止策を講じる上で市長部局が主体的に関わることも求めた。

元児童2人は男性。いずれも男性教諭から体罰や暴言などを受けたという。会見には2人の両親らも同席した。

市教委が男性教諭を処分した時期について、元児童の1人は「対応が遅すぎる。やっているのは暴行で犯罪だ。被害を受けた人はもっといる」と憤った。PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症した経験から、心のケアといった被害者対応も求めた。

体罰や暴言が問題化した時点で処分しなかった点について、別の元児童は「小さな怠惰が積み重なって対応が遅れたのではないか」と話した

。母親も「(男子生徒が自殺する前から)体罰を訴えてきたが、校長や教頭は何もしてくれず、市教委と市長も動かなかった」と不信感をあらわにした。

PTSDを発症した元児童は当時の学校や市教委の関係者の処分を求めたほか、遠藤洋路教育長の任命権者である大西一史市長の責任も指摘した。

元児童2人は再発防止策として、被害の訴えが学校や市教委を介さずに第三者へ届く仕組みや、教員の不適切な言動を防ぐための授業の録画を提案。「市全体でちゃんとした対策を取ってほしい」と訴えた。(中原功一朗)

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2022年12月2 日西日本新聞

なぜわが子が…母の苦闘3年半 熊本中1自殺、教諭の処分2日公表

熊本市の第三者委員会の調査報告書を受け取り、取材に応じる両親。「再発防止に役立ててほしい」と話した=10月、熊本市

熊本市の第三者委員会の調査報告書を受け取り、取材に応じる両親。「再発防止に役立ててほしい」と話した=10月、熊本市

男子生徒の自宅には、中学校から提供してもらった制服姿の遺影が飾られていた。そばには好きだったお菓子も置かれていた=11月、熊本市(撮影・小笠原麻結)拡大

男子生徒の自宅には、中学校から提供してもらった制服姿の遺影が飾られていた。そばには好きだったお菓子も置かれていた=11月、熊本市(撮影・小笠原麻結)

2019年春に熊本市立中1年の男子生徒が自殺した問題で、市教育委員会は2日、男子生徒を含む複数の児童に対し不適切な指導を重ねていた、小学6年時の担任教諭の懲戒処分を公表する。生徒の母親が西日本新聞の取材に応じ、突然の別れに打ちひしがれた日々や、真実を知りたい一心で声を上げ続けた3年半を語った。

中学に入って間もない19418日の夜だった。

少し前に「夕食後に話そうか」と台所でやりとりした息子が、自宅マンションから落ちた。

一体、何が起こったのか。事態をよくのみ込めないまま、息子を乗せてスピードを上げる救急車を車で追った。病院に着いてからの記憶はおぼろげだ。駆け付けた中学校の校長らと、簡単な会話をしたように思う。どんな中身だったろう。息子を見送った後は毎日泣いていたと、母親は言う。

誰にでも優しく、正義感のある子。

5歳の頃だったか。保育園に迎えに行き、自宅の鍵をかけ忘れて出てきたことを伝えると、「僕が先に行って見てくるよ。誰かいたら『こんにちは』って言うね」。無邪気な反応はほほ笑ましく、たくましさも感じた。大きくなり、小学6年の授業参観では「人の役に立つような、医療機器などのロボット開発者になりたい」と将来の夢をはっきり口にした。家では、プログラミングを学ぶんだとも。それなのに-。

自死から約1年後の203月。母親は、熊本市教委が生徒や教職員から聞き取った内容をまとめた「基本調査報告書」を受け取った。

息子のことを「勉強もできる良い子」「担任ともうまくやっているように思った」。文面からは、なぜ、の答えが浮かび上がってこない。到底得心がいかず、市に第三者委員会による再調査を訴えた。

第三者委では、息子の様子に異変を感じ始めた経過を伝え、成長の記録も資料にして提出した。

心身の奥に疲れがどっと押し寄せ、離れないこともあった。それでも「もし生きていたら、『最後まで闘って』と思ったはず」と自分を奮い立たせた。

今年10月に示された第三者委の調査報告書。重症化した抑うつ状態が自殺の一因とし、小学6年時の担任教諭の不適切な指導が「発症に影響した可能性が高い」とあった。教諭は日常的に暴言を吐くなどし、息子はストレスから睡眠障害や食欲低下に追い込まれていた。

