平成31年3月26日付朝日新聞西部本社版夕刊

熊本の高3自殺 いじめと因果関係認める 教育長に報告

熊本高3自殺

亡くなった知華さん(遺族提供)

熊本県北部の県立高校に通っていた3年生の女子生徒(当時17)が昨年5月、いじめをうかがわせる遺書を残して自殺した問題で、いじめの有無などを調べていた県教育委員会の第三者機関が26日、最終報告書を宮尾千加子・県教育長に答申した。5件のいじめがあったことを認定し、「自死に影響を与えた」と因果関係も認めた。

遺族は最終報告がまとまったのを機に、「娘が生きていたこと、いじめで追い詰められて亡くなったことを知ってほしい」として、「知華(ともか)」という名前と写真を公開した。

県教委によると、知華さんは昨年5月17日、午前中の授業後に体調不良を訴えて早退。数時間後、自宅で意識を失っているところを祖母が見つけ、病院に運ばれたが18日に亡くなった。

遺族によると、居間に残された遺書には「よう学校に来られるね」などの言葉を浴びせられたことや、「もう死にたい」などの言葉があったという。

報告書は、知華さんが映っている動画がインスタグラムに投稿されたことをきっかけに、授業中に複数の生徒から「死ね」「死ねばいい」「よく学校来れたね。まじウザ」「視界から消えればいいのに」などの発言を受けたとした。

これらの発言で「心理的苦痛が増幅したことは想像に難くない」として、いじめと認定。また、インスタグラムの動画を他の生徒に見せ「どう思う」と聞いた行為や、動画を上げた生徒のところに連れて行き、偶然映り込んだだけなのかどうかを確認する行為など4件もいじめと認定した。

そのうえで自殺との因果関係について、一連の発言が遺書に記載されていることや、その他の行為も「(知華さんの)心理的視野狭窄を起こす要因となったと推察できる」と指摘。認定した5件のいじめは、自殺に影響を与えたと判断した。学校以外の出来事については「調査を行ったが、影響や要因について確認できなかった」とした。

再発防止のための提言として「SNSの安易な利用や投稿が、誰も予想していない深刻な事態を引き起こす可能性があることについて、再度指導の徹底を図る必要がある」と指摘した。

県教委は昨年6月、法律、医療、福祉などの有識者6人でつくる「県いじめ防止対策審議会」で調査を開始。全校生徒を対象としたアンケートや、生徒や教員への聞き取りを通して知華さんを取り巻く人間関係や、自殺を図った前日や当日の出来事を調べていた。

問題をめぐっては、学校側が知華さんの写真を一枚も載せずに卒業アルバムをつくっていたことが判明。完成後に知らされた遺族は掲載を求め、学校はすべての卒業アルバムに知華さんの写真を貼り、配布した。(池上桃子、竹野内崇宏)

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平成31年3月19日付朝日新聞西部本社版

自殺生徒の写真、卒アルから外す 熊本、遺族に確認なし

熊本県北部の県立高校に通っていた3年生の女子生徒(当時17)が昨年5月、いじめをうかがわせる遺書を残して自殺した問題で、学校側が女子生徒の写真を一枚も載せずに卒業アルバムを作っていたことがわかった。遺族の意向を事前に確認できていなかったという。

完成後に知らされた遺族は掲載を求め、学校はすべての卒業アルバムに女子生徒の写真を貼り、配布した。

学校によると、アルバムには例年、卒業生の顔写真や、修学旅行など学校行事の様子を撮った写真を掲載している。だが、今年のアルバムには、女子生徒の個人写真を載せず、学校行事などの写真も女子生徒が写っていないものを選んだという。

遺族によると、教頭と担任が2月18日、自宅を訪れ、できあがったアルバムに女子生徒の写真が載っていないことを伝えられた。学校からはそれ以前にも面会の申し込みがあったが実現せず、掲載を望むかどうかの確認はされていなかったという。

遺族は「写真を載せてほしい」と学校側に要望。学校は、女子生徒の顔写真や学校行事、部活動に参加している写真を用意し、卒業アルバムの空いているページに両面テープで貼り付けた。

3月1日の卒業式では、女子生徒の写真があるアルバムを卒業生に配ったという。

女子生徒の母親は「娘が生きて高校に通っていた証しや、自殺につながった事実もなかったことにされてしまったようでショックだった」と振り返る。事前に協議ができなかったことについては、「面会だけでなくメールなどの手段もあったのでは。後から写真を貼り付けただけのアルバムになってしまい、残念です」と話した。

高校の教頭は「女子生徒の写真が外部に流出してしまうことを心配した。事前にご遺族に会おうとしたが、タイミングが合わなかった。事前に意向を確認するべきだった」と話した。遺族には謝罪したという。

女子生徒は昨年5月、同級生から「よう学校に来られるね」「死ねばいいのに」などの暴言を浴びせられ、「誤解なのに」「もう死にたい」などと書かれた遺書を残して自宅で命を絶った。県教育委員会は6月から、付属機関の「県いじめ防止対策審議会」でいじめの有無などを調べており、今月26日に最終報告書を県教育長に答申する予定。(池上桃子)

いじめ問題に取り組むNPO法人・ジェントルハートプロジェクト(川崎市)理事の小森美登里さんは、「時間がないことを言い訳にせず、『一緒に過ごした仲間としてアルバムに載せてもよいか』と一言、確認すればよかった」と指摘する。

教育評論家の武田さち子さんは「卒業式や成人式などの節目は、遺族にとってもつらい時期」と言う。「亡くなった子を最初からいなかったように扱うのは、遺族の悲しみに追い打ちをかけることになると思う」

 

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平成30年12月21日付朝日新聞熊本版

熊本・高3自殺、中間報告 同級生からの暴言認定

熊本県北部の県立高校3年の女子生徒(当時17)が5月、いじめをうかがわせる遺書を残して自殺した問題で、県教委の第三者機関が20日、中間報告をまとめた。

授業中に複数の生徒が「死ねばいい」などと発言していたと認定した。ただ、いじめかどうかについては触れなかった。

県いじめ防止対策審議会(会長=岩永靖・九州ルーテル学院大准教授)が県教育長に答申し、女子生徒の遺族に報告した。

県教委によると、女子生徒は5月17日、午前中の授業後に体調不良を訴え早退。数時間後、自宅で意識を失っているところを祖母が見つけ、病院に運ばれたが18日に亡くなった。

遺族によると、居間に遺書が残され、同級生から「よう学校に来られるね」「死ねばいいのに」などの言葉を浴びせられ、「誤解なのに」「とても苦しかった」「もう死にたい」と書かれていた。女子生徒が自殺した後の学校による調査では、同級生からの暴言があり、インスタグラムでのやりとりが暴言の背景になったとの指摘があったという。

審議会は6月に第1回の会合を開き、同級生や友人、教職員への聞き取り調査をしてきた。

遺族は審議会の委員について、遺族が推薦するメンバーを含めるよう求めていたが、県教委は応じなかった。これまでに委員3人が「審議される事案の関係者と関わりがある」「体調不良」などの理由で交代していた。(池上桃子)

 

「娘に寄り添い審議を」高3自殺、母親が思い語る

 

「娘がどんな思いで、どんなことに傷ついて、追い詰められていったのか知りたいです」。熊本県北部の県立高校3年の女子生徒(当時17)が5月に自殺した問題で、20日、県いじめ防止対策審議会は中間報告をまとめた。女子生徒の母親(45)は県庁で記者会見を開き、涙ながらに苦しい思いを語った。

中間報告では、女子生徒が自殺した日の授業中に「死ねばいい」「うそしかつかん」「何回言ってもわからん」などの発言があったことや、インスタグラムの動画に男子生徒と一緒に映り込んでいたことが複数の生徒の間で話題になっていたことなどを事実と認定している。

母親は「これまで私たちが把握していたことがほぼ事実としてわかった。当日のことが娘にとっては限界だったのかと思う。どういう気持ちで娘にそういう言葉を放ったのか、言った子の気持ちも知りたい」と話した。

「死ねばいい」の発言に関して中間報告では「普段から掛け合いの言葉でも使っていた」と注釈をつけている。母親は「軽く使われている言葉というニュアンスになっているのが気になる。娘にとっては重い言葉だった」と述べた。

母親は女子生徒が早退した後に帰宅し、泣きはらしたようなまぶたでスマホをいじっている姿を見たという。「学校で何かあったんじゃないかということはわかっていた。あの時仕事に戻らなければ止められたんじゃないか。後悔しています」と声を詰まらせた。

審議会は教育や医療、福祉などの専門家6人で構成される。全校生徒へのアンケートや、生徒や教員への聞き取り調査を続けてきたが、1回目の会合があった6月からこれまでに3人の委員が交代した。母親は「引き継ぎに問題がないと説明を受けているが、不安がないと言えばうそになる。これ以上の交代はないようにしてほしい」と述べた。

母親はこの日、娘が大切にしていたぬいぐるみを抱えて県庁を訪れた。「娘は遺書でしか言葉を残せていない。娘に寄り添った審議を続けてほしい」(池上桃子、田中久稔)

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