さらに、市教委は1117日、この教諭が18年までの5年間に、複数の児童に計42件の不適切な言動を取っていたと認定、勤務を停止させた。大西一史市長は「教壇に立たせない判断はもっと早くやるべきだった。命を落とす前に、いろんなことができたのではないか」と述べた。

2日の教諭の懲戒処分は、きちんと息子の遺影に報告する。納得できる内容を望む。少しでも魂が穏やかになってほしい。

母親は、教諭が息子に謝罪に来るよう、市教委に申し入れている。「息子は顔も見たくないかもしれない。それでも教諭が心から謝りたいと考えるなら、受け入れると思うんです」(小笠原麻結)

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2022年12月2日付熊本日日新聞

自殺した熊本市立中1男子の元担任、熊本市教委が懲戒免職 複数の児童に不適切指導繰り返す

 

男性教諭の懲戒免職処分を発表した熊本市教育委員会の遠藤洋路教育長(左)と幹部ら=2日、熊本市役所

 熊本市教育委員会は2日、20194月に自殺した熊本市立中1年の男子生徒の小学6年時の担任で、複数児童に不適切な指導を繰り返していた男性教諭(60)を懲戒免職処分にした。当時の管理職や市教委幹部らの処分は調査した上で必要かどうか検討する。

市教委によると、男子生徒が通っていた小学校の児童らに対する体罰や暴言、不適切な言動など認定した計42件を踏まえ、処分を決定。指針に照らし、「不適切な指導が長期間にわたったこと、件数の多さなどさまざまな部分を考慮して免職が相当と判断した」と説明した。

市教委の11月末の聞き取りに対し、男性教諭は「事実として間違いない。指導が適切ではなかった」と反省する一方、言動によっては「よく分からない。自分がやったはずがない」と否定したという。

遠藤洋路教育長は記者会見で「多くの子ども、保護者、教職員に深い傷を負わせ、消えることのない痛みを残してしまった。被害を受けた全ての人に心よりおわびする」と陳謝した。

男子生徒の自殺を巡っては市の詳細調査委員会が10月、男性教諭の不適切な指導が抑うつ状態に強く影響し、自殺の一因になったとする報告書を公表した。

認定された体罰など42件のほかにも市教委には2日現在、男性教諭に関する情報が77件寄せられている。市教委は必要な調査を経て市体罰等審議会に諮り、再発防止策につなげるとしている。(元村彩)

 

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2022年11月23日付朝日新聞デジタル

先輩からの行きすぎた指導「シメ」の実態調査 熊本工の高1自死問題

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熊本工業高校の生徒の自死について、会見で経緯を説明する県教委の担当者=2022年11月7日午後4時58分、熊本市中央区の熊本県庁、大貫聡子撮影
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第三者委員会の初会合であいさつする白石伸一教育長=2022年11月16日午後6時0分、熊本市中央区、大貫聡子撮影
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熊本工業高校の生徒の自死をめぐり調査方法を話し合う県教育委員会の第三者委員会=2022年11月16日午後6時5分、熊本市中央区、長妻昭明撮影

 熊本県立熊本工業高校1年の生徒(16)が10月に自死した問題で、生徒が部活動の人間関係の悩みを相談していたほか、一部の保護者から「シメ」と呼ばれる先輩から後輩への行きすぎた指導を指摘する声も上がっている。学校が実態を調べている。

 県教育委員会によると、学校は11月8日に保護者説明会を開催。生徒が部活動の人間関係について顧問などに相談していたことなどから、県教委が設置する第三者委員会でいじめの有無や自死との関連などを調べることを報告した。

 その中で、「生徒が所属していた部活動でシメがあった。それが影響したのではないか」と発言した保護者がいたという。学校はこの問題が起きる前から、先輩からの厳しい指導で精神的苦痛を受けている部員が複数いることを把握していたとして「あしき伝統が残っていたら改善しなければならない」と答えたという。

 学校は、シメの実態を把握するため、部員全員にアンケートを実施している。結果はいじめの有無を調べている第三者委員会に報告し、委員会がシメと自死との関連についても調べる方針。

 熊本工の保護者が指摘した部活動での「シメ」は、別の公立高の元生徒が部の先輩から丸刈りを強制されたなどとして県に損害賠償を求めた裁判でも原告側が問題として指摘していた。「シメ」とはどんなものなのか。熊本工で自死した生徒と同じ部に、10年ほど前に所属していた女性が取材に語った。

げた箱前に呼び出され…泣く部員も

女性は、入学前からこの部活動の指導は厳しく、「シメ」もあると聞いていた。しかし、厳しい環境に身を置くことで上達すると考え、入部した。

入ったらすぐに先輩からあいさつの仕方など部のルールを教えられた。ルールを破れば、部活動終了後に昇降口のげた箱前に呼び出され、先輩に一対一で注意された。この注意の口調が厳しく、泣く部員が多くいた。1カ月で複数の新入部員が退部した。

同級生の中には、1人呼び出されて複数の先輩から注意を受けた部員もいた。女性は「根性をたたき直すために、後輩1人に対して先輩が大人数で注意したり、後輩を泣かせたりすることがあった。

これがいわゆるシメだと思う」と話した。

先輩が後輩を個別に呼び出すため、部員間でもどれほど厳しい指導があったかは分からない。

部内にはこの指導を問題視する意見はなく、「むしろ厳しい指導があってこその熊本工業という声が多くあった」と語る。

女性も「私はシメを受けたことがなかったが、当時は部を強くするためには必要な指導だと思っていた」と振り返る。一方「シメに苦しむ部員が多くいるのであれば、今すぐなくして欲しい」と訴えた。(長妻昭明)

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2022年11月17日付熊本日日新聞

元担任の男性教諭、複数児童へ体罰など計42件 熊本市の中1自殺

男性教諭の体罰や暴言、不適切な行為などを説明する熊本市教育委員会の幹部ら=17日、熊本市中央区

2019年に自殺した熊本市立中1年の男子生徒を小学6年時に担任した男性教諭が市の第三者機関から複数児童への不適切指導を指摘された問題で、市体罰等審議会は17日までに、男性教諭の言動2件を「不適切な行為」と認定した。審議会が設置される前に市教委が認定した40件と合わせ、男性教諭の体罰や暴言、不適切な行為などは計42件となった。

市教委が、記者会見で説明した。42件はいずれも、男子生徒が在籍した小学校で1418年度に発生。男性教諭は現在は別の市立校に勤務しているが、市教委は「事態を重く受け止め、現場での勤務は当分の間させない」とした。17日午後には学校を離れ、今後は研修などを受けるという。

市教委は男性教諭の新たな体罰などの情報を集めており、必要な調査をした上で12月の審議会で議論。年内の処分を検討している。

男性教諭を巡っては、市教委が203月、不適切な言動の疑いがある157件のうち40件を体罰などに認定。審議会が残る117件のうち、第三者機関が指摘した2件を新たに不適切な行為とした。

大きな声を出すことが困難な児童に対し、大声を出すよう強く指導した行為などだった。

市教委は、認定した40件には自殺した生徒への行為も含まれると説明。男性教諭については、204月の審議会設置後も2件の相談があり、このうち現在の市立校で216月に起こした1件も不適切な行為に認定されていたことも明かした。授業中に児童の胸元を引っ張ったという。

生徒の自殺を巡っては、市の詳細調査委員会が10月、男性教諭の不適切な指導で抑うつ状態となった可能性が高く、自殺の一因になったとする報告書を公表した。(臼杵大介)

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|2022年11月14日付熊本日日新聞

中1自殺の元担任、前年に別児童への暴行容疑で起訴猶予 熊本市教委は処分せず

2019年に自殺した熊本市立中1年の男子生徒を小学6年の頃に担任し、市の第三者機関から不適切な指導が指摘された男性教諭が自殺の前年、別の男子児童に対する暴行容疑で書類送検されていたことが14日、分かった。熊本区検は起訴を見送ったものの、犯罪の成立を認める

起訴猶予処分にした。

関係者によると、男性教諭は18年4月、入学式の準備をしていた男子児童の胸ぐらをつかんで用具入れに押しつけた。児童は約1週間の首の打撲と診断されたほか、不安や恐怖を訴える急性ストレス反応が出た。県警に告訴した保護者は熊本区検の不起訴処分(起訴猶予)を不服とし、

検察審査会に申し立てたが、不起訴相当と議決された。

市教育委員会は起訴猶予を把握していたものの処分はせず、「男性教諭が関わったほかの事案を含め、まとめて処分してほしいと保護者側から要望があり、保留にした」と説明。処分は今後検討するという。男性教諭は現在、別の市立校に勤務。校長によると、男性教諭は「取材の目的、内容を事前に通知してもらい、考えを整理した上で話したい」と言っている。

一方、男子児童は学校に居づらくなって転校した。母親は熊日の取材に対して「市教委が適切に男性教諭を処分していたら、息子の友人だった生徒が命を絶つことはなかったかもしれない」と話している。

市の第三者機関・詳細調査委員会は10月、小学6年時に悪化した抑うつ状態が男子生徒の自殺の一因で、複数児童を大声で叱るなどした男性教諭の不適切な指導が強く影響した蓋然性が高いとする調査結果を発表した。(植木泰士、上島諒、臼杵大介)

「助けられた命だった」 悔やむ学校関係者

「児童を立たせて、ほかの児童にその子の悪いところを挙げるよう命じた」「『死ね』などの暴言は当たり前だった」-。2019年に自殺した熊本市立中1年の小学6年時に担任だった男性教諭の暴行容疑が明らかになった。当時を知る学校関係者は、男性教諭の不適切な指導を振り返り、「大人が早く対処していれば助けられた命だった」と悔やんでいる。

関係者によると、男性教諭は児童の椅子を引く音や声の小ささに激高。心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されたり、卒業後に中学校へ登校できなくなったりする子どももいた。「ほかの教職員たちは男性教諭の暴力や暴言を知っていた」という。

保護者らは以前から男性教諭の言動を問題視していたが、男性教諭は18年、小学6年になった男子生徒らのクラス担任になった。入学式の準備中、男子児童の胸ぐらをつかんで約1週間の打撲を負わせたのは、その直後だった。

19年3月、保護者の有志は遠藤洋路教育長に再発防止策を求める嘆願書を提出したが、男性教諭の振る舞いは変わらなかった。その1カ月後、中学生になったばかりの男子生徒は自ら命を絶った。

生徒のノートには「死」「絶望」といった文字が残されていた。(植木泰士、上島諒)

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2021年02月24日付熊本日日新聞

「主体性足りなかった」熊本市教育長 中1自殺調査委

詳細調査委員会の委員からの質問に答える遠藤洋路教育長(中央)=23日、熊本市役所駐輪場別館

 2019年4月に熊本市立中1年の男子生徒が自殺した問題で、有識者でつくる市の詳細調査委員会(委員長・奥博司弁護士)は23日、市役所駐輪場別館で遠藤洋路・市教育長から意見を聴いた。

遺族の意見聴取は済んでおり、20年3月に生徒の自殺に関する報告書をまとめた市教委の代表として遠藤教育長を招いた。

自殺の理由について遠藤教育長は「現時点で判断できる材料がない」と述べ、詳細調査委で明らかになることを希望した。再発防止策としては、会員制交流サイト(SNS)を活用した相談事業などを挙げた。

一方、報告書提出に1年近くかかった理由については特殊なケースだったと説明。「遺族の要望を待たず、もっと主体的に提案して動いていくべきだったが、その姿勢が足りなかった」と述べた。

傍聴した生徒の母親(46)は「市教委には都合の悪いことでも、ありのままを認める勇気を持ってほしい」と求めた。(澤本麻里子)

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2020年11月10日付NHK熊本放送局

中1男子自殺の第三者委が初会合

  去年4月熊本市で中学1年生の男子生徒が自殺したことを受け、自殺の原因を調べる第三者委員会の初会合が開かれ、今後遺族や学校関係者への聞き取りを進めていくことなどを確認しました。
9日の初会合は、弁護士や児童精神科医など5人の委員が出席し非公開で行われました。
中学1年生の男子生徒は、去年4月自宅マンションから飛び降りて自殺しましたが、市は同級生へのアンケートや出身の小学校への聞き取りなどから「いじめなどのトラブルはない」と国に報告しました。
これに対し生徒の遺族から「小学校の時の担任にストレスを感じていたようだが報告書には書かれていない」と指摘を受けたことから、自殺の原因を詳しく調べるため今回第三者委員会が設立されました。
9日は委員の間でこれまでの経緯を共有したうえで、今後委員会として遺族や学校関係者への聞き取りを行っていくことなどを確認したということです。
委員長を務める奥博司弁護士は「双方の意見を聴いて、じっくり腰を据えて調査や議論をするが、事案から2年近くたとうとしているので迅速に進めたい」と話していました。
また男子生徒の母親は「調査までにこれほど時間がかかるとは思いませんでしたが、当時の担任や管理職は正直に誠実に向き合ってほしい」と話していました。

